荏原製作所株主総会2022(2)(★★★★☆)

株主総会・説明会

質疑応答(2)

【質問4】
経営陣に対して深く敬意を表したい。
「E-Vision2030」にある、時価総額1兆円を目指して頑張っていただきたい。
そのためには時間のかかる新規事業だけでなく、既存3分野も強化していかなければならないと考える。
2030年に向けて、風水力、環境プラント、精密・電子それぞれの長期的見通しについて、皆様から個別にお話を伺いたい。

1.風水力事業、屋台骨を支えてきたポンプ事業は、最近国内は悲惨なことになっている。
昭和50年代、荏原のマーケットシェアは28.6%あったが、40年経ってシェアは半減。
国土強靭化計画にどう対応していくか、具体策を教えていただきたい。
2.水素社会の実現に向けて、エリオット事業は最低でも2,000億円を目指していただきたいが、成長戦略を教えていただきたい。
3.環境プラント事業については、ごみ焼却所の更新需要が1,000ヶ所以上ある。
避難所等を含めた次世代型にどういう形で持っていくのか、お話を伺いたい。
4.精密・電子事業については、世界2位のシェアを持っているCMP装置を含めた製品、周辺分野を含めて、どういう風に成長戦略を描いているのか教えていただきたい。


1⇒
(喜田執行役)
シェアについては公の統計はないが、独自に集計しているところによれば依然として30%程度を保っている。
業績的にも、2020年は2005年以降最高の受注を記録し、2021年はさらにそれを大幅に上回る受注がある。
今期1Qも前期1Qを大幅に超える受注を実現している。
売上高・営業利益も、受注が好調なのでE-plan1年目・2年目を大幅に超える実績を上げている。

うまくいっているのは、総合評価方式の入札について大変力を入れていて、前期は応札に対し50%弱は受注している。
今期1Qはさらに好調で、それが90%近い。
決して昔から比べて没落したということはないので、ご安心いただきたい。
やはり入札方式によって戦略を変えているが、価格のみの入札は運の要素もつきまとうので、総合評価方式に力を入れており、それが好調の要因

また国土交通省とともにマスプロダクツ型排水ポンプの開発を行っているが、これは同省の言葉を借りれば「大更新時代」に使われるポンプになっていく。
将来への布石もきちんと打っているのでご安心いただきたい。

(浅見社長)
荏原の社会システム事業が対応させていただいている分野は、現場の管理責任者が求められる分野であり、全ての案件に対応することは不可能だが、限られたリソースの中で、社会システムに貢献できる案件、収益性も見込める案件につき戦略的に対応させていただき、結果も出ているということをご理解いただきたい。

マスプロダクツ型排水ポンプについては、国土交通省のプロジェクトとして数ある国内の事業会社の中から2社選定されたうちの1社で、試験も成功している。
次のステップとして、6ヶ所ほど検討を進める段階に至っているということをご報告申し上げたい。


2⇒
(野路執行役)
(エリオットグループの担う)コンプレッサ・タービン事業の将来の話ということだが、まず今の状況を申し上げると、売上高1,000億円弱、利益率約10%。
私がPRESIDENTになった時点では、利益率は相当低かった。
ここ3、4年間、オーバーホールやグローバルサービスの案件は全部取ったが、製品については相当選択受注をして悪い案件を取らないようにした。
調達に関しては中国・インドをしっかり活用する、設計も自動設計にするなどして、ようやく利益率10%程度まで持ってきた。

今後については、脱炭素の問題が脚光を浴びており、これは避けて通れない。
我々は、CP水素関連事業プロジェクトを、精密を立ち上げた時と同じ位置付けで発足させ、液体水素ポンプ、水素ガスを移送する圧縮機を開発しているところ。
当然ながら水素だけではなく、脱炭素、クリーンという観点では、コンプレッサ・タービン事業としては地熱発電のバイナリーサイクル方式にもチャレンジしていきたい。
また、天然ガスはまだまだ需要が旺盛で、これからも案件は増えていく。
それを見越して、エリオット本社近くに新しいテストスタンドを作り、効率を上げる、テストできる台数を増やすといったことを通して、クライオポンプのシェアを大きく伸ばしていくことを考えている。

(浅見社長)
コンプレッサ・タービン事業は、収益性を改善する事業としてE-plan2022の間では位置付けている。
ご報告申し上げた通り、結果をやっと出せるような状況にたどり着いた。
水素の件等、しっかり対応してさらなる成長を目指したい。


