私の総会シーズンのトリを飾るのは、ロート製薬です。
今回が初参加となります。
「製薬」らしからぬ、イノベーター気質の独特の企業文化を感じ取りたいという気持ちを抱きながら、現地へと向かったのでした。
株主総会
135席に対し出席は90弱と、結構埋まっていました。
議長は杉本社長。
社外取締役の席には、入山章栄教授のお姿も。
収集通知・WEB上で開示している事項については口頭での説明は割愛ということで、監査報告は秒殺状態(いいですね)。
報告事項については、事業報告についてはナレーションで、新しいコーポレートスローガン(「ロートは、ハートだ。」)や社名・ロゴデザインの変更、そして2024年度の事業戦略に関しては、杉本社長からしっかりとご説明がありました。
その様子については、以下の動画でアップされております(ありがたいです)。
決議事項は以下の通り。
こちらも招集ご通知に記載されている内容をご確認ください、とのことで簡略化されていました。
この緩急がなかなか心地よいです。
- 取締役13名選任の件
- 監査役4名選任の件
- 補欠監査役1名選任の件
(10:31)
質疑応答(1)
(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)
基本的に(ご指名がない限り)、杉本社長が全ての質問に回答されていました。
【質問1】
長期ホルダーだが、一つだけ注文があるとすれば、増配はされているものの、プライム市場の平均と比較すればかなり低い配当のこと。
今後会社として配当についてどのように考えるか、増やせるのかといった辺りをお聞きしたい。
(多くの方が関心がある事項かと思います。)
⇒
当社は21期連続増配という形を採らせていただいているが、ここ数年は確かに当社が基準としている配当性向25%に満たない結果となっている。
我々が想定していた以上に業績が大きく伸びたため、結果的に純利益に対する配当が20%程度に留まっている。
増収増益増配は続けているものの、公約配当性向25%を掲げている以上、業績見通しがはっきりとした段階でどういう方針にするのかということを、決算発表の際にご案内申し上げたい。
今年は3円増配の30円を予定しているが、これは現行の見通しからいくと配当性向は22%弱。
今回はEu Yang Sang(以下、ユーヤンサン)の大きな買収を発表しているが、この業績の見通し、のれんの償却額がはっきりしてくると、利益に与える影響が判明するので、買収が完全に締結に至った段階で業績を精査し、配当を決めていきたい。
現在は少数株主の強制買取期間であるが、7月下旬には最終的なディールに至る。
おそらく8/10前後の1Qの決算発表時には、ユーヤンサンの業績の見通しとともに、配当についても新たなご案内ができるかと思う。
また配当だけではなく、私共は株主優待にも大変力を入れている。
特に3年以上保有いただいている株主様には、優待を追加する制度を導入している。
ぜひとも優待についてもご活用いただければと思う。
→ この類の質問に関しては木で鼻をくくるような企業も少なくない中で、誠実にご回答いただけたと思います。
【質問2】
- 再生医療は順調か?
- 医療用眼科薬の進捗状況は?
