何かが起こることに期待 ~ 現金及び現金同等物を追う。

投資スタンス

株式投資において、世間の「期待を上回る」ことは成果に直結します。

その意味で、現金及び現金同等物の推移を長期で追うことは、意外と有効ではないか という考えを私は持っております。

以下で事例をもとに、その考えについて述べていきます。

【9843】ニトリHD

無事、島忠の子会社化が実現しそうな運びとなりました。

もっとも、当社の過去のフリー・キャッシュフローからすると、そろそろ大型の投資をすべき時期に来ていたことは確かです。
近年はROIC(投下資本利益率)も低下傾向にあり、資本効率の向上が課題でしたから。

ここで現金及び現金同等物(以下、「現金等」)の推移を見てみましょう。

都心部への進出を果たしたあたりから(2015年4月「プランタン銀座店」オープン)、キャッシュの創出力がいよいよ手をつけられなくなった感じです。

実際、従来のスタイルによる出店や物流施設への投資に限定することなく、LIXILビバやアパレルの買収を検討するなど、新しいお金の使い道も模索する中での今回のお話であったと思います。

今期は2Q時点で1,796億円(B/Sの「現金及び預金」ベースでは2,331億円)にも達していましたから、最大2,143億円を投じることになるTOBも財務的な重荷にはなりません。

商品や立地の補完に加え、物流・EC・人材のテコ入れ、国内外出店余地拡大など、さまざまな相乗効果が見込まれる組み合わせに期待したいところですね。

【6541】グレイステクノロジー

次に、マニュアル・翻訳に強みを持つ印刷会社、HOTARU株式会社を買収したばかりの【6541】グレイステクノロジー。

こちらは投資キャッシュフローがほとんど発生しない事業を営んでおり、現金等が積みあがる一方、膨大な潜在的需要に対する経営資源(取引先・営業拠点・人材等)の手当てが課題となっていました。

老舗として大阪に取引基盤があり中国にも拠点を持つHOTARU株式会社は、買収対象としてうってつけであったと思います。

取得金額も14億円強と手頃で、非常に時機を得た、投資家としても納得感のあるM&Aでした。

【6544】ジャパンエレベーターサービスHD

一方、現金等の使い方が上手だなあと思うのが、【6544】ジャパンエレベーターサービスHD。

見事に現金等の水準が一定と言っていいレベルに収まっていますね。

エレベーターのメンテナンス事業を維持していくだけであれば、さほど設備投資は必要ではありません。

しかしながら当社の場合は、研究開発棟やリモート遠隔点検システム、各地の同業他社の買収といった、将来を見据えた投資にきっちりとお金を使い切っていて、見事に持続的な成長に結びつけています。

こういったことも、現金等の水準を追っていくと見えてきますし、何より お金の使い道を任せられる安心感 を得ることができます。

株価による高評価も肯けます。

【3836】アバント

今後に期待したいのが、【3836】アバント。

総資産の半分強が現金等となってきました。
そろそろ何か大型の投資があってもおかしくありません

実際、資本コストへの意識を持ちつつ、グループの目指す方向に合致する前提で外部成長を取り込むことについては、当社としても経営課題に掲げている事項です。

2009年に株式会社インターネットディスクロージャーの子会社化、2012年に株式会社ジールでのBIの事業譲受があり、それが以後のグループ企業としての成長に寄与していることから、こちらもおかしな投資はしないだろうという安心感があります。

その一方で、もう一段の成長を遂げる可能性を秘めているという観点からはまだまだ評価されていない印象があり、そこが私の一つの投資根拠ともなっています。

まとめ

現金等がまるで水源のように湧き出てくる企業は、早晩それを使う機会が出てきます。

【6544】ジャパンエレベーターサービスHD のように、常時それを適切に使い切って成長し続ける企業に投資するのは非常に手堅いですし、それも一つの方法です。

その一方で、使う機会を慎重に見極めていて、数年単位で見ていけば現金等が貯まっていくばかりの企業もあります。

こういった企業こそ、その現金等の使い道までは株価的に織り込まれていないことが多く、ここに「期待を上回る」チャンスが眠っており、狙い目であると考えています。

つまり、世間的には織り込まれていない「まだ見ぬ何か」が起こることに期待して投資しておくということです。

もちろんどことは言いませんが、現金等が貯まるたびに、意味不明な投資をして失敗を繰り返すような企業(個人投資家としては非常に親近感がありますが…)は、投資対象外であることは言うまでもありません。

これまでの履歴を見て、合理的な投資がなされているかどうか、確認しておくことも重要です。

ということで、現金及び現金同等物の推移(もちろん各種キャッシュフローも)を長期で追っていくと、いいことがあるんじゃないかというお話でした。

水源を見つけ、そこからの流れをじっくり見ていくことが大事ですね。
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コメント

  1. やす より:

    非常に妙味のある視点だと思います。
    貴重な情報ありがとうございます。

    • 6_suke より:

      コメントありがとうございます。
      今後も自分なりの気付きについて書いていきたいと思います。

  2. 個人投資家を目指して勉強中です。 より:

    いつもブログの更新を楽しみに、勉強させていただいております。
    北海道のニトリHDの総会旅行は、飛行機が苦手な私にはなかなか厳しいですが、車窓を眺めながらの電車の旅は楽しそうですね。宿もどこも素敵なところで、「泊まってみたいなぁ」と思いながら、記事を拝読していました。
    この記事を「なるほど~」と思いながら、拝読しました。ろくすけさんも保有されている銘柄ですが、ジャパンエレベーターサービスHD(以下、「JES)は、毎年きっちりと投資にお金を使い、現金等が一定の水準で維持されています。ただ、このJSEの株主価値をエンタープライズDCF法で算出しようとすると、投資額が大きく、FCFがマイナス若しくは
    小さくなってしまいます。(「FCF=NOPAT+非現金支出-運転資本の増減額-投資額」で算出しています)ろくすけさんはこのように投資額が大きい(大き過ぎ?)企業の株主価値はどのように算出さていますでしょうか?

    • 6_suke より:

      旅行記までご覧いただき、ありがとうございます。

      JESのFCF予測については、これまで投資がかさむフェーズにありましたので、ちょっと工夫が必要だと思います。

      ①JES Innovation Center Labで有形固定資産投資が膨らんでいたが、竣工したため今後は控除する。

      ②エレベーター会社の買収による支出がどこかで一段落する前提で、投資CFの支出が減る予測を立てる。
       (今はちょうどバブル期からの更新時期を迎えるエレベーターが多いこともあって拠点網拡充に注力しているが、
        いずれ落ち着いてくるものと考えられる)

      ③それでも当社の競争優位性からしてメーカー系メンテナンス会社からの切り替えは順調に進むと見られるので、
       永久成長率は高めに設定する。

      元々は大きな投資を行わなくても営業CFを稼げる業態だと思いますので、
      平常時に戻った前提で計算するのが適切だと考えます。

      • 個人投資家を目指して勉強中です。 より:

        ご回答ありがとうございます。
        数字だけを見るのではなく、そもそも何に投資しているのかを考えて分析することが大事ですね。基本的なことですので、忘れないようにします。

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