地方衰退の「構造」とビジネスでの「変革手法」について、ひょんなことから地元に深く関わることになったサラリーマン(「凡人」)を主人公とし、ストーリー形式で解説した本。
鉄道旅行で地方に行くと、駅前のシャッター通り商店街や、地方活性化対策としては既に役割を終えたと思われる施設の数々を目にすることが度々あります。
なぜそのような状況に陥ってしまったのか、この本を読むとよく理解できます。
新たな取り組みを潰そうとする地元の権力者
他人の成功を妬む住民
補助金情報だけで生活する名ばかりコンサル
手柄を横取りしようとすり寄る役人
・・・
これらが複雑に絡み合っているんですね。
「売人がいるから使うやつがいて、使うやつがいるからこそ売人が成立する」
補助金や交付金は「麻薬」というのが著者の主張です。
それらが将来的に利益を得るための「投資」とはそもそも考えられていないことが問題で、「稼げるか」ではなく「どれだけ資金が不足しているか」に応じて配分されているがために、不採算事業を作り出してしまう。
そういった事業は、援助が切れたら立ちいかなくなってしまうために、そこに依存する体質が染みつき、自立を妨げる。
まさに「麻薬」。
この構造から脱却するためには、「入るを量りて出ずるを制す」の事業運営が必要だということです。
営業を先行させ、それに即した事業計画をまず立てた上で投資を行う。
その営みを仲間と助け合いながら小さくコツコツと積み重ねていくことが、地域再生の王道なのですね。
小説のスタイルを採っているがゆえに、関係者の間に渦巻く生々しい感情が描写されていて、地方の課題をリアルに感じることができました。
私も地方企業への投資を通じて、会社員時代よりも各地に出かける機会が増えていくと思います。
地域内でお金を上手に回しながら健全に発展している企業に貢献できるよう、各地でのお金の使い方についても意識していきたいですね。
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