森生明『会社の値段』を読む(再読)。

読書

ドラマ・映画「ハゲタカ」の監修をされ、名著『MBAバリュエーション』『バリュエーションの教科書』の著者としても知られるM&Aのプロ、森生さんの15年前の本です。

「ハゲタカファンド」への不良債権のバーゲンセールの記憶も生々しく、また「ライブドアVSフジテレビ」が盛り上がっていた時期、「企業価値」に対する関心がかつてなく高まっていた中で、「会社に値段をつける」意義を一般の読者にわかりやすく訴える内容となっております。

企業価値=C/(r-g)(C:現在のキャッシュフロー r:安定性 g:成長性)

という会社の値段を決める要素をシンプルに表現した基本公式を含めて、バリュエーションの入り口の部分を根本のところからわかりやすく説明してくれる、大変ありがたい本です。

私なりにとらえた大きなメッセージとしては、

  • 会社に値段をつけることは、世の中に眠っている富、資金を活発に動き回らせて、新たな事業・産業を生み出していく活力の源となる。

  • 会社に値段をつけて売り買いするという意味では、株式の上場・公開もM&Aも変わらない。
    会社を上場・公開し、不特定多数の投資家が売り買いできる状態にした以上、その時点で会社は売られたことになる。
    経営者はその自覚を持ち、会社の値段を適正に反映した株価がつくように情報発信し、説明する努力を惜しんではならない。

  • 一方の投資家においては、投資価値の算定方法を学び、投資先を真面目に考える習慣を身につけることが「持てる者のたしなみ」。
    他人任せの資金運用が無駄や非効率を生む元凶。
    いい投資家層のいないところに、いい経営者・いい会社は育たない。

といったところになります。

「おわりに」に書かれた、読者への投げかけも素晴らしいです。

勤勉な日本人が蓄積した富は、その日本人の判断によって志の高い会社に投資され、人材育成、技術開発を通じてより元気で豊かな世の中作りを担うべきでしょう。

出版当時と比べると、「預貯金ではマズい」という意識は、若い人の間ではかなり広がっているようには思います。
ただ残念ながら、日々の暮らしにおいて米国企業が牛耳るサービスに囲まれ、また日本の国家としての先行きが案じられる中、ここで言う「志の高い会社」の候補として、日本企業は見向きもされなくなっているのではないかという危機感を持っています。

その事業活動を通じ、社会的課題を解決しながら高い価値を創造している日本企業はたくさんあります。
そういった企業への投資は、その企業の力となるだけでなく、日本の富につながります。
もちろん、自分も応援しながらその恩恵に預かることができます。

こうした投資の積み重ねが日本の経営者を淘汰し、志と実行力のある経営者が日本の経済・社会をよりよい方向へと変革させることになります。
私もそのプロセスに参画していきたいという思いを、改めて強く持ちました。

旧ブログでも採り上げたことがあるのですが、今読み返してみてまた違った感想を持ちましたので改めて。
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