質疑応答の続きです。
前回で書いた冒頭の質問以外は、極めて全うな内容でした。
質疑応答(2)
【質問2】
WSJのニュースで、米国で空調ベンチャーがいくつも出てきているというのを見た。
中にはキャリアが出資している会社、ビル・ゲイツ財団が出資している会社もある。
気になったコメントとして、空調ベンチャーの世界においても、自動車業界でテスラが起こしているような変革が必ず起こるというものがあった。
御社が空調のリーダーであることは重々承知しているが、今後起こり得る大きな変革への対応としてのM&Aの方針や、新技術への対応をどのように考えているか教えていただきたい。
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(米田常務執行役員:空調商品開発担当)
空調のディスラプション(創造的破壊)に対して、さまざまな空調方式を検討している。
その中で世界的に可能性のあるところを追求している。
空調のディスラプションを起こす「磁気冷凍」等についても、大学や国の研究機関と協業しながら研究を進めている。
テスラのような事が起こっても、ダイキンとしてさらにその先のディスラプションを自ら仕掛けていくということも併せてやっていくことを考えている。
(十河社長)
経営の方針について補足して回答申し上げる。
我々は色々な変革は起り得ると考えていて、大きなキーワードとして認識しているのは、一つは気候変動問題で、これがますます重要な課題になってくると考えている。
さらにエネルギー問題、「健康」も重要な課題。
今の空調の需要は2050年には約3倍になるという予測もある。
となると、気候変動・エネルギー問題がある中、今の我々の方式で対応できるのかということもあり、新たな技術革新を大学やベンチャーとも協業して目指すべく、投資も強化を図っているところ。
【質問3】
ヒートポンプ暖房・給湯事業について。
PFAS規制によってフッ素系の強みが無くなってしまう。
欧州でシェアを確保し利益を取っていく見込みはあるか、その施策にどんなものがあるか、教えていただきたい。
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(澤井常務執行役員:地球環境・CSR担当)
少し整理させていただくと、Fガスのレギュレーションの問題とPFASのレギュレーションの問題の2つがある。
両方ともフロンガスが規制されるということに間違いない。
どうなるかは最終決定はしていないが、ダイキンとしては決まったとしても、それに対応できる冷媒の開発と自然冷媒の開発、そしてこれを用いた商品の開発を現在行っている。
一方、PFASとFガスのレギュレーションに対しては、日本・欧州の空調冷凍工業会と組み、いかに我々にとっていい冷媒の選択、いい環境の政策とすべく、いわゆる時期を遅らせてもらうといったアドボカシー活動も併せて行っている。
当社の利益だけではなく、最終的にはカーボンニュートラル、2050年に0にすべく産業界にいかに貢献できるかということについても、業界と協調しながら、省庁とも話をしながら進めている。
(三中取締役兼副社長執行役員:欧州代表)
現在の欧州のヒートポンプ暖房事業については、昨年一気に市場が拡大する中、弊社はトップシェアを獲得した。
それでも暖房市場の中で、ヒートポンプが占める割合は二桁に到達していない。
今後20~30年間でガス・石油からシフトし、ヒートポンプは大きく拡大していくと考えている。
開発を進めながら、その中でシェア維持に努めて参りたい。
(十河社長)
北米市場についても補足させていただく。
北米においては環境意識の高まりがある。
インバーター、ヒートポンプ、R32といった、他に無い環境技術を持っており、それを活かしてチャンスとして北米市場で伸ばそうとしている。
2025年度には売上No.1、営業利益率は10%を達成したいと考えている。
【質問4】
緊張感を持って仕事をされている御社のファンである。
井上会長の本も読まさせていただき、非常に感動した。
大変厳しい質問をされる株主もいらっしゃる中、誠実に、毅然と真摯に対応する姿を拝見し、ますますファンになった。
「空気で人を幸せにする」と仰っているが、会社として人に対する暖かさをお持ちで、それが御社の「空気」と感じる。
御社の皆様が持たれている素晴らしい「空気」を維持するのは非常に難しいと思う。
グローバル展開で広げていくのは、さらに難しいが、それを今後どのように進めていくかについて教えていただきたい。
ご回答は、意識してその方の前に座らせていただいたのだが、中国で長くやられてきた田谷野さんにお願いしたい。
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(田谷野代表取締役兼副社長執行役員:中国代表)
まさか私に来るとは思わなかったので整理はできていないが、ご関心を持っていただき励みになる。
私は海外の経験もなく25年日本で仕事をしてきたが、中国へ行くことになった。
日本で培っていたノウハウを持ち込む中、先ほど井上会長のお話もあったが、最も経営の資産になるのは人であるということを学んだ。
中国には2万1千人の社員がいるが、私たちのテーマは人を基軸にした経営。
色々政治の問題はあるが、人、想い、情熱、文化には国境が無い。
ともに価値観を常に共有し、人の可能性を信じ、夢に挑戦し成長を追求してきた。
今日のお話を全員に伝え、さらなる事業拡大に励んでいきたい。
(十河社長)
経営をしていて、最後は本当に社員の力によるものと日々実感している。
井上会長は人の可能性を信じ、その人の力をいかに最大限引き出すか、それが経営にとって最も重要であるかを実践を通じて示してこられた。
我々はそれを受け、全役員、幹部が最大限社員の力を発揮させることによって、ますます成長に向けて頑張りたいと思っている。
今後ともご支援応援の程をよろしくお願い申し上げる。
【質問5】
先日、御社のヨーロッパの拠点に伺った。
欧州における暖房の需要拡大の話で盛り上がったが、ロシア・ウクライナ問題がある中で気になったのは、ポーランドに新工場の設立をされていること。
ウクライナとも近い中で建設を決められた理由と、難民も働いていると思うが、その方々が戻られた場合の人員不足が発生するのではないかという懸念があり、人員確保の戦略についてもお伺いしたい。
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(三中取締役兼副社長執行役員)
ポーランド工場設立を決めた背景としては、労働力が他国に比べて非常に豊富ということがある。
ワルシャワから150kmほど離れていて労働力も安いということで最終的に決めた。
また、技術的レベルが比較的高いというのもある。
車の部品メーカーの集積もあり、エンジニアの獲得もできるのではないかと考えている。
質問は以上で終了。
議案採択を経て、新たに選任された監査役の紹介があり、閉会となりました。
(11:16)
所感
報告事項における説明は、過年度実績と今後の計画とのバランスが良く(後者に重点)、企業によっては苦痛となりがちな時間帯も、大変聞き応えがありました。
質疑応答においては、各管掌役員それぞれのお言葉に非常に力があり(ついでに言えば、横文字の発音も良く)、さすがグローバル展開を推し進める業界トップ企業だなという印象を強く受けました。
井上会長がご不在だったのは残念でしたね。
評価は★4つ寄りの★★★☆☆とさせていただきます。
(終わり)
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コメント
最初の質問は、退職等でもめた人じゃないでしょうかね?
労働争議関係が総会までもつれ込む話は他でもいくつか聞いたことあります。
裁判で争っていたりするとなお面倒だったりしますが、意外と長期化したりすることもままあるとか。
その他の質問は、比較的いい感じの質問が多く、また回答も誠実さ等が出てて結構いい感じの総会な気がしました。
ただ残念なのが、参加人数や企業知名度のわりに質問数が少ないことですね。
もう少し議論が活発だといいのになぁと思ったものでした。
経営も株価も順調な企業は、そうでない企業と比べるとどうしても質問は少なめになってしまう傾向を感じます。