公表される統計数字を定期的にフォローし、勝ち組投資家として機動的にポジションを変えていきたい人向けの本……ではありません。
人口動態という確実に訪れる「長期的な潮流」(NVICさん的な)を見極めながら、それを投資に活かしたい人にこそピッタリの本だと思います。
世界の実質経済成長率を高める経路としては、以下の2つがあります。
- 人口増加率を高める(量的拡大)
- 一人当たり経済成長率を高める(質的変化)
このうち、前者の人口増加率上昇による効果ついては、世界的に今後は大きな期待などできないという分析は傾聴に値します。
「多消費年齢人口比率」「生産年齢人口比率」それぞれの動態、そして国家の統制という観点から社会の変化に着目する手法はユニークで、新たな視点を得ることができました。
そして同時に、世界経済全体の成長をざっくりととらえ、そこに期待する投資手法の危うさも感じた次第です。
上記の2つの経路の内、むしろ後者に着目し、社会の無駄に潜む「イノベーションの可能性」を探して投資に活かそうというのが、この本の大きなテーマです。
国家の統制が強く、無駄や矛盾が目につく、「課題先進国」の日本。
これを「課題解決先進国」にするために貢献しうる企業群への投資は、社会全体の資金配分を効率的にするためにとても意義のあることだと思うんですよね。
具体的な企業名は出てきませんが、長期的な人口動態を踏まえた投資対象として有望なテーマも列挙されていて、大いに参考になります。
最後に気に入った言葉を。
「増益率の上昇が期待できない時代に突入すればするほど、イノベーション気質が高く活力ある企業をつくり上げることができれば、生産性と利益率が低下しているその他の多くの企業との格差を広げることができるだろう」
ここに日本株への投資の魅力が集約されている気がします。
情報に触れる機会が多いからこそ、弱い競争相手が見えやすいというのは、あまり言及されることはありませんが、実はなかなか得がたい大きなメリットではないでしょうか。
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