業界構造を理解する(【2820】やまみ の場合)その3(まとめ)

企業研究

これまで5つの競争要因のうち4つを見てきました。
豆腐製造業界をとりまく環境についての魅力度についてまとめてみますと、以下のようになると思います。

  1. 新規参入者の脅威   〇 …法律上の参入障壁はある。ただし法律の廃案には注意。
  2. サプライヤーの交渉力 △ …特に留意の必要無し。
  3. 買い手の交渉力    × …買い手の影響力は極めて強く、全体に収益性低下の圧力がかかっている。
  4. 代替品の脅威     △ …特に留意の必要無し。

既存企業は業界の外部からの脅威にはさらされていないものの、日配品として単価は低くかつ下落傾向にあり、強力な買い手の存在により儲かりにくい構造となっております。
業界環境としては魅力的とは言えませんね。

それでは、既存企業間ではどのような競争状態となっているでしょうか。

5.既存企業間の競合

業界は成熟期にあり単価も下がっていく中で、各社が売上を維持するためには、どうしても値下げによる棚の奪い合いに動きがちです。

また豆腐製造業は装置産業の色が濃いため、設備と債務を抱えたままの状態での自主廃業も難しく、利益がわずか、あるいは赤字でもなかなか市場から退出していきません。

こうして病んだ企業が倒れるまで居座り続けることが、価格競争に拍車をかけることになります。

豆腐は単価が低い割には重さがあり(水を運んでいるようなもの)、かつ日持ちのしない日配品であるので、物流費の関係から「地場産業」の色合いが強いという特徴があります。
また分野調整法にも守られてきたため、これまでは地方の中堅クラスでも何とかなっていました。
ただ、それも限界に来ています。

この状態に適応しようとすれば、以下の対応が考えられます。

付加価値のある商材を開発・販売する
設備投資により生産性を上げる。
業者の数を減らす方向に動き、競争状態を緩和する。

①②の費用を捻出できる業者は限られ、自ずと大手に集約されていく流れとなっていくでしょう。

相模屋食料

業界トップであり関東の雄である相模屋食料は、②を行い業容を拡大してきましたが、近年はむしろ①③に特徴が表れています。

「ザクどうふ」が一時爆発的にヒットしましたし、「BEYOND PIZZA」のような目を引く商品を次々とリリースしつつ、体力の弱った同業他社を買収していくことで「地場産業」をグループ化しながら競争緩和を図っています。

ただ、売上規模はやまみの2倍にも達しているのですが(2018年度254億円)、(山名社長曰く)生産性は1/2、かつ設備が古くさらに生産性の劣る企業を買収していることもあって、利益率はかなり低い水準に留まっているようです。

やまみ

一方、やまみはあくまでスタンダードな商品群で、加工面(焼き、カット、包装等)での付加価値を提案しつつ、②にまい進してきた経緯があります。

同業他社が追い付けないような生産性・コスト競争力を獲得したことで、良質な国産大豆を使いながらお値打ちの製品を作ることも可能になりましたし、西日本においては同業他社が音を上げたことで競争状態は緩和され、値下げも不要となりました

結果として、(関東進出前の時点で)営業利益率10%前後の高い収益性を獲得するに至ったいうわけです。
減価償却費の計上すらままならない他社を尻目に、「儲かる→設備投資できる→付加価値を提供できる→さらに儲かる」という好循環が生まれたということですね。

今後の展開を予想する

さて関東市場はどうなるかという話ですが、私見ですがやまみは相模屋食料とは当面はガチンコの勝負はしないと見ています。

長期的に見れば、西日本から生まれる潤沢なキャッシュフローを設備投資に充当できるやまみに分がありそうです。
関東も軌道に乗れば、上記のような好循環による複利的な収益性向上も期待できます。

とは言え、過去の蓄積のある相模屋食料と正面衝突して、業界全体の収益性を性急に自らの手で引き下げることは得策でないでしょう。

それよりは、どこも出すことのできていない商材で、収益性を保ちながらジワジワと扱いを広げていき、同時に兵糧攻めのように他社に無言のプレッシャーを与えながら、音を上げるのを待つ方が賢いのではないでしょうか。

中堅どころがギブアップしたところで、どこにも負けない生産性を武器に、後で棚をごっそりといただければいいのではないかということですね。

関東では低価格を売りにしたスーパーには無理に納入せず、まともな値段を付けられる格上のスーパー(ヤオコーやオオゼキ等)に優先して納入している状況からも、私はこのような戦略で進めているのではないかと想像しています。

「豆腐業界の山パン」

「豆腐業界の山パンになる」

山名社長はこのような構想をお持ちで、儲からない豆腐業界を変えたいとお考えです。

十分な生産性を備えた複数の大手メーカーがスーパーの量販ニーズに応え、各地に残った小規模事業者がそれぞれのこだわりの豆腐を提供していく。
そう、パン屋さんの世界と同じように。

それぞれ役割は違えど、日本の食卓に欠かせないものとして消費者の暮らしを支えていく。
そんな共存共栄の未来が見えているのでしょう。

当社への投資は、すぐに目覚ましい結果を出すものではないでしょう。
それでも逆境に立たされている豆腐業界を劇的に変えうる存在として、長い目で当社を応援していこうと思っています。

長くなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございます。
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