上場以来ずっと参加しており思い入れも深いのですが、コロナ禍が収束しないまま今回が3回目となりました。
毎回の変化を楽しみにしているのですが、回を重ねるごとに顔見知りの株主が増えていくのも面白いですね(笑)
株主総会
用意されている30席に対し、出席は14名(前回より減少)。
うち女性は5名でした。
実際に靴を買われている方が、株主としてもっと参加いただけるといいなと思っています。
議長は肖社長。
役員・社員の皆さまは今年もマスク着用でした。
中井(新井)取締役は卑弥呼社長となられて以降、気のせいかもしれませんが、それに相応しい風格も出てきたように感じます。
監査報告は招集通知の通りということで省略。
事業報告・議案の説明も要点のみをナレーション付きの映像で流す形で、超シンプル。
決議事項は以下の通りです。
- 剰余金処分の件
- 定款一部変更の件
(ここまでで10分)
質疑応答
(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)
一度につき1問としていただきたい旨の案内がありました。
回答は基本的に肖社長が対応されていました。
【質問1】
中国の台湾進攻により、ESGの観点から中国で生産できなくなるリスクを懸念している。
生産地を変えるつもりがないのかどうか、中国の工場が一斉に稼働停止となった場合に、工場を探すのにどの程度時間がかかるかを教えていただきたい。
⇒
コロナにより、ご存知の通り4/1より上海が封鎖されている。
生産は中国がほとんど。
南の東莞、福建、浙江、江蘇、上海…
十何か所の工場のうち、上海のみ停止している状況。
元々SARSや水害を踏まえ、何の災害があるか分からないという前提で分散させてきた。
上海港はダメだが、福建省・浙江省・江蘇省からは商品の出港はできている。
中国の生産面での打撃はそれほどない。
中国・アメリカの関係悪化のリスクは、これまで想定していなかったのは事実。
今は中国が主流だが、一部東南アジアでも生産開始している。
ただし、追加生産を行うにあたり、タイムリミットの点で補充体制が難しい面がある。
とはいえ、あらゆることを勘案し東南アジアでの生産も必要と考えている。
卑弥呼は8割国産だが、ORiental TRafficは現状九十数%が中国。
リスクは排除できないので、ベトナム他、生産に相応しい場所がないか、引き続き検討を進めていく。
→ このデリバリータイムの問題は、鮮度が問われるファッション業界の多くの企業が中国から離れられない理由でもありますよね。
【質問2】
ドル高円安が進行している。
仕入先との決済は、円建てかドル建てか?
ドル建てであった場合、為替予約はどの程度活用しているか?
当会計年度における想定為替レートは?
⇒
卑弥呼は国内調達なので円建てだが、ダブルエーは米ドル建て中心。
工場との取り決めはまず「人民元でいくら」であり、人民元を米ドル換算して決済している。
この一週間、人民元は米ドル対比暴落しており、円は安いものの、人民元に対しては高くなってきている。
ある程度の為替予約はしているが、(投機的な為替ヘッジはせず)あくまで本業重視であり、かなり期日が先になるものまではやっていない。
(SPAであるがゆえに)自分たちの値段は、自分たちで決められる。上代を修正できる。
ファッション業界、世の中の会社の状況(円安に見舞われていること)はみんな一緒。
想定レートは決めていない。
ある程度為替は見つつも、その場その場で対応していく。
→ 太字の通り、自ら価格のコントロールができるという点が大きなポイントです。実際、最近の売り方を見ても、原価上昇に応じて上手に商品単価上昇を図っている様子が見て取れます。そもそも、輸出企業の円高(グローバル展開においては、海外企業との競争では不利になる)と、輸入企業の円安(日本国内においては、自社も競争相手もともに苦しくなる)は、全く別の事象です。競争優位性があり値付けも柔軟かつ絶妙な当社の場合には、為替水準そのものをそこまで強く問題視する必要はないと考えています。
【質問3】
商品部部長である、岩瀬取締役にお伺いしたい。
商品企画にOKを出す場合に、大切にしている判断軸や価値観のようなものがあれば教えて頂きたい。
(私からの質問です)
⇒
(岩瀬取締役)
第一にトレンドを採り入れること、そしてお客さまのニーズを捉えることと考えている。
企画の人間が店頭に立ち、リアルなお客さまの意見を反映させるように努めている。
色展開、トレンドカラーも重視している。
店頭に並べた時の、映えるカラーバリエーションを意識している。
