経営共創基盤(IGPI)CEOの冨山和彦さんの本です。
会社が生きるか死ぬかの修羅場や経営改革待ったなしの状況において、真剣勝負の経営分析を長年やってきた方だけあって、「動的平衡状態」にある会社の実像を動態的に認識することにこだわりを持っていらっしゃいます。
「ただ過去をトレースするのではなく、近未来のストーリーまで思い浮かべられるかどうか。経営分析の真の目的はそこにある。」
これはまさに株式投資にも求められることだと思うんですよね。
既に数字として出ている静的なものを見ているだけでは、株式の価値を大きく見積もることはできないですから。
事業モデルをつかむための材料としてのP/L。
そのモデルが持続性を保てるかどうかを占うためのB/S。
これらを事業のサイクルに沿いつつ、有機的につなげて見ることができるかどうかが大事です。
そのためには、自分の中の引き出しからさまざまなシチュエーション、いろいろなパターンの事例を引っ張ってきて組み合わせ、仮説をもって実像をつかむ努力も必要となります。
この本はそういった事例を自分の中に蓄積していく上で、大きなきっかけを与えてくれることでしょう。
現場感のある事例に沿って書かれていて、会計畑の方が理論・フレームワークを分かりやすくまとめたような類似書籍とはまた違った迫力があり、スッと頭に入ってきます。
個人的には、「規模の経済」「範囲の経済」「密度の経済」それぞれについての有用性の整理(規模の経済に関するよくある誤解の部分も含めて)、「機会事業」と「障壁事業」のそれぞれの特徴についての整理が役に立ちました。
機会事業的な要素を注意深く選別した上で、できれば障壁事業的な領域で競争優位性を発揮している企業に投資していきたいものです。
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