前田工繊の株主総会の記録は、旅行記の中で差し込もうかと当初は思っておりましたが、内容が濃く楽しかったこともあって、速やかに書き残しておくことにしました。
2年連続の参加です。
前田工繊は地方企業として自分の中ではマスト銘柄であり、「ろくすけカブス」の中でも保有割合は高くないものの、グループ経営の巧みさからバイ&ホールドの安心感が最も高い企業の一つです。
今回はちょっと質問してみたいことがあったので、昨年以上に参加するのを楽しみにしていました。
株主総会
1席ずつ空けた73席に対し、参加者は30名弱。
(例えば技研製作所と違って)意外と地元の熱烈ファンみたいな方はいらっしゃらない様子。
役員は昨年同様、全員当社製のマスク着用でした。
今回は株主総会後、今後の事業展開について説明会が開催されるとのことでした。
これは嬉しいですね。
議長は前田会長です。
監査報告は、隅田監査役がさらっと。
事業報告は、招集通知記載のものを簡潔にまとめたスライドを使い、社員の女性の方々(途中交代あり)がその場でナレーションをする珍しいスタイル。
決議事項は以下の3つです。
- 定款一部変更の件(グループ全体の決算期を6月末に統一 → 総会旅行的にありがたいです(笑))
- 取締役6名選任の件
- 監査役1名選任の件
質疑応答(1)
(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)
質疑応答は基本的には前田会長がまず受ける形で対応されていました。
【質問1】
(常連の質問者の方でした)
前回は雪のため来られなかった。
上場以来ずっと参加させていただいているが、株価は10倍以上になっており感謝申し上げる。
2つお聞きしたい。
①ドイツ・ベトナムはコロナで大変だと思うが、グループの今後の経営計画は?中期経営計画について教えていただきたい。
②P.30に対処すべき課題として「研究開発体制の強化」とあるが、年間どれくらい研究開発にお金をかけているのか?
⇒
(前田会長)
(②に関して)
研究開発と営業とは明確に分けていない。
開発部隊は営業の補佐をやっていて、研究開発費と営業経費とは明確に線引きしていない。
研究開発に携わる人間は、前田工繊本体で50~60人、グループ全体では百数十人。
金額ではなく人数として回答させていただく。
(①に関して)
中期経営計画は3年計画で毎年ローリングしている。
(前田社長)
中期経営計画は2019年に「グローバルビジョン ∞ 無限大 PART-Ⅰ」として出させていただいており、来年度が最終年度だ。
PART-Ⅱも作成予定。
今のところ、計画通りの推移をしている。
【質問2】
3つあるが、まず1つを。
2号議案のページで役員の方々がどんなことを考えていらっしゃるかが記載されているが、できれば直接お伺いしたい。
中国恒大の件では監査役が役割を果たしていなかったことが明らかになったが、前田工繊の取締役会はどうなのか?
ぜひ山田社外取締役に伺いたい。
もし取締役会での武勇伝などあれば、それも併せて。
→ SHOEIの社長・会長を歴任された山田勝さんご指名です。
⇒
(前田会長)
まず私から一言。
山田さんからは大変勉強させていただいている。
工場の中の整理・整頓、コスト削減を含めて改善につながっている。
(山田社外取締役)
私がなぜ社外取締役になったのか、その経緯から説明した方がいいと思う。
私はSHOEIの経営を25年くらいやっていた。
そしてその経験から、みさき投資の社外役員もやっていた。
みさき投資の投資先としての立場で前田工繊の工場を見た時、「土壌はいいけど、ムダがたくさんあって、改善の余地もたくさんある」という印象を受けた。
みさき投資はエンゲージメントを行っていたが、もう少し大型サイドへ移行したいということもあって、前田工繊の株は既に売却している。
私も1年半前に務めを終えたが、前田工繊を改めて見た時、潜在力があり、ボランティア的にお手伝いがしたいと思った。
前田会長のお人柄、器の大きさにも感銘を受けたのもある。
社外取締役への就任を要請され、現場に入って改善を進めることとなった。
おかげさまで株価は好調で、会社の中身も非常に良くなってきている。
まず土壌が良かった。私は肥料に過ぎない。
従業員のモチベーションが上がり、生産性は向上し、収益力も高まった。
M&A案件についても、役員会で積極的に発言している。
