質疑応答の続きです。
質疑応答(2)
【質問6】
昨年、ものづくり太郎氏が講師を務めた講演会を見、meviyの素晴らしさを始めて知ってびっくりした。
お聞きしたいのは、流通業界の2024年問題について。
モノが届かなくなると言われている中、短納期が大命題のミスミとしてはどのように考えているか?
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(大野社長)
問題は重々認識している。
過去5年ほどかけて大手宅配業者から独自の配達に切り替える動きを行った。
現在、大手宅配業者に約30%、残り70%は独自の配送網で配送している。
地域に根差した配送業者を我々の協力パートナーとして認定し、それぞれの経営にコストの範囲でできる限り協力しながら、足回りの整備の充実を図っている。
今のところ、不安は全部払拭できてはいないが、我々の配送網でこの問題については対応できるのではないかと考えている。
併せて物流倉庫内の問題については、幸いなことに人員は確保できている。
こちらも5年前、庫内の自動化投資も行い、従来よりは人が必要ない環境を作ってきた。
これからも庫内の人手不足の解消がより進むように取り組んでいきたい。
【質問7】
この下期から回復見込みとあるが、金利が非常に上がった環境で、設備投資を行う客数が減っているのではないか?
あと、経営説明会についても、次の機会からは再開していただけたらと思う。
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(大野社長)
下期からの回復については、やはり産業ごとに濃淡がある。
金利上昇の影響をもろに受けている業界があることも認識している。
一方、我々の日頃の活動から入手した情報によると、やはり当初の見通し通り、下期から諸々の投資が動き出すということは変わっていない。
多少期ずれ等あるかもしれないが、大きく後ろに倒れるような事態は認識していない。
しかしながら、これだけの金利上昇はグローバルのメーカーの中で織り込まれていたかは怪しいので、今後も動向は注視していく。
【質問8】
有価証券報告書を拝見すると、平均勤続年数が2019/3期が4.3年、2022/3期が5.8年と伸びてきている。
給料についても賃上げが順調に進んでいる。
御社はハードワークの会社として知られているが、昨今は口コミサイトの評判も良く、何か働き方改革をされているのではないかと感じる。
その辺りを聞かせて欲しい。
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(西本会長)
人的資本の考え方は非常に重要で、私共は「成長連鎖経営」を標ぼうしている。
詳しくはHPを見ていただきたいが、まず社印の成長を起点とし、そしてミスミが成長し、我々のお客様であるインダストリアルオートメーション業界が成長し、それがさらに社会の成長につながっていく。
そして社会の成長がインダストリアルオートメーション業界にフィードバックされ、我々にフィードバックされる。
この大きな成長連鎖の起点は社員の成長にある。
この考え方を長年社長が温めてきており、昨年に大きな方針として社内外に打ち出している。
この方針に即して、ご案内のようにさまざまな社員の成長のための新しい人事制度・仕組みに取り組んでいるところ。
同時に法規制を重視するのは当然のこととして、ハードワークはするが、長時間働けばいいということではなく、一時間あたりの生産性をいかに高めていくか。
この辺を社員の成長を起点とした経営として、現在取り組んでいるところだ。
(長く働ける会社にしていきたいのか、という問いに対して)
縁あってミスミで働いている社員については、本人が成長する限り、長く働いて欲しいと考えている。
→ ハードワークであることを否定しない企業ってカッコいいですね。
【質問9】
女性活躍推進法の改正があり、男女の賃金の差異について公表する運びとなったが、御社はどのように対応していくのか?
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(西本会長)
来月提出する有価証券報告書の記載事項になるので、そこで具体的な数字についてはご参照いただければと思うが、まず男女の賃金格差というものは当社では基本的には存在しない。
国籍、人種、性別に関わりなく、本人のアウトプット、パフォーマンスに応じた賃金というものを前提にしている。
ただ、女性の管理職比率はまだまだ低いという実態がある。
賃金の低い層で働く女性の割合が多いので、結果として男性の平均賃金と女性の平均賃金を比較した場合には、外形的には差があるように見えるが、各役職のレイヤーごとに見た場合には基本的には差が無い。
(差があるとしたら、新規に女性の若手を多く採用されているからという認識で良いか、との問いに対し)
女性で役職者、経営層まで昇格している絶対数がまだ少ないということだ。
(国として管理職の比率は30%と言われているが、御社ではどれくらかとの問いに対し)
当社ではグローバル平均で20%を超えている。
日本の上場企業の中では相対的に高いが、ご指摘のように30%という数値が示されているので、より高い数値を目指していく。
(日本では何%ですか、との問いに対し)
国内で約15%。
ここで質疑に時間を要しているので、あと2名にさせていただきたい旨のご発言がありました。
【質問10】
MonotaROとミスミとはビジネスモデルは違うとは思うが、成長力で差を付けられている。
同社が小売、ミスミが卸と思うが、成長率の違いをどのように捉えているか?
