2021年以降の世界的インフレの深層を探る本です。
欧米の中央銀行は当時、コロナ禍によるサプライチェーンの寸断や労働供給の減少、さらにはウクライナ戦争による資源価格高騰などの供給制約がインフレの要因であって一時的なものであり、金融緩和継続の必要があると繰り返しました。
結果、大規模な財政政策の継続と金融引き締めの判断の遅れをもたらし、これがインフレの真の要因だと指摘しています。
日本でも同様の判断ミスから超円安と高インフレを招いている可能性があり、どこかで急激な利上げを余儀なくされるような、欧米と同じ失敗を犯す懸念から、本書を執筆したとのことです。
「グローバルインフレ」の正体と、その日本の経済社会へのインプリケーション、そして国際通貨としての「円」の賞味期限にまで触れた、壮大な本となっています。
目から鱗の解説が目白押しで、円安(特に、構造的円安、均衡為替レートのジャンプの議論は刺激的です)やインフレのメカニズムを理解する上で、大変良い補助線となる本という印象です。
それにしても、以下の一文にはドキリとさせられました。
私たちの国がなお、先進国であるのなら、胸を張って「国際分散投資」が進展していると言えるだろう。しかし、もし新興国への転落が意識され始めているのなら、それはキャピタルフライトである。
今後の財政運営次第では、自身の運用のあり方についても再考しなければいけないという危機感を持ちました。
オススメです。
コメント