それ以外でガバナンスに疑義があるものについても、積極的に発言している。
リスクと効果をしっかり把握する必要がある。
私は管財人として債務超過からスタートした経験からリスク面の助言をすることはもちろん、どこを取り入ればより良くなるかについて発言し、また現場に入っていっている。
前田工繊は一流企業になっていくと思う。
あるいはもう既にそうかもしれない。
どんどん良くなっていく。
一言だけ付け加えると(注:この先が意外と長かったです)、前田会長のお人柄と器の大きさに惚れている。
いいとなれば、直ちにそれを変えられる。
(実質的な)創業経営者としてなかなかできることではない。
私とは誕生日が6日違いのお兄さんになる(前田会長:1945.7.20生、山田社外取締役:1945.7.26生)。
そんなこともあって、奴隷のごとくこき使われている(笑)
最近上場来高値を更新したが、それだけのポテンシャルのある会社。
個人で持っているSHOEIの方の株は100倍くらいになったが、前田工繊の時価総額も今SHOEIと同じくらいになっている。
社外役員として言うべきことは全部言わせていただいた。
あえて不一致が起ころうが、役員会でもそれを恐れずに発言させていただいている。
前田工繊と関わってからもう4~5年になるが、福井に来るのが楽しい。
気に入っている回転寿司のお店もある。
楽しく仕事をさせていただいている。
株も買わせてもらって、2倍くらいにはなっている。
改善を続けているし、潜在力のある会社だ。
軽石の問題が話題となっているが、それを解決できるツールを持ってしっかり提案をしている。
今後がますます楽しみで仕方ない。
→ 山田節さく裂の第一弾です。仕事も株も「生涯現役」といった感じで心底楽しくやられている様子がうかがえ、お茶目な部分も含めて憧れちゃいます。あとこのご縁は、みさき投資がつないだものだと初めて知りました。「いい会社」同士がつながっていく不思議な力を感じます。
【質問3】
3つある。
①配当性向はどれくらいの目線か?
②取締役は男性ばかり。多くの企業ではたいがい女性が1、2名いる。今後の対策は?
③あちこち顔が利いていらっしゃるが、社外取締役を決める基準は?
⇒
(前田会長)
①15~20%で考えている。グループ全体で設備投資をやっているので、そちらを優先したい。
②女性の取締役を就任させる風潮があり、男性にはないものを持っていることも理解しているが、1人か2人というルールではなく、相応しい方に出会ってはじめて決めるものだと考えている。
③必ずしもルールはない。
(続く)
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コメント
最初に質問した県内在住の60代男性です。
早速のアップありがとうございます。
スーツケースとリック?大変でしたね年配の方だと
思いましたがお若いでしたのでビックリしました。
コロナ前まではお土産と簡単な懇親会がありました
復活すると良いですね。
私の投資スタイルは県内上場企業優先にしています。
コメントをいただき、ありがとうございます。
上場時から参加し続けられたとのことで(昨年はお越しにならなかったのを、前田会長が寂しがっておりました)、成長の過程を見届けられたのは羨ましい限りです。
過去は懇親会もあったのですね。
決算期も変わりますので、また違った季節に福井を訪れるのが(山田さんじゃないですが)楽しみです。
あれ?前田工繊の総会は12/16で思いっきり速報ですか?
何かいい感じですね。
「みさき投資はエンゲージメントを行っていたが、もう少し大型サイドへ移行したい」ってエンゲージメントとというのは「深くかかわる」とか言う意味でしょうか?その割には大型の方に移行するとかで売却してしまうのは何か「方便」に聞こえてしまいました。
会長さんが「器が大きい方」というのはいい感じですね。
総会でもそんな片鱗が見えているようでしたら教えてくださいね。
続編楽しみにしております。
記憶が新鮮なうちに、というのもありまして速報にしました。
みさき投資の事情はよく分かりませんが、資金が集まるようになって、ちょうど前田工繊で一定の成果も出たところで、より大きなチャレンジをしたくなったということではないかと推察します。
前田会長のお人柄に関しては次の記事でも触れていますので、ご参考にしていただければと思います。