楽天初のIR専任担当者が書いた本です。
企業と投資家との対話の貴重なケーススタディとなっており、IR担当と接点を持っている、あるいは持ちたいと考えている個人投資家には必読の書ですね。
目次からして、内容の濃さがうかがえます。
TBS株取得からはじまって、銀行業への参入、東日本大震災、東証一部上場、楽天イーグルス日本一、ヤフー・ショッピング無料化等々。
アナリスト出禁事件もありましたね。
激闘の末の11章のなんとも切なくなる終わり方も含め、読み物としても非常に惹きこまれるものがありました。
「保有されていた株が売られて嬉しいと思ったのは初めてのことでした」
「内部コントロールがきちんとしていなければ、期待値も妄想もコントロールできません」
など、その立場でないとなかなか発することができないような名言の数々もこの本の魅力です。
楽天に興味のない方は素通りしてしまいそうなタイトルでちょっと損をしている部分がありますが、下手な投資本よりよほど役に立ちます。
「伊藤レポート」をベースとした特別編「コーポレートガバナンス・コードと資本コスト」も必見です。
常に企業と投資家の間に立ち資本コストと向き合ってきた著者だからこそ、語る内容に説得力があります。
企業と投資家の間の溝を埋める良質な対話は、投資家のリスク認識を低下させ、資本コストの低減につながります。
本源的価値への理解を通じて、どう企業価値を共創していくのか、我々のあり方も問われているような気がしました。
「ROEの低さが投資家の長期投資のリスク許容度を低下させ、短期的な投資を引き起こしている」
やはりこれが日本株の大きな問題であり、どのような企業に投資し、その評価を高めていくべきかを改めて考えていかないといけません。
その意味で、この本は大いに参考になりました。
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