前回(かなり間が空いてしまいました)は、「固定費の増大を抑制しながら、売上高をひたすら拡大していく方向」について言及致しました。
具体的にはどのようなことを行っているのか、今期に入ってからの動きを中心に見ていきましょう。
今期重点施策
「2023年1月期 決算補足説明資料」より、今期(2024/1期)重点施策をおさらいするとともに、足元の状況を確認していきます。
基本戦略
まずは基本戦略です。
- 店舗販売、オンライン販売をそれぞれ強化し、店舗とオンラインの連携によるシナジーを創出
- ブランド力の向上、及び、同一ブランドでの商品ジャンルの拡充
資料内にある「好立地での店舗展開拡大」というのは、裏を返せば出店は集客力のある場所に厳選するということです(「全国津々浦々」ではなく「いい場所があれば」的な)。
店舗は足のフィット感を確認する「ショールーム的な位置づけ」とし、以後はオンラインでのリピート購買へとつなげ、販売効率と収益性を高めていくという狙いがあります。
一方で中高価格帯のブランドを強化し、そのブランド力を以って商品ラインナップを広げていく方針も掲げています。
これは既存店売上の向上に資する取り組みですね。
全体的に「効率性」を追求しながら「収益性」も高めていくというのが、基本戦略であると考えられます。
(過去ブログで書いてきた通りです。)
今期重点戦略と実際の動き(1)
次に今期重点施策のそれぞれに対し、足元の状況を見ていきましょう。
1.オンライン強化
こちらは二つの大きな動きがありました。
一つ目は、株式会社アダストリアが運営する公式ファッション通販サイト「ドットエスティ(.st)」でのORiental TRafficとNICALの取り扱い開始です(2023年6月)。
プラットフォーム化を進める同社の動きに呼応し、こちらの約1,600万人の会員に一気にリーチすることが可能となりました。
自社ECの会員数がようやく100万人を超えたところですから、これは非常に大きいと思います。
.stのアイテムランキング(WOMEN・シューズ)でも、ORiental TRafficがランキング上位に顔を出すようになってきましたね。
二つ目は、ORiental TRaffic公式オンラインストアのリニューアルです(2023年9月 Shopifyへ移行)。
目的としては、
①システムインフラの増強(セール期のアクセス集中時における事業リスク低減)
②決済手段の追加
③データベースの刷新(データの持ち方を見直し、より高度なデータマイニングを可能に)
の3つがあるとのことでした。
EC化率上昇に向けて公式オンラインストアのキャパを増強すると同時に、デジタルマーケティングの更なる強化に向けた意気込みを感じますね。
なお、オンライン強化を進めるにあたって、(利益率の向上を目的として)どんどん公式オンラインストアの比重を高めていくのかと言えば、そのような考えはないということを確認致しました。
その背景には、
①使い分けによって多様な販促ができること
(自社ECの場合はセット割が可能、他社ECの場合は各サイト限定のクーポン発行が可能、等)
②自社ECの運営にかかる負荷
という2つの事情があります。
自社ECの場合、自社で物流やヘルプデスク等の組織を編成することが必要となり、売上規模の拡大に応じて人員体制を増強(採用及び教育)していく必要があります。
一方、他社ECを活用する場合、確かに受託手数料がかかってくるのですが、売上規模に応じて手数料率の引き下げ交渉も可能になるため、売上拡大のみに集中できるというメリットもあります。
(過去、ZOZOの決算から平均の受託手数料率を計算したことがあり、その時は約28%でした。婦人靴ジャンルではトップランクの取扱量であろう当社の場合、もっと料率は低くなっていそうですね。)
その時々の自社の経営資源上の制約を考慮しつつ、自社ECと他社ECとを上手に使い分けている印象を受けました。
こんなところにもやはり、「固定費の増大を抑制しながら、売上高をひたすら拡大していく方向」で進めていることが感じられますね。
(余談)「下取りキャンペーン」について
現在、『【アプリ会員様限定】会員100万人突破記念‼下取りキャンペーン』という、使用期限11月30日までの、「不要なシューズ1足につき2,000円のチケット発行」「1回につき4足まで」「他社ブランドOK」という、なかなかエグいキャンペーンをやっております。
これは、
①公式オンラインストアの会員登録の誘因(→オンライン強化の一環)
②(持ち込み及びチケット利用のための)来店促進
③商品回転率上昇
④各ご家庭のシューズボックス内でのオリトラ比率上昇(→業界内シェアアップ!)
といった諸々の点で、非常によく練られたキャンペーンだと思います。
前から感じておりましたが、企画チーム、メチャメチャ優秀ですね!
この効果が数字としてどう出るのか、ちょっと楽しみにしています。
(続く)
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