石井光太郎『会社という迷宮 経営者の眠れぬ夜のために』を読む。

読書


経営コンサルタントを40年近く務めてきた著者が、「会社」や「経営者」を巡る本源的な問いや洞察を、これでもかとばかりに火の玉ストレートで投げ込んでくる本であります。

「『迷宮』の経営辞典」という章では、「戦略」「市場」「価値」「利益」「成長」「会社」「統治」「組織」「改革」「M&A」「開発」「人材」「コンサルタント」「信義」、それぞれを題材としながら、経営者の根本的なところでの姿勢を問う内容となっており、ズシリとミットに響きまくりやがるような読後感です。

会社は、一列に並ばされて受け身で世間から成績評価されるだけの矮小な存在なのではない
社会的存在として、自ら提示する独自の「価値」を世間に問いかけることで、賛同者を主体的に募る存在なのである

(太字は当方にて)


この本の主要なテーマは、「経営における主観の復権」ということになろうかと思います。

外形的な基準に追い立てられ、例えば「コンサルタント」が提示するようなありもしない「正解」を追い求めようとするのではなく、「自分の『本分』とは何か」「自分にしかできないことは何か」を模索し、自らが進むべき道を自由意思で見出しながら、ステークホルダーを巻き込んでいかなければならないということですね。

つまり、経営者自らが自分にとって正統と考える「価値」のアンカーとならなければいけないということです。

そして世のコンサルタントは自分が持っている薬(→例えばフレームワーク)を売る薬剤師タイプが多いものの、本当の意味でのコンサルタントは、クライアントの話をよく聞き、病根を探して治療法を考える、医師タイプでなければならないという趣旨のことも仰っています。

なぜなら、「主観」や「信念」を持ち、オリジナルな「価値」を世に問う経営者の課題は、一つとして同じにはなり得ないからです。


この辺りは、自分の投資家として在り方を考える上でも大変参考になりました。

私の長期投資家としての理想は、経営者をエンカレッジするような存在であることです。

「ビジネスモデル」やMBA的手法で企業を型にはめて分析しようとする以前に「個別性」を大事にし、

「創業者はどのような志を持って事業を始めたのか」
「現在の経営者はその志をきちんと継承し、さらに発展させることができているか」

を把握する努力を、入口の段階で怠らないようにしたいと思いました。

あまりにも暑くて出かける気力が失せています。「読書の夏」にしましょうか。
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ろくすけの長期投資の旅

コメント

  1. むう より:

    面白そうな本ですね、

    「自ら提示する独自の「価値」を世間に問いかけることで、賛同者を主体的に募る存在なのである。」

    そんな会社を探して、長期で応援したいと私も思います。

    ただ、小型株では明確にイメージできるのですが、
    トヨタやユニクロといった大型株になると、
    当初(小型株のころ)の提供価値は薄れてしまうような気がするので、
    長期投資家はいかにみていけばよいのかと感じました。

    会社の問いかける「価値」は不変なのか、それとも成長とともに「価値」も変化するのか。。。

    • 6_suke より:

      大型株は創業家の目が光っているところはまだいいのですが、そうでないところは企業文化がしっかりと従業員の間に根付いているか、確認しておきたいところですね。

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