【7683】ダブルエー ECで強化される全体最適(5)~店舗の在庫を減らすEC

企業研究

前回、店舗の在庫を極小化する取り組みについて説明しました。

今回は、ECが店舗の在庫極小化を加速するための、強力なツールとして機能していることを説明したいと思います。

靴屋はオムニチャネルで差別化できる

靴屋における、店舗とECの違いをここで考えてみましょう。


店舗のメリットは、何と言っても実際に履けることです。

デメリットは、各店舗であらゆる商品を履けるようにすると、在庫が膨らみ、商品の回転が落ちることです。

ECはこの逆で、商品を一か所に集めることで在庫を抑制でき、回転を高められるメリットがある代わりに、実際に履けないという大きなデメリットがあります。


ただし、オムニチャネルとしてこの二つを上手に連携させた場合には、店舗の在庫を抑えつつ、お客さまのさまざまなニーズに応えることができるようになるのがミソです。


私は靴屋こそ自社ECを持つべきだと考えます。

なぜなら、お客さま満足度の向上と高回転の実現を通じて、圧倒的な競争優位性を獲得できるからです。


実際にダブルエーが店舗とECをどう役割分担させているか、見ていきましょう。


店舗を補完する役割としてのEC


ダブルエーのサプライチェーン全体の中での私のECのイメージは、この図の通り、自社倉庫の一部として全ての店舗をサポートするというものです。


・店舗では22~26cmの各サイズがフィットするか試せればよく、同じ商品の色違いのものがご希望であれば、ECから発送する。
 (付加価値として、EC限定カラーも用意。)
 ⇒ 店舗でのカラーバリエーションを抑えることができ、在庫抑制につながる

21.5cm、26.5cmといった端っこのサイズのような、販売数は見劣りするものの一定のニーズは確実に存在する商品は、各店舗に分散させず自社倉庫内(EC)に集約し、ECから発送する。
 (ナースシューズをEC限定に切り替えたのも、この考えによるものと思われます。)

・チャレンジングな商品は、まずECに絞りリスクテイク(売れ行き好調なら店舗に展開)。

・逆に販売実績を積み重ねており、フィットするか試す必要のないド定番の商品は、EC限定とすることも可能。


このように、店舗とECそれぞれの特徴を活かし上手に使い分けることで、店舗にはない価値をECで提供し、お客さま満足度を向上させつつ、全体の在庫を圧縮し効率を高めることができるというわけです。

この店舗とECを連動するオムニチャネルの考え方は、以下の記事の通り、卑弥呼の再建にも活かされているようです。
(「ECに多く在庫を持ち、店頭で販売したい商品をECから発送できるようにしました。」)

卑弥呼の新社長はアルバイトから入社した30代 「オリエンタルトラフィック」成長の立役者 - WWDJAPAN
 婦人靴の卑弥呼が、新たな改革を進めている。5月1日付で婦人靴ブランド「オリエンタルトラフィック(ORIENTAL TRAFFIC)」を運営するダブルエーの子会社となり、新社長にはダブルエーの新井康代取締役(38)が就任した。


現在EC売上は全体の2割に達しておりますが、売上高100億円台と小規模にも関わらず、ECとここまで上手に役割分担をしながら回転を加速させているチェーンは、婦人靴では他にないはずです。

マルチチャネルではなく、オムニチャネルとしてしっかり機能。

まさに「2番手が出てこれない程度には圧倒的」ですね。


しかも、ECの活用は道半ば。

最近ではアプリで各店舗の在庫を確認できるようになりましたが、長期計画の中では「ECで注文→店舗での受け取り」(※)も実現させるべく準備を進めています。

高回転⇒高効率・高収益のさらなる好循環が期待できますね。

※ BOPIS(「Buy Online Pick-up In Store」)と呼ばれるものです。店舗での試し履きができるため、靴屋では特にメリットが大きいですね。

(続く)

次回はサプライチェーン全体の流れを見ていきます。
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