障がい者雇用支援の農園事業が高い成長曲線を描き、コロナ禍においても堅実な事業運営ぶりが光ったエスプール。
株主総会は今回が初参加となります。
「社会的価値と経済的価値の両立を実現すること」を中長期的なビジョンに掲げる当社ですが、今後の事業展開の方向性について、浦上社長の考えを伺いたいというのが参加の主目的でした。
株主総会
約130席に対し、参加者は70名前後。
気分の優れない方のために、保健師・看護師が待機している旨のアナウンスがありました。
議長は浦上社長。
議長席にはアクリル板が設置されており、マスクを外して話されていました。
事業報告はスライドを使いながら浦上社長が概要を説明(一部ナレーションあり)。
なお詳細については、この後の事業方針説明会で話すとのことでした(ここでも割愛致します)。
対処すべき課題として、「主力2事業に次ぐ新たな収益の柱の構築が急務」という件は印象に残りました。
決議事項は以下の3つです。
- 剰余金の処分の件
- 取締役6名選任の件
- 役員賞与支給の件
質疑応答
(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)
事業に関する質問は、事業方針説明会でも受け付ける旨の説明がありました。
質問には浦上社長が主に答えておりましたが、細かい部分については佐藤取締役に譲る場面がありました。
【質問1】
連結貸借対照表で、売掛金の流動資産に占める割合が高い。その理由は?
⇒
(佐藤取締役)
人材派遣を営むエスプールヒューマンソリューションズの売掛金が主。
回収サイトは平均45日で、通期売上高210億円に対する45日分を基準に見ていただきたい。
当年度は新型コロナの影響で、9,10,11月に売上高が増加した経緯があり、通常の範囲内と理解している。
【質問2】
設備投資金額が22.9億円とある。このうち、エスプールプラスの農園建設費用の内訳を伺いたい。
屋内型は建物が中心と思われるが…。
⇒
細かい数字は置いておくとして、屋内型は中の設備投資に、屋外型は土地は借り物で、ビニールハウスや休憩室に投資していると考えていただきたい。
投資は販売代金からすぐ回収でき、最大でも1年。
回収が早いので心配はしていない。
(佐藤取締役より補足)
金額について言えば、屋外型は1農園2~3億円。
ビニールハウス、整地・土壌改良、休憩室、保管庫、ボイラー設備に充当している。
屋内型は1農園3~4億円。
狭いが、よりお金はかかる。
【質問3】
会社が大きくなってきたので、現状社長が各社の代表取締役を兼務されているが、ホールディングス化してそこから全部を見るほうが良いのでは?
また監査役については委員会設置会社に変えてはどうか?
⇒
子会社の社長は、運営上は執行役員制度を敷き、それぞれ社長をやってもらっている(「社長 執行役員」の肩書)。
予算・人事権を渡し、全て運営も任せている。
責任を明確にし、オーナーシップを持って経営をしてもらいたいということで、取締役として法的に必要なもの以外は渡している。
取締役にしてしまうと、失業保険や持株会でデメリットが生じる。
従業員に不利益のないようにしている。
委員会設置会社の件は、会社が大きくなっていく過程において検討したい。
【質問4】
ビジネスソリューション事業の障がい者雇用支援サービスは、倫理上の問題が多少あるのではないか?
(働いている方に)もっと利益を分配できる構造の方が良いのでは?
→ なかなか思い切った質問ですね。浦上社長がどう回答されるのか、興味深く聞いておりました。
⇒
その辺りは、この後の事業方針説明会で細かく説明させていただくが、概要をお伝えする。
まず給料は、参入された企業が一般就労に対して支払う形。
我々が直接お金を頂いているのは企業からで、皆様サービスに満足されており、むしろ値上げしてもいいくらい。
解約はこの9,10年で数社。
92%の方には、長きにわたり働いていただいている。
一般的に、福祉はほぼ行政からのお金。
でも我々は違う。
後ろめたい気持ちでやっている事業ではない。
従業員、企業、行政、みな満足している。
安売りするつもりはない。
付加価値の高いシェアリング型サービスを提供しているからこそ、損益分岐点を超えると利益率が高くなるということだ。
→ やはりこの類いの疑問を呈されることも多いのでしょう、見事な回答だと感じました。
【質問5】
1.ダイバーシティ、インクルージョンに関心が高まるご時勢で、(復職制度について)「ブーメラン制度」という名前はいかがなものか?「復職制度」とした方が良いのでは?
2.従業員が146名増えているが、正社員の増減の状況はどうか?
3.固定負債にある資産除去債務とは何か?