→ 前回は中井取締役にお話を伺ったので、今回は岩瀬取締役にということで。言われてみれば、確かに他社と比べて色展開で華やかさを感じる部分はありますね。
【質問4】
肖社長がダブルエーを創業する前に、靴業界を選んだ理由を教えていただきたい。
また一日の生活リズム、何時起床で、退社時間はいつなのか等も教えていただきたい。
⇒
30年前中国で高校を卒業後、日本の大学に入って就職した。
そこは元々サンダルのメーカーで、私は海外生産の担当であった。
当時、日本は購買力があって、中国で大量生産したものをいい値段で売る商売をしていた。
売り場と工場が直接交流できれば、もっといいサービスができ、もっとお客さまに満足していただけると考え、いいビジネスチャンスがあると思い起業した。
それは直通企画という(前)社名に表れている。
なぜ婦人靴かと言えば、紳士靴と違って、年に1回大きな流れが変わっていくから。
仮に1回失敗しても、次のシーズンに新たな挑戦をすればいい。
婦人靴の方がデザインが変わっていくので、新しいものに挑戦しやすい。そこが魅力だ。
生活のリズムについては、私はごく普通の人間に過ぎないので特に何も変わらない(会場より笑い)。
→ 大変ユニークな質問でした。婦人靴を選んだ理由は「なるほど!」と思いました。後でまた出て来ますが、「挑戦」というのは当社を語る上での重要なキーワードですね。
【質問5】
医療従事者支援を通して、大量のデータベースができたと思う。
その後、アクティブユーザーとなって実際の購買につながっているのか?
⇒
コロナ禍において、最前線で大変な仕事をされている方々のために行ったものだが、「結果として」データが得られた形。
そこから抽出して何かをやっていくということはない。
店からネット会員への展開に力をいれていたが、それは特に医療従事者を対象にしていたということはない。
全般的に店からネットへ移っているのは事実だが、医療従事者に関して特に具体的な数字等を持っているわけではない。
(ちょうど30分が経とうとする頃、会場の都合もあり(本社の中なのに?)、時間の関係で最後の一問とさせていただきたい旨の発言がありました。)
【質問6】
一昨年、ORTRを強化し、昨年はNICALに力を入れていたが、今年はORTRのTVCMを行い「おっ!?」と思った。
現在の戦略や方針について伺いたい。
⇒
会社の拡大をしていかなければならない。
まず考えているのは、市場の大きいスニーカー。
商品ラインが揃ってきたタイミングで、TVCMを打った。
(コロナ禍で)新しいことを挑戦しづらい中で、ここ2年は「考えていることは実行していこう!」という方向性にあった。
今年に入ってからは、特にORTRに注力している。
NICALは何でやったのかと言うと、卑弥呼とORiental TRafficの真ん中の価格帯に市場があるから。
ORiental TRafficは、数を売っているだけに(最大公約数を目指していく商売上の見地からは)挑戦が難しい。
でもNICALは、より自分たちが本当にやりたいことができる、冒険ができるブランドではないかと考えている。
市場にライバルは少ない。
ZOZOや一部デパートから懇意にしていただいている。
出店の要請も思ったよりも来ている。
今年は大きな種まきをしたが、来年・再来年、努力してきたことが果実になるのではないかと考えている。
色々挑戦しながら、来年・再来年の業績につながればと思っている。
→ 今期は広告宣伝の物量から分かるように、20周年ということもあってびっくりするほど多額の戦略的投資を行っているのですが、その中期的なリターンには期待してもいい印象です。またNICALについてですが、卑弥呼はちょっと高すぎる、でもORiental TRafficよりは少し高くてもいいのでいい素材のものを履きたい、といったニーズは確実にあるように感じます。東京にも近々出店するようですし、認知度の向上や他ブランドからの顧客の送客がうまくできるようなら面白い展開が待っていそうです。
(先ほど同時に挙手をされていた方がいらっしゃったので、もう一件については答えるとのことでした。)
【質問7】
日本の靴市場(1.2~1.4兆円程度?)で貴社のシェアは1%程度と思われる。
アパレルだとユニクロが約10%。
長期的な目標として市場の何%程度を取りたいか、お聞かせ願いたい。
⇒
プレイヤーとしては、ABCマートが圧倒的に一番で、かつ利益も出ている。
不調と言われる業界において、トップは元気だ。
その他が頑張れていないと言われている中で、我々は存在感を高めていきたい。
婦人靴、子供靴、スニーカーに力を入れ、ある程度シェアが取れ、結果が出た時には報告させていただきたい。