3⇒
(大井執行役)
全国にごみ焼却場は約1,000ヶ所あり、20~30年に一回更新されてきている。
時代とともに役割は変わってきている。
従来は衛生処理、エネルギーリサイクルを行う、災害時の電気・お風呂を提供する避難所といった役割を担っていたが、近年はそれらに加えて、地域交流・地域貢献を行う場としてイベントを行ったり、熱を利用した温浴施設を併設するといった役目も出てきている。

施設の更新時、従来はプラント建設の入札だけだったが、近年はDBO(設計、施工、運営)入札と言われる、プラント建設に加えて20年くらいの運転と管理を責任を持って業者がやる形態に変わってきている。
DBOにおいては価格のファクターよりも提案力が半分以上の点数を以て勝ち負けに影響してくる。
提案内容をいかに魅力的にするか、時代とともに役割が変わってきていることをいかに意識するかがポイント。

最近の例ではデザインも大変重視されており、近年は美術大の卒業生を採用したりもしている。
こういった活動を通じて、1,000ヶ所の更新案件を取り続けて参りたい。

加えて、発電を通してエネルギーリサイクルをしている一方で、CO2を排出していることもある。
これに対応して我々はケミカルリサイクルの技術を開発しており、これはごみから油・ガスを回収し資源循環する技術。
脱炭素の動きがさらに大きくなってくると、焼却場にもそういった技術が入ってくるものと想定しており、力を入れて早期市場投入できるように開発に勤しんでいきたい。

(浅見社長)
焼却場に求められる要件をしっかり把握し、次世代の焼却場に対応するとともに、ケミカルリサイクルという排プラスチックを資源化する、リサイクルさせていくことにも積極的に取り組んでいく。


4⇒
(戸川執行役)
前提として、半導体の市場は2倍の大きさに成長する、半導体製造装置もそれに伴って成長していくという認識。
その市場に乗って、この事業を成長させていくのが私の役割。

どうやって成長させていくかという話だが、まず技術革新・変化の激しい業界であり、技術競争に勝っていくための取り組みをしていくことが一番重要。
特に、今年開発新棟を建設することを決定したが、これを使いお客様の工場内と可能な限り同じ環境を作り、きちんと実験をしてお客様に提案していくということを以て、成長につなげていきたい。

また急激に成長する業界であり、生産面についてもきちんと対応していかないとビジネスチャンスを失ってしまう。
熊本で昨年に第3ライン、今年は第4ラインを設置し、1年前の2倍のキャパを持つ予定にしている。
2030年に向けてはさらに成長していくので、熊本に新しい工場を建設することも決定した。
市況を見ながら工場を稼働させていき、ビジネスチャンスをものにしたい。
これを実現するにも、人が一番重要。
計画的な採用を行い、教育を充実させていく。

これから注目すべき技術としては、DX、AI。
私共も設計や生産段階、またお客様のところにおいては危険予知・故障予知のようなものに使っていきたい。
そのために層の充実、専門家の採用が重要。
特にAIを使うといっても、課題を見つけなければならない。
その課題を見つけるのがエンジニアであり、AIに関する能力・知識を高めていくために努力をして参りたい。

(浅見社長)
需要にしっかり答えられる体制を作り、ビジネスチャンスを失わないようにすること、お客様の開発に対するサポートもタイムリーに行うことが大事。
グループのシナジーという点では、冷熱事業で持っている冷凍機の技術を活用し、半導体製造装置の極低温の温度管理をしっかり行える技術を開発し発表もさせていただいた。
こちらも、荏原の精密・電子事業で1985年以来やってきたことを信頼いただき、世界でサポートができるインフラを持っている荏原ということも認知いただいて、多数の引き合いをいただけている状況であることを伝えさせていただく。


質疑は以上で終了。
議案採決、取締役紹介を経て、トータル1時間18分で終了。

所見

「ESG」のうち、ガバナンスの「G」の存在をしっかりと感じられる、貴重な総会であったと思います。

浅見取締役代表執行役社長の背負っているものの重さ(指名委員会で3年近く時間をかけて選んだだけのことはある人物だと感じました)、取締役会との間の緊張感、各事業の管掌執行役による今後の成長に向けた意気込み等、ペーパーやネットだけでは得られなかった情報が多々あり、企業全体を把握するのに大いに助けとなりました。

評価は★★★★☆とします。

この後、翌日の堺でのシマノの総会に向けて、慌ただしく移動を開始したのでした。
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