思い込みを手放し、発想を変えるための「知的柔軟性」、すなわち「再考」について考察した本です。
「脳の処理速度」が速いからといって、「柔軟な思考の持ち主」であるとは限りませんよね。
むしろ既存の考え方を発展させる上で、邪魔になる可能性すらあります(我が国の官僚組織が典型的ですね)。
「自分を疑う」というのは最強・最大の知性であるというのがこの本の主張であり、「自分の考えを再考する方法」のみならず「相手に再考を促す方法」までわかりやすく説明してくれているのがありがたいです。
まず自分の考えを再考する方法についてですが、思考のプロセスには二つのループがあるそうです。
過信サイクル
自尊心→確信→確証バイアス&望ましさバイアス→是認→(戻る)
再考サイクル
謙虚さ→懐疑→好奇心→発見→(戻る)
過信サイクルに陥らないようにするには、(牧師のように)他者を説教したり、(検察官のように)自説以外をすべて非難したり、(政治家のように)その場しのぎの言い訳をしたりせず、したくなってもその衝動を抑えること。
そして、自分のアイデアを直感あるいは仮説として捉え、それを科学者のように正しいか検証していくことが大事だと説いています。
また、自説に固執しない、固定観念にとらわれないためには、デタッチメント(分離)が必要ともしています。
すなわち、
・現在の自分を過去の自分から分離する
・自分の意見や考えを、自分のアイデンティティ(価値観)から分離する
(→ リレーションシップ・コンフリクトを回避するコツ)
ということです。
一方で相手に再考を促す方法としては、自説に固執するメカニズムを踏まえた上で、以下のようにアドバイスしています。
・(考え直す気づきを与えるような)よい質問を投げかける。
・意見の相違は対立ではない。(共通の基盤を見出し、互いに歩み寄れるように)ダンスのようにアプローチする。
この本によれば、スティーブ・ジョブズが携帯電話に強い嫌悪感を示していたのにもかかわらず、iPhoneを世に出すことができたのは、Apple社のコンピュータ会社としてのアイデンティティを堅持することを約束しつつ再考を促した、周囲のメンバーの力だそうです。
視野を広げ、人との関わり合いの中でしなやかに生きるための知恵が詰まっていて、読み物として面白くかつロジカルでもあり、個人的にも今後の活動の中で大いに役立ちそうな本でした。
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