新しいものに挑戦することに注力していきたい。
→ 現時点では大風呂敷を広げないものの、結果がある程度伴ってきた段階では長期目標を報告する意思はおありのようです。これは収穫ですね。個人投資家向けの説明会についても、全く期待できないわけではないかもしれません。
質疑はこれにて終了。
決議を経て、35分で閉会となりました。
所感
これまでずっと見てきて思うのは、肖社長は決して大言壮語はしないタイプということですね。
できるかどうか分からない目標は掲げないものの(上場時の業績予想だけは、なんらかの力学が働いていたものと今では思っています)、秘めたる想いには強いものがあり、社員の自主性を大事にしつつも上手にあるべき方向に導いてくれるイメージがあります。
この環境下でもそこで諦めることなく、むしろ中長期を見据えて逆張り的に果敢に「挑戦」を続ける姿勢には素晴らしいものがあります。
そしてかなり手応えも感じていらっしゃるような口ぶりでした。
ただ肖社長、企業のカラーとしても雄弁に語るタイプではないので、継続的にウォッチしていかないとそのお考えが伝わりにくく、ともすると表面的な予想数字だけを捉えて成長が止まったと思われかねない面はあると感じます。
総会そのものについては、質疑応答は実のある内容で良かったのですが、比較的好意的に見ている株主が今回も多かった中で、短く切り上げたいような印象を与えてしまったのはややマイナスでした。
質問を促せば、二、三は追加で出てきたように思います。
この後、もしかしたら取締役会等の予定があったのかもしれませんが、年1回のことでもありますし、株主との対話の時間をたっぷりと確保する姿勢は見せて欲しかったですね。
その辺りも踏まえ、評価は星3つ寄りの★★★★☆とさせていただきます。
↑ ポチっとお願いします。
コメント
総会レポートありがとうございます。
参加者が14名というのはちょっと寂しいですね。
でも出てくる質問の質が高くて(ろくすけさんのはもちろんのこと)またいい感じですが
会社側の受け入れ態勢ができていないのが残念なところ。
今度ろくすけさんには株主提案でIR担当役員として立候補していただけたらなぁなんて思いました。
読ませていただいて疑問に思ったことですが
・「顔見知りが増えた」というのは役員さんの方でしょうか?それとも株主さんの方?
株主さんの連帯なんてあってもいいかと思うものです。(だいたいOBでもないと交流もなくすぐに帰ってしまいがち)質問の質を考えるといい感じの株主さんたちが揃っているなぁと思ったものでした。
・参加株主14名の平均年齢は?
なんとなく近所のおじいちゃん、おばあちゃんたちが集まっている総会には思えなく、比較的若い人で構成されているかなぁなんて思いましたが実際どうでしょう?
・店舗調査はご自身で?
ろくすけさんは確か男性のようにお見受けしますが、婦人靴専門店への潜入取材は女性同伴でされてますか?なかなか男性単独ではしずらいものですが、”大切にしている判断軸や価値観のようなものがあれば教えて頂きたい。”(どこかで聞いたようなセリフ)
・次回のレポート予定はどこになりそうでしょうか?
楽しみにしております。
ありがとうございます。
横から失礼します。
私は一番前の席に座っていたので、詳しくはわかりませんが。平均年齢は40代(?)と一般的な株主総会に比べてかなり若いです。
14名は会社の規模からむしろ多い方だと思いますが、それもろくすけさんの普及活動の賜物だと思います。
連帯は、ろくすけさんからお声がけがあればぜひ!(私の分を入れると株主提案権もあるし)
IR担当役員なんて、とんでもない(!)
あくまでいち個人投資家として、外部からのコミュニケーションを楽しみたいと思います。
「顔見知り」は株主の方です(修正致しました)。
参加されていた株主は30~40代が中心に見えました。顔見知りの方々も同様です。
総会後に立ち話などはよくしますね。
「連帯」までは今のところ考えていませんが、交流の輪は広げていければいいですね。
店舗調査は実際には友人の女性に商品の印象や接客の感想などを聞くことが多いのですが、
全国各地で店舗を見かけたら単独で足を運んでみたりします。
遠目で立地や人の流れなどを何となく見る感じですね。
5月に参加予定の株主総会は2月決算先の2社になりますが、
ともに東京からは遠隔地に本社のある企業です(社名についてはお楽しみにということで、今は伏せておきます)。
詳しいレポート、そして名刺交換して頂いてはありがとうございます。
総会に参加して分かりましたが、ろくすけさんのレポートは内容をほぼ100%と詳細に綴られており、その正確さに驚愕しております!
