少し前、世界のESG投資額は2020年時点で35.3兆ドル(約3,900兆円)に達したとのニュースがありました。
また序章で言及されているように、あと10年もすれば「大量消費」後の世代が過半数を占める時代がやってきます。
その中で、投資家としてはどういう場所に投資していけばいいのかを考える上で参考になるのではと思い、手に取ってみました。
この本は、実際には以下のように消費者としての意識改革を迫る内容でした。
- 資本主義のルールのもと、大量生産、大量消費を前提に、お金主体、投資家を中心とした富のサイクルが出来上がってしまっており、その結果として労働者に十分な富が循環していないためにさまざまな問題が生じている。
- サステナブルな社会を実現するためには資産やお金を持続的に循環させることが大事。そのためには、あらゆるもの(「地球」も含めて)に適切な価値が認められていることが極めて重要。
- そのためには、商品が持つ価値観や未来に共感し、初期から購入をしていくことのできる、「考える消費者」の存在が求められる。モノの価値を自ら規定できる(それが投資家の最大の仕事!)、投資家マインドを持った消費者たれ。
- 資本主義の弊害に立ち向かえるのは、消費者、労働者、投資家という三つの顔を持ちうる個人。人口の5%が「考える消費」をしていけるなら、それは大きな力になる。
- 日本は豊かな国であり、トップダウンではなくボトムアップで未来の社会をつくっていくことができる数少ない国。個人が投資家マインドを持った消費の力で動かしていく必要がある。
そしてなぜ「5%」なのかという辺りに、スタートアップの投資・経営に関わる著者ならではの考え方が色濃く出ているように感じました。
シンプルな価値訴求で、まず特定のユーザーから強い共感を勝ち取ることが大事ということです。
そのメカニズムはこうです。
- ごく少数の消費者の共感を集め、市場に受け入れられているという状況があり(PMF:プロダクト・マーケット・フィット)、かつユニットエコノミクスが成立している(利益が出る構造になっている)。
↓ - そのことが大きな企業価値を生み、それにより大型の資金調達が可能となる(SaaS企業はこの典型ですね)。
すなわち、消費の力にレバレッジが利く。
↓ - 未完成な商品やサービスが洗練されていき、ネットワーク効果も相まって、より多くの消費者に届く。
だからこそ未来を変えていくための初期の「考える消費者」の存在が非常に重要なんですね。
サクッと読みやすいのですが、資本主義の持つ課題、消費の持つ力の大きさ(企業にとっては資金調達手段でもある)、いち消費者としての在り方などについて、色々と考えさせられました。
「課題が存在していない状況で付加価値を創出するのは極めて難しい」との記述もありました。
だからこそ投資家として消費者として、「課題」には敏感であろうと思いましたね。
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