1⇒
仰るように復職制度のことだが、創業当時から言葉を変えずに使っている。
他の会社に移った方がまた戻ってきても温かく迎え、立場・給料も保証するもので、きちんと機能している。
名前は「ブーメラン制度(復職制度)」とすることを検討したい。
2⇒
全体としては増やしている状況。
例えばエスプールリンクでは、女性の子育て世代を中心に、百数十名の雇用を生んでいる。
離職の事情についてだが、契約社員や夫の収入の関係でアルバイトにする等、雇用形態はさまざまで、離職率はまあまあ出てしまう。
グループ型派遣の現場が終了するというタイミングもある。
正社員に関しては、昔は離職率がひどかったが、現在は50人程新卒を採用している中で、かなり少なくなっている。
(佐藤取締役より補足)
従業員数で連結1,024名のうち、正社員は624名。
新卒採用は、2018年20名、2019年52名、2020年54名。
この3年で辞めたのは12名に留まる。
昨今の若い人の傾向もあり、どうしてもミスマッチによる離職は生じてしまうが、それなりにいい数字ではないかと認識している。
3⇒
(佐藤取締役)
資産除去債務は現状回復費用と認識いただければと思う。
農園は土地を借りて運営しているが、今は考えていないものの、閉鎖して更地にする際にかかる費用ということ。
全ての農園を閉鎖すると、6.3億円かかると考えていただきたい。
【質問6】
1.コールセンター代行はライバルも多い。どの業界に特化しているかとか、他社と違う強みなどを教えていただきたい。
2.育休等の取得率、若い男性の取得状況はどうかなども聞かせていただきたい。
1⇒
コールセンターには、①派遣会社がコールセンター向けに派遣するパターン と ②自社で運営するパターン とがある。
①については、我々はグループ型で派遣するのが特徴。
FC社員(Field Consultant/現場パートナー社員)が一緒になり教育しながら行うので、定着率が高く、習得が早い。
②については、飲食・小売の募集の段階で、我々が代わりに電話・メールのやりとりをしたり、面接を設定する代行業務を北見・日南等で行う。
競合他社も若干あるが、後発ながらうちが一番ではないか。
大手チェーン店100社から応募代行をやらせていただいている。
2⇒
現在13名の育休利用者がおり、うち男性は3名。
こういう時代なのでとりやすくしているし、周りがフォローできる体制なので比較的スムーズ。
責任者や役員も利用しているが、リモートを活用し責任は全うできている。
【質問7】
1.1号議案では配当3円30銭となっている。きりのいい数字にしてはどうか。
2.3号議案では6名の取締役がいる中で、役員賞与として40百万円を支給するとしている。今後もっと増やしたいのか、景気次第では減らしたいのか、株主還元とのバランスはどうか、その辺りをお伺いしたい。
1⇒
配当については、配当性向20%を基準としている。
来年は4円10銭の計画で増やす予定。
ぜひ長期保有をお願いしたい。
2⇒
社外取締役3名は抜かしており、実務の3名に対し40百万円。
それ程高くないと認識しており、約束事として支払うもの。
私としては、配当をたくさんしていきたいと考えている。
質疑は以上で終了。
議案採択を経て、株主総会は11:10閉会となりました。
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コメント
興味深く読ませていただきました。
障がい者就労支援事業は、書かれているようになおすぐには理解されにくい面があるかと思いますが、ビジネスモデルが優れているというか独自性があり、そこが評価ポイントかと思います。
・多くの福祉事業所では同様の農作物栽培等の作業などはされていますが、実際に採れたその野菜などを採算ベースにのせることは極めて困難で、これを農業として黒字化した事業にすることは、質、量ともにプロの農家と競うことになり極めて困難、ほぼ無理です。だから、近隣の人なんかに安価で販売するぐらいのことになり、働いている人にこれで十分な賃金を保障することはできません。ここらの理解がまず一般の人は難しい。
・ですが、一般のオフィスなどでは適した仕事が見つけにくい知的障害、自閉症などの障害がある人も、ルーティーンの作業などを日課に組み込むことができ、体を動かす作業が中心となる農園の作業は取り組みやすい仕事です。
・ここに企業の法定雇用率とからめて、ソフト的な面も含めて、いわば「適した仕事場・仕事内容」を提供する、そしてできたものは販売するのではなく、企業の福利厚生に利用すると割り切る、この仕組みがやはりよいですね。
続きを楽しみにしています。
丁寧なご説明ありがとうございます。
こうして書いていただくと、仕組みの素晴らしさが際立ちますね。