原題は”Better,Simpler Strategy”。
持続的に高いパフォーマンスをあげている企業は、顧客、従業員、サプライヤーに対して確固たる価値を創造していることを明らかにしつつ、価値創造にフォーカスすることで競争優位を深化させていく「バリューベース戦略」を提唱しています。
「利益ではなく、価値を考える。そうすれば、利益は後からついてくる。」
では企業の生み出す価値は、何によってもたらされるのでしょうか?
著者はWTPとWTSの差であるとし、付加価値を創出するにはWTPを高めるか、WTSを低くするかの2つしかないとしています(原題の通り、極めてシンプルですね!)。
■WTP(Willingness to pay、支払意思額)
・顧客が製品やサービスに対して支払うであろう上限額のこと。企業が製品・サービスを改善すれば、WTPは上昇。
■WTS(Willingness to sell、売却意思額)
・従業員にとっては、ジョブオファーを受け容れるために必要な最低限の報酬。仕事をより魅力的なものにできれば、WTSは低下。
・サプライヤーにとっては、製品やサービスを供給することのできる最低限の価格。製品の生産と出荷が容易になれば、WTSは低下。
この2つの間に、価格とコストが位置付けられます。
そしてWTPと価格の差が「顧客歓喜」であり、価格とコストの差がマージンであり、コストとWTSの差が「従業員満足度」や「サプライヤー余剰利益」につながるわけです。
この分配の原資となるのがWTPとWTSの差、すなわち創造された価値ということです。
価値は獲得するもの(奪い合うもの)ではなく、創造していかなければならないもので、そうしなければ競争優位は持続できません。
この本では、戦略として価値をまず優先的に考え抜いた企業が、その結果として利益を蓄積していくことになる事例がたくさん登場してきます。
私はWTSの概念は知らなかったのですが、顧客だけでなく従業員やサプライヤーにも目を向けた点が秀逸です。
自社を取り巻く各方面のステークホルダーを十分満足させられる企業に投資していきたいと常々考えていたので、その意味で貴重な視点を提供していただいた気がします。
投資先企業に当てはめて考えてみると、また新たな発見(なるほど、確かにこの取り組みはサプライヤーとwin-winが築けるよね、等)があったりして、自分にとって大変収穫の多い本でした。
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