本書は、コーポレートガバナンスにかかわる実務を担うビジネスパーソン(特に、役員以上の方から指示を受けるミドル層)に向けて、「なぜ今、企業のガバナンスが重視されているのか」をわかりやすく解説した本です。
コーポレートガバナンスと聞くと無味乾燥な情報の詰め込みをイメージをしてしまいがちですが、
「難しいことは言わない」
「きれいごとも言わない」
「重箱の隅はつつかない」
とうたっているだけあって、非常に読みやすいです。
ではそもそも読者の対象として想定されていない投資家が果たしてこれを読む意味はあるのかと言うと、これは大アリです。
著者はコーポレートガバナンスについて、こう定義しています。
コーポレートガバナンスとは、企業をめぐる関係者が企業の舵取りをどうするかを考えることであるといえます。普段舵取りを任されている「経営者」と、その他の関係者である「株主」「債権者」「顧客」「取引先」「従業員」「国・地域社会」との関係性の問題なのですね。
「舵取り」という言葉がここで出てきます。
この本によれば、「ガバナンス」という言葉はラテン語の「船の舵を取る」から来ているとのこと。
「株主」としては、「経営者と同じ船に乗れるか」をチェックする意味でも、このコーポレートガバナンスがしっかり機能しているかを見ていく必要があるわけですね。
「以心伝心」で経営できる時代は終わりました。
まずは企業が何を希求していくのか、その存在意義を明確にし、それに基づきどういった態度や行動をとっていくべきかという価値観を大切にする。
そして「情けは人のためならず」同様、「情報開示は株主のためならず」。
多様なバックグラウンドを持つ「従業員」を含めたステークホルダー各位に、しっかりと数字の裏打ちを伴った「確からしい」将来を語っていくこと。
仕組みによるコントロールと、理念によるコントロールを両立させること。
グループ経営が当たり前の今の時代、「経営者」にはそれらが強く求められるということが、この本を読むとよく理解できます。
投資先としてガバナンスが利いている企業、すなわち投資家を理解させる勘所を押さえている企業を選別していくのに、とても有用な本だと感じました。
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