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(大野社長)
最も大きく違うのは顧客層。
我々はほぼ100%に近い顧客が、昨今はインダストリアルオートメーションと捉えているが、いわゆる製造業。
一方、MonotaROさんは製造業が4割以下で、その他が6割強。
ここ数年で見ると、製造業は相対的に利益が無かったので、我々の事業の競争力が問われはするが、やはりお客様自身が元気が無かったということ。
MonotaROさんは製造業以外のお客様を大きく伸ばされたと聞いているので、その違いが大きく出たのではないか。
ただ本質的には、MRO、メンテナンス・リペア・オペレーション、これに関する間接資材、このビジネスに関して言えば、数多くのお客様を対象にしたMonotaROさんの方が成長性が高かったということは認めざるを得ないと我々自身は考えている。
この事実をしっかり認識した上で、我々のお客様に合ったこの事業の在り方を再度展開しているという状況にある。
この後も彼らに負けないような高い水準を目指していきたい。
【質問11】
社外取締役3名の方に、ミスミを2~4年ご覧になり、他社と比較してミスミの良い点及び課題と感じていることを教えて欲しい。
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(中野取締役)
4年務めさせていただいている。
良い所は、戦略的なマインドもそうだが、議論を重ねていって、ポジションとかシニョリティ(≒年功序列)で物事が決まっていかない。
いいアイデアを出す、そこが全ての根拠で、若いから通さないといったことはなく、本当に中身で勝負している、そこは非常にいい。
一方、これまでの成功モデルが素晴らしいのだが、一般的に企業は成功するとそこに甘んじるというか、保守的になりがち。
ミスミさんが素晴らしいゆえに、これからの成長にどう対処していくかという点が課題。
(清水取締役)
3年務めさせていただいている。
強みは、私も20年以上コンサルをやっているので戦略的視点から申し上げると、モデルが進化しているところ。
現状に留まらず次に新しいお客様の価値を創り出す、モデルを進化させていくことが、経営メンバーだけでなく、幹部職に対して求められている。
僭越ながら、売っているものは物凄い差別化された商品ではないので、売り方を戦略的にしお客様の心を捉えることが重要だと思っている。
弱みは、今のビジネスモデルが非常に強固であり、これを継続的に進化させていくことはできていると思う。
一方、この上の成長に持っていくためには、考えを変えた飛び地、違う発想で違うビジネスモデルを創っていく時が来るのではないかと考えている。
(栖関取締役)
2年務めさせていただいている。
2人が申し上げたことに加えて良い点を申し上げると、今まで経験した会社と比べても、やはり人材育成に非常にリソースを使っていること、これは今後の成長のためには大変素晴らしいことだと思う。
一方の人材面での課題は、グローバル人材の養成。
これは日本人がよりグローバルになるだけではなく、それぞれの地域での人材をより強化していくことが大変重要だと思っている。
→ 多くの企業の経営に関与されている社外取締役の方々に、その企業に対する印象を率直に伺うのはいいですね。私も今後質問をする際に、参考にさせていただきます。
この後採決を経て、閉会。
選任された取締役の紹介・挨拶があり、終了となりました。
(15:16)
所感
製造業を取り巻く環境について、大変勉強になりました。
さまざまな角度から疑問点を投げかける質問者の方々のレベルは高く、また企業側から真摯な回答もなされていたと思います。
やはりグローバル展開をされている企業は、経営陣はもちろんのこと、株主からして違うなという印象です。
一方で贅沢を言えば、社風とは合わないのかもしれませんが、役員の方々からは少しユーモアのあるコメントというか、気の利いたコメントも欲しかったですね。
その辺りも総合的に踏まえ、評価は星4つ寄りの★★★☆☆とさせていただきます。
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コメント
ミスミは注目しているところの一つです。興味深く読ませていただきました。
こちら昨年に引き続きキーエンスの株主総会に行ってきました。まあ、独特の社風というか企業文化がありますね。
業績は文句のつけようもないですが、この独特さというのはよいことばかりでもないと感じるところもありました。
株式分割については引き続き求めていきたいと思います。
株主総会で株主に無力感を抱かせてしまうのは、いかがなものかと思ってしまいますね。