「江副浩正」といえば、世代的にどうしてもリクルート事件のイメージが強いです(当時、まだリクルートの各種サービスとは無縁の年齢でした)。
でもリクルートホールディングスのホルダーとなったからには、創業者の生涯をトレースしたくなり、手に取った次第です。
(それにしても、グループ沿革「価値創造の歴史」に、創業者の名前が出てこない寂しさよ…)
結論から言うと、昭和という時代のダイナミズムの中心にいた人物に焦点を当て、あの時代の光と影を描いた一流のノンフィクションとして、ホルダーに限らず読んでいただきたい本です。
ビジネス自体が大企業をクライアントとしていたこと、情報の持つ価値をどこよりも理解しプラットフォーマーとして情報を握っていたこと(「インターネットのない時代のグーグル」)、そして江副個人が後に権力の中枢に近づいていったこともあって、とにかく登場人物が大物揃い。
今の時代からは想像もつかない、大河ドラマのような疾走感にクラクラします。
もちろん、リボンモデル、「君はどうしたい?」→圧倒的な当事者意識といった、今も根付くリクルートのビジネスモデルや文化がどのように生まれ定着していったのか、その源流からしっかり確認することもできます。
情報通信分野に当時ここまでのめり込んでいたこと、そしてその先見性にも驚かされました。
(それが今、各事業として花開いているわけですね)
既得権益を次々と打ち破っていく才気あふれる起業家が、さらなる事業拡大を求めていつしか権力にすり寄るようになり、やがて「出る杭は打たれる」とばかりに(いかにも日本的に)嫉妬から失脚を余儀なくされる ー
そんなジェットコースターのような江副氏の生涯を追体験すると、色々な感情が沸き起こってきます。
「才」に偏った江副氏の経営を戒めることのできる、「徳」のある人物が側近にいたら…
リクルートが不動産バブルの後始末に追われることなく、情報通信分野の旗手となっていたら…
「失われた30年」について考える上でも、良い題材になる本でした。
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