数式やグラフ類の全く無い、異色のファイナンス本です。
文系脳にも優しい、さぞかし読みやすい本かと思いきや、実際には全くの逆でした。
言葉自体はやさしくユーモアもたっぷりなのですが、とにかく立ち止まって考えさせられることが多くて(「滋味あふれる」文章とは、こういうものを言うのかもしれません)、なかなかスムーズに前に進みません。
まず副題からしてそうなのですが、この分野におけるさまざまな”常識”に対して、「それって本当ですか?」と執拗に問いかけてきます。
例えば以下のような感じです。
ROEという過去の実績が投資家にとって企業に投資するか否かの単純な指標に使われるとすれば、それは少し危険なことだ。もしもROEが低い企業や事業に、収益性が低いという理由で投資を行わないとすれば、もはや新しい企業や事業やイノベーションは生まれてこない。
「守破離」という言葉があります。
芸事が発展・進化してきた創造的な過程のベースとなっている思想ですが、もしかしたらコーポレートファイナンス理論を背景とした投資判断にも似たようなものがあるのかなと、この本を読んで気付かされました。
まず教わった型を徹底的に守る。
自分にとってより良い型を模索し、破る。
やがて型から離れて、自在になる。
投資には理屈では説明できないアートの部分があると思いますが、それは前段階としての型があってのもの。
この本はコーポレートファイナンス理論の基礎を学んだ者にとって、「破」をもたらしてくれる貴重な本だという印象を持ちました。
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