【質問4】は前職の靴業界に就職した理由を聞きたかったのですが、回答がなく残念でした。
質問の意図の読み間違い、もしくはそこしか就職できなかったので敢えて答えなかったのかのどちらかですかね。肖社長ほどの実績を積まれた方は、今更学歴を気にする必要もないので、後者なら正直に答えて欲しかったです。
一方、普通の人間と答えていただいたのはかなり好印象でした。やはり自分を全面に出さず優秀な人材に任せ成長させていくというイメージ通りですね。岩瀬さんもかなりの若さで取締役に抜擢していますよね。
途中で切られたのはかなり残念でした。
昨日私は9時20分過ぎに会場に到着しましたが、9時半には会場の受付準備ができていたので、スケジュールが詰まっているのなら、平均的な10時開催のほうがいいと思いますが、
ろくすけさんからIRに提案して頂けませんでしょうか?
p.s. 長年主力であるチャームケアは質問1人につき1問のみなので、それよりは大分マシですが。。
靴業界になんらかの志を持って飛び込んだのかどうかは不明でしたね。
意図が伝わってなかったような気もします。
肖社長はあまりメディアへの露出はありませんが、仰る通り、自分が積極的に動くというより
部下の成長を促すタイプの経営者なのだと思います。その辺りは個人的にも好感が持てますね。
株主総会の時間は、一考の余地ありです。
冬のコロナの状況も踏まえ、次の株主総会が近づいてきたタイミングで何らかの声掛けをしてみるのはアリですね。
色々ご回答ありがとうございます。
そういえば本文中にある「前IR担当者」はダブルエーの方で、辞められて今度は株主席にいた感じでしょうか?
何かこの会社は社長さんがあまり社交的ではなく、IRに消極的なのが玉に瑕で、それを補う人だといいと思いますがちょっと厳しい環境かもしれませんね。
「質問1人につき1問のみ」という会社もちょっと残念ですね。
よく聞くと「質問1人につき”1回”1問のみ」のこともあったり、発言者がほとんどいない時は「せっかくなのでもう1問いいですか?」と聞くと「どうぞ」というのを聞いたことありますが、こんなところで社長さんの器量が見え隠れするものですね。
印象的だったのが、株主と少々対立関係を感じた総会です。
「本当に質問1人につき1問のみか?」と聞いたらすかさず「はぃ、ご質問はそれですね。お席にお戻りください!」みたいに言っていて「おぃ!質問じゃなく確認だよ! それもカウントするんか!」とちょっと残念な場面を聞いた覚えがあります。ちなみにその株主さんはその会社の前の社長さんで、自分で決めた最長任期満了で次期社長に譲ったものの、反現社長さん派からとんでもない情報を聞かされていたのか「嘘だろ!」という事をその後質問していて「へ~」でした。(大本営発表ではあれは妄想ではないかとか)(結局何度か質問で来たかまでは確認できていません(そこそこできた感じはしますが。。。)
最近は機関投資家との情報格差をなくそうとする個人株主フレンドリーな会社が増えてきている感じがするので、こちらもそうなるといいなぁと思うものです。
前のご担当は部署異動となり、この日は応援ということで受付で議決権行使書を受け取っていらっしゃいましたが、
なにか目で訴えるものを感じましたので、帰り際に声を掛けさせていただきました。
肖社長は自分が出しゃばるのではなくブランドそのものの認知を広げていきたいお考えのようで、
目先ではメッセージを広く伝えていただくことは期待しづらいですね。
ただ個人投資家向け説明会のことも頭にはあるようですから、
環境が好転してきた時に変わってくることを期待したいです。
質問の受け付け方は会社それぞれですよね。
一度につき1問は、答える側の頭の整理のためにもいいのでしょうけど、1人1問の制限は良くないと私も思います。
書いていただいた事例はちょっと極端ですが…
個人株主ウェルカムな流れが広まっていくといいですね。