ここまでのまとめ
ダブルエーのオペレーションの優秀さについて、ここまでを端的にまとめてみます。
・売れ行きに応じた毎日のデリバリーを前提に、各店舗の在庫を極小化しつつ、店舗間での在庫の偏在を無くす。
・自社ECでは店舗を補完する形で品揃えを拡充することで、細分化されたニーズに対応し、お客さま満足度向上を図る。
・以上により、企業全体として在庫抑制を図りつつ、販売機会を逃さない体制を構築。
ダブルエー企業単体で見た場合、店舗⇔自社倉庫間での理想的なデリバリーがなされ、在庫極小化が図れていると感じます。
ではサプライチェーン全体で見た場合はどうでしょうか?
中国生産工場を押さえるメリット
ダブルエーは「婦人靴のSPA」として知られています。
SPAとは、Speciality store retailer of Private label Apparelの略称で、「製造小売業」と呼ばれる垂直統合型のサプライチェーンモデルです。
ユニクロが代表例で、ダブルエーは「婦人靴のユニクロ」と言われることもあります。
(流行重視・高回転という点では、個人的にはZARAの方が近い印象を持っていますが。)
SPAでは仕入は商社(卸)を通さず直接仕入れる形になるので、低コスト・リードタイムの短縮が可能となります。
同時に販売・在庫情報の共有により、顧客のニーズやトレンドを迅速に企画・生産に反映させることもできます。
一方、サプライチェーン全体をマネジメントする必要があり、在庫のリスクコントロールが難しい(自社で負わなければならない)という点がデメリットです。
ダブルエーに関しては、この点においても用意周到という印象を持っています。

生産面の特徴としては、以下のものが挙げられます。
・生産委託している中国工場(私が聞いた時点では7ヶ所)に対し、年間でラインを押さえている。
・これにより安定した生産が可能となるとともに、トレンド品の追加生産など機動的な対応も可能となる。
・販売・在庫情報を中国工場と直接共有し、週次で生産計画を柔軟に変更。
店舗⇔自社倉庫間だけでなく、工場⇔自社倉庫間でも緊密な情報連携をすることで、サプライチェーン全体でのムダの排除、在庫の極小化=全体最適につなげることができています。
私はダブルエーの見逃されがちな大きな強みの一つとして、中国工場のラインを複数箇所、年間で押さえている点を重視しています。
好きな時に好きなものを生産できる —
これは日系アパレルでは、なかなか簡単にはいかないことだったりします。
質の良い工場は取り合いになりますからね。
知り合いにアパレル(某有名セレクトショップと取引あり)の社長さんがいるのですが、そこの商売がうまくいっているのは日本で中国人をたくさん採用しているからだと聞いたことがあります。
中国工場との円滑なコミュニケーションは、想像以上に大切なことだと思い知らされました。
その点、ダブルエーの肖社長は中国人ですし、前職で中国の靴の生産現場の実情も知り尽くしている方です。
ダブルエーの前社名である「直通企画」には、消費者のニーズを工場に直接通すという思想が込められているのでしょう。
(企画担当者が販売・商品企画・生産・品質管理 をワンストップで担当しているのも、その表れだと思います。)
その思想を中国工場としっかり共有し、また信頼を勝ち得ている(だからこそ、年間で押さえられる)ことが、全体最適化に大きく貢献していると感じます。
そしてこの関係性は、同業他社には容易に追随できない大きな要素だとも考えています。
(続く)



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