日本株に投資する者にとっては、なかなか刺激的なタイトルの本です。
新書なのでスイスイ読み進めることができるのですが、読後感はズッシリと重いものがあります。
海外価格の上昇に合わせて賃金も上がっていけば問題ありませんが、賃金が上がらない中で海外市場の影響を受ける製品価格だけが上場した場合、当然、同じ賃金で買えるモノの総量が減ってしまいます。以前と比較して、多くの日本人が貧しさを感じやすくなっているのはこれが理由です。
本書を端的に要約したものが上記の一文で、生活実感にも合致しています。
輸入相手国の経済発展を通じて原材料が上昇していく中で、賃金が上がらないとなると、その先の辛い未来も見えてしまいますよね。。
結果として、現役時代に十分な賃金をもらえず、年金で老後の生活をカバーできる仕組みにもなっていないために、事実上、一生涯の労働を余儀なくされる人生を送ることになってしまいます。
また「1人あたりGDP」で日本の労働生産性を語る場合も、実際の為替レートではなく購買力平価の為替レートを使わないと、実態を見誤り間違った処方箋を出しかねないという指摘も、鋭いものがありました。
こういった現状をさまざまなデータを使ってこれでもかと説明していただいているので、その説得力に息苦しさを感じる一方で、色々考えるきっかけにもなりますね。
「労働生産性が高まらず」「賃金が上がらない」
私は日本株の銘柄選択にあたって、この2つはいつも意識しています。
これまでは、「(非効率を解消して)労働生産性を高める手助けをする企業」、「賃金が上がらない前提で、バリューを感じられる商品・サービスを提供する企業」を多く組み入れるようにしてきました。
この本を読み、「グローバル水準の賃金を支払える企業」「賃金を上昇させていくことのできる、絶対的に高い付加価値を創出できる企業」、もっと端的に言えば、「外国でちゃんと稼げる企業」についても、組入対象として増やしていきたいという思いを強くしたところです。
自らの危機意識を高めるだけでなく、どんな日本企業に投資したらいいかを考える上でも役に立つ本でした。
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