【2303】ドーン と「110番映像通報システム」

企業研究

ドーンのホルダーであれば皆さんご存知だと思いますが、「110番映像通報システム」の10/1からの試行運用開始(予定)が正式に発表されましたね。

来年4/1からの本格運用を目指すとのことです。

110番で動画も送れるように 警察庁が「映像通報システム」をテスト運用へ
警察庁が「110番映像通報システム」の試行運用を開始する。スマートフォンやタブレットを使い、通報と同時に事件・事故の様子を映像/画像で伝えることで、現場の様子を事前に把握することができる。



このシステム、果たしてドーンとつながりがあるのか無いのか、気になるところですよね。

ただこの件に関しては、入札に参加したか否かも含めて徹底的な情報秘匿があり、会社側からは全く明らかにされていないというのが現状です。

私個人としては「そろそろ本件に関してコンセンサスが形成されて欲しい」との思いもあり、以下では私の考察を述べさせていただきます。

1/4の落札者等の公示

思い出されるのは、この入札案件の1/4付での落札者等の公示です。


1年ちょっと前から話題になっており、私を含めてドーン社による落札に期待を膨らませていた株主も多かったはずです。

しかしながら、実際の落札者は旧パナソニックシステムソリューションズジャパン社(以下、P社)でした。

1/4の場中に明らかになり、株価は始値から▲約25%の大暴落。
お正月気分を吹き飛ばすには十分過ぎるものでした(笑)

ここで「失注」と見て投げ売った方も多いかと思いますが、私はある一つの仮説に賭け、引け直前からむしろ買い集めるという行動を取りました。

(この案件がなくても、近年のクラウドサービスの安定成長ぶりから、暴落前への株価水準への回復はいずれ可能だろうという読みもありました。)

その仮説とは、お察しの通り「P社と入札前から予め手を組んでいたのではないか」というものです。


実績を重んじるはずの官公庁(警察庁)が、Live110による兵庫県警での運用実績をないがしろにする可能性は低いだろうというのが、そもそもの考えの前提としてあります。

ただそれ以外の部分でもこの仮説を裏付ける複数の材料を集めることができ、途中からは確信に変わっていったのでした。

以下、時系列で説明していきたいと思います。

①有価証券報告書からの気づき(22年1月)

上記仮説に沿って何かヒントになるものはないかと2021/5期の有価証券報告書を読み込んでいたところ、大きな違和感を抱いた箇所がありました。

P.8の、主なクラウドサービスについて記載されている箇所。


私が「あれ?」と思ったのは、既に十分な稼働実績があるLive110が記載されていないのに、リリース間もないLive-Xが記載されている点です。


「なぜLive110を表に出していないのか?」


この点を確認したところ、

「110番通報向けの映像通報システムが、47都道府県一括導入の入札案件とされている時点で、当社のサービス『Live110』として拡販することが想定されないため

との回答でした。

確かにこの時点での当社の規模感からして、諸々の設備・システム導入(警察なので全てクラウドというわけにはいきません)やサポート体制も鑑みれば、全国一括案件に対応していくのは難しいのでしょう。

そのような判断を入札前に予めしていたとうかがわせる回答内容ですね…

逆に「Live110ではない別の形”として、間接的に入札に関与している」「そもそもLive110としては、初めから入札に参加していない」可能性が十分あると、この時点で考えました。

②主要取引先へのP社の追加(22年3月)

3/30付で、ホームページ上に「主要取引先を更新しました」という新着情報がありました。

ここの末尾に、新たにP社が記載されました。

それまでしてこなかったこの種のリリースを、わざわざしていることだけでも十分なのですが、さらに注目すべきはそのタイミングです。

実はP社は、4/1付でグループ再編に伴い「パナソニックコネクト株式会社」へ社名変更をすることが決まっていて、このリリースはその直前のことだったのです。

私も社名変更のホームページへの反映について指摘したのですが、「次の更新のタイミングで反映させていただきます」との反応でした。

このことから、「これはあの案件について今でも気に掛けている人々に対しての、当社なりのメッセージに違いない!(=ハッキリとは言えない大人の事情がある)」と察しました。

わざわざ落札時点の旧社名のまま残しているというのは、そういうことでしょう。

この時点で、協業していることをほぼ確信致しました。

③株主総会での質疑応答(22年8月)

先日記事に書いた通り、株主総会では私からの質問に対し「契約上の理由から回答できません」とのご回答をいただきました。

これで本件に関して、何らかの契約があることが明らかになりました。


以上から、ドーンとP社は協業していることはまず間違いないというのが、私の考察です。
注:裏を取ったわけではなく、あくまでも個人的な見解に過ぎません


ちなみに直近2022/5期の有価証券報告書では、Live110がひっそりと掲載されています。


兵庫県警のLive110はいずれ新システムに移行することが既定路線なのに、あえてここに載せていることに私は着目しました。

これを「110番映像通報システム」はLive110をベースにしているという、投資家へのメッセージでもあると捉えるのは、考え過ぎでしょうか?