1⇒
①我々が「王道」と呼ぶ、厚労省に承認申請をし薬価を取って治療を受ける、薬機法からくる治療
②自由診療を通じた治療
とがある。
ロートにおいては、①を進捗させることと、②の開拓を進めているが、さらに特徴的な培地=無血清の培地を持っているので、他の再生医療をやっている企業から培地を使わせて欲しいというニーズが非常に高まっているので、③培地を販売してマネタイズする ということも考えている。
①だけでなく②③も含めて、多方面でのマネタイズができると考えている。
順調かという点で言えば、②③はニーズの高まりとともに収益化できつつある。
ただ①については、なかなか再生医療に対する見方が厳しくなっている背景もあり、治験の例数を増やすように求められていたりして、我々が想定していたよりも若干遅れ気味であるが、再生医療に関してはトータルでマネタイズするということを考えている。
2⇒
まもなくロートが薬価を取って世に出す「ROH-101」(CMV角膜内皮炎)は26年度に承認が取れると思っていて、それが第一号になる。
その後、JTさんと共同開発している「ROH-201」(ドライアイ)につなげていく、あるいは子供の近視が非常に問題になっているが、坪田ラボと共同研究している「ROH-001」(近視抑制)についてもフェーズⅠに入ってきている。
トータルとしては想定の範囲内。
収益化については、2026年を皮切りに、しばらく先になると思っている。
→ 杉本社長はシンプルな質問に対しても、質問者の意図をくみ取りつつ、わかりやすくかつ論理的に回答をされていて、頭の回転がとても速い印象を受けました。
【質問3】
メラノCCや日焼け止めは愛用している。
ただオバジは使い勝手が悪くて、ドモホルンリンクルのような煩わしさがあり、忙しくて使おうとは思えない。
ファンデーションではエバーライフが使い勝手が良く、そのような製品を作って欲しい。
⇒
日頃から当社製品をご愛用いただき、ありがとうございます。
オバジに関しては使い勝手が悪いとのことだが、私共は商品開発の根本として、お客様が何を求めていらっしゃるのか、その声を真摯に受け止めた上で、そこに時代のトレンドも含めて商品開発に活かしている。
ビジネスでもあるので、トータル的なお客様のニーズを踏まえた上で今後に繋げていく。
今日いただいたご意見についてもしっかり検討させていただき、今後の商品開発に活かしていきたい。
【質問4】
ユーヤンサンの買収について。
既存事業とどのようなシナジーを期待しているのか、組み合わせることによってどのような新たな価値を創出していきたいのか、消費者として具体的なイメージができるような形で教えていただきたい。
(私からの質問です)
⇒
ユーヤンサンはロートよりも145周年(ロートは125周年)という非常に長い歴史を持った会社で、シンガポール・マレーシア・香港を拠点に持ち、漢方・生薬・健康食品に展開している。
各地でシェアNo.1、2でプレゼンスも高い。
三井物産と共同で買収する形になっており、今は最終的な少数株主の強制買取の段階に入っている。
7月末までに終了する見込みであり、その後はユーヤンサンの今期の業績見通し、及び2、3年先までの見通しも含めて株主の皆さまにご報告できるが、現時点ではシンガポール法により細かい数字等については言及できないことはご理解いただきたい。
その中で概略的なことを申し上げると、やはり漢方・生薬の製造販売を長く続けていらっしゃるので、彼らが持つ技術とロートの持つ和漢箋というブランドとの融合が、シナジーとして見ることができるのではないか。
チャネルとしては、彼らはシンガポール・マレーシア・香港が中心だが、ロートはインドネシア・ベトナムではプレゼンスが高いので、ユーヤンサンの商品を他のアジアの国々へとさらに展開を強めていくことが想定できる。
またユーヤンサンは製造販売をしていることに加え、店舗も約170各国にある。
その店舗を活用し、ユーヤンサンの商品群と親和性のあるようなロートの製品を展開していき、 ロートのブランド認知を上げていくことも考えている。
こういったビジネス上のシナジーに加え、ユーヤンサンには約1,500人の従業員がいらっしゃるが、多様な人材がロートグループに加わるということなので、その人材を活用してダイバーシティをさらに進めていくことになろうかと思う。
昨今は冬虫夏草・霊芝・燕の巣といった商品を主力として健康食品という形で販売しているので、彼らの持つ力を日本市場で出せるかどうかも早急に検討して参りたい。
数字的な部分については買収が完了してからお示ししたいが、ざっくり300億円の年間売上があるので、単純にロートグループに乗ってくるとお考えいただければと思う。
→ さまざまなシナジーを期待しての買収であることが大変よく分かりました。のれんの償却がどれほどになるか分かりませんが、最近の堅調な株価推移にもこの期待が乗ってきているように思われます。
(続く)
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