長期投資専門のファンドマネジャーとして名高い山本潤さんの近刊です。
とても良心的な本ですね。
「リターンを得るためにはリスクへの理解から」
株式投資の要諦がこのワンフレーズに込められていると思うのですが、驚くことに初心者に向けて明確にこのメッセージを伝えている本はなかなかありません。
やはり手っ取り早く最大限に儲けることが、一般的な読み手のニーズでもあるわけですし。
それでも読者のために、ここに切り込んだのがまず素晴らしいです。
リスク・リターンの関係について、かなり紙幅を割いているのが特徴的です。
冒頭では危険な6つの投資法として「六悪」を取り上げています。
私自身、株式投資というものは本来はとてもシンプルに取り組めるものだと思っています。
手法をいたずらに高度化することなく、「心構えは永遠の初心者でいよう」と決めている私にとって、この「六悪」(一応、読んでのお楽しみということにしておきます)は普段から意識していることとかなり重なる部分があり、うなずけることばかりでした。
初心者でなくても刺さる箇所は多く、平易に書かれていながら、内容は投資の基本に関して網羅的で読み応えがあります。
実践的なポートフォリオの構築・運用手法などは、他ではなかなか書かれていない部分でもあり非常に参考になります。
(私が「チームで戦う」を基本戦略の一つとしているのもあります)
ただ編集者さんの手を加えた後でも相当の切れ味があり、読んでいる側がちょっとドキドキするくらいなので、読む人を選ぶのかもしれません。
「変化の大きさを投資の決め手にしている投資家は失敗を繰り返します。」
「PERの低さは、『あてにならない利益』(=資本コストの高さ)の裏返しにすぎません。」
「『PBRが低いということは、経営者のコストが高い』という予測がつきます。」
「多くの指南書や教科書には、『PBRやPERが低いものが投資的魅力の高い銘柄ですよ』と書かれています。これは全くの嘘です。」
「10年に1回の大暴落を恐れるよりも、10年に8~9年は大暴落がないのですから、平穏な年月の着実な成長を信じてください。」
山本さんの普段からの主張そのままなのですが、こうして改めて並べてみると名文のオンパレードですね。
投資手法は人それぞれで違う考え方もあって当然ですが、初心者はもちろん、中級者以上の方でもこの辺りの文章に(賛否問わず)ビビッ!と来る方は、ぜひ一読することをオススメします。



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コメント
いつも参考にさせて頂いております。
私も一気に読んでしまいました。
「10年に1回の大暴落を恐れるよりも、10年に8~9年は大暴落がないのですから、平穏な年月の着実な成長を信じてください。」
この言葉が暴落後ということもあって1番心に響いてきました。
また、セカンドプラン、サードプランの考え方も参考になりました。
読了後、自分のポートフォリオの銘柄がほとんど内需株になっていることに気付き、外需株を候補に入れようか検討しています。
いい言葉ですよね。
考え方が一貫していて、力強さを感じます。
ポートフォリオのチェックについては、私もしっかりやっておこうと思いました。