あともう一つ決定ヒントとして、以下にある動画をよーく見てみて下さい。
どこかで見覚えのあるものが…

映像や画像で初動を迅速に「110番」に映像受信システム 全国で10月から導入(島根・松江市)(TSKさんいん中央テレビ)


ここまでの経緯は、推理小説を読み解くような楽しさがありました。

たまにはこういうのもいいですね。

今後の業績への貢献については … またの機会に。

有価証券報告書は、仮説を持ってしっかり読みましょう。
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コメント

  1. rocket より:

    ろくすけさん
    ドーンについて、下記のデータを自分で整理しました。そこで気づいたことがあります。
    ①.開発部門の人数は2018年にピークになって、そこから減っています、特に2021年には大きく減っていました。
      そして、2022年に22⇒32に増員。そんなに激しく入れ替わっているのは、開発経験の積み上げ、先輩から後輩に
      技術伝承に問題があるんではないかと気になっています。
    ②.37才、平均年収576万円、エンジニアとして高くなさそうです。これぐらいなら、優秀な人材がいても、長く続かないではないか、あるいは、募集していても、良い人材が入ってこないではないかと思っています。

    ③.当社の取締役の情報を見たら、技術出身の方がいないです。

    上記三つの点から見れば、この会社はそもそも技術者を重視していないではないかと思われます。
    そうでしたら、IT会社にとって、常に新しい製品を開発しないとそのうち他の競合会社に追い抜かれてしまうし、優秀な人材を持たないといけませんので、長い目で見れば当社の競争力がだんだん弱くなってくるではないかと思われます。

    この会社のビジネスモデル、収益力などとてもいいですが、上記の点にだけ気になっていて、ぜひろくすけさんのご考えをお伺いさせていただければと思います。
    よろしくお願いいたします。

    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
    従業員推移    2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022
    営業部門     7 9 9 11 10 10 17 19 30 23
    開発部門     27 26 28 28 33 35 31 29 22 32
    全社(共通)     5 6 6 5 3 4 4 4 4 5
    合計         39 41 43 44 46 49 52 52 56 60

    平均年齢     37.3 37.7 37.6 37.8 37.5 37.3 37.3 37.4 37.5 37.4
    平均勤続年数     5.4 5.9 6.2 6.6 6.8 7 7 7 7.3 7.3
    平均年間給与(千円) 5028 5281 5211 5532 5448 5517 5497 5559 5679 5762
    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

    • rocket より:

      ろくすけさん
      上記データは乱れていて見づらいです。
      下記google sheetなら見やすいです。
      失礼しました!
      https://docs.google.com/spreadsheets/d/1JH24Zb9be19PNWCHUMUBXveNwlL0nNRnigTl-djQ7d0/edit?usp=sharing

    • 6_suke より:

      ①については、2021/5期だけ、当社側の手違いで営業部門と開発部門の人数がひっくり返ってしまっています。であれば、人数の推移に連続性はありますよね。

      平均年収が高くなく(②)、技術出身の方が(現在)取締役にいない(③)のは、創業者(死去)の尽力により、基礎技術・開発エンジンとして競争力のあるミドルウェア(GeoBase https://www.dawn-corp.co.jp/service/geobase/)を構築済であり、一から開発するのではなく、その基盤に乗っかって各種アプリやシステムを開発していけばいい(相対的に高度なレベルは要求されず、新卒からでも育てられる)という面が大きいかと思われます。

      M&Aクラウドのページ
      (https://macloud.jp/offers/888?argument=wqVTE22c&dmai=a602e613b9cc34)
      には以下の記述があり、安定性を求められる公的部門の要請にきめ細かく応えられるだけの、基礎技術の強みは有しているものと見ています。

      「地理情報を扱うソリューションを構築するうえで避けて通れない課題の一つに、データ量の大きさがあります。このため、送受信を行う際にはいったん必須情報だけを抽出し、複数に分割して送ったうえで、受信側で要素を迅速に再構成し、表示させる必要があります。警察、消防、救急など、緊急性の高い現場のニーズに応えてサービスを進化させてきた当社は、この地理データの圧縮・再生技術において、他社の追随を許さないレベルを達成しています。」

      • rocket より:

        ろくすけさん
        早速のご回答、ありがとうございます!
        ①について、理解しました。それなら確かに連続性が出てきました。
        ②と③について、現状として素晴らしい技術基盤が築かれているため、
        普通のSEでもその上で開発ができるから、無理やりに高い給料を出して人を雇う必要がないというご考えですかね。理解しました。ご回答、ありがとうございました。
        またM&Aクラウドページとかいろんな情報をいただき、ありがとうございます。

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