文系脳のための投資先選定法(2)~3C分析

投資スタンス

前回紹介した投資先選定の4つのステップのうち、今回は3つ目について述べたいと思います。

3.情報収集&3C分析をする。

3C分析の3Cとは、市場【Customer】、競合【Competitor】、自社【Company】の頭文字をとったものです。

外部環境である市場と競合の分析から事業を成功させるための必要条件を見出し、自社の戦略に活かす分析をするためのフレームワークです。

これを投資に援用する上では、以下のようにポイントを絞って考えるとわかりやすいかと思います。

市場:「どこまで」成長できるか

競合:「どうやって」競争優位性を築いているか

自社:「なにが」付加価値をもたらしている経営資源か


この切り口を念頭に情報収集を行っていくと、バラバラだった情報も整理もしやすくなるでしょう。


情報の入手先としてオススメなのは、やはり有価証券報告書です。

特に、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】、【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】((2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)は情報の宝庫です。

有価証券報告書はフォーマットが定められているだけに、企業間で情報整理力・開示姿勢の優劣がハッキリと出てきます

企業側が独自のフォーマットで作成する決算説明資料や中期経営計画などは、いいことばかり書かれる傾向がありますが、有価証券報告書は課題やリスク、及びそれに対する打ち手についても書かれていますので、よほど有用です

優れた有価証券報告書の一例として、【7839】SHOEI のものを挙げておきます。
リスクとその対応とが、きれいに整理されているのが分かるかと思います。

https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/ednr/20201225S100KG3X/


以下では、市場分析・競合分析・自社分析それぞれについて、情報収集に際してのキーワードを列記しておきます。

市場分析~「どこまで」成長できるか

潜在顧客について把握します。

市場規模(潜在顧客の数、地域構成、年齢構成など)、市場全体の成長性、ニーズ、他市場への横展開、アップセル&クロスセル etc.


分かりやすいのは地理的な部分ですね。

国内であれば、都市部か郊外型か、どの地域まで展開できているのか。

海外であれば、受け入れられる国・地域はどこか。

例えば【7683】ダブルエー の場合は、百貨店に入り込むことができ、対象年齢層が異なり日本製として輸出も可能な卑弥呼の買収によって、より成長余地を広げることができました。


市場全体の成長性を見る上では、「長期潮流」というキーワードも意識しておくといいかと思います。


意外と見落とされがちですがとっても重要なのが、アップセル&クロスセルです。

同じ顧客に対し、より高単価の商品・サービスに乗り換えてもらう
あるいは、別の商品・サービスも併せて購入してもらう

顧客との関係性を強化しながら、顧客数増加×単価アップを継続していくことで、息の長い成長が期待できます。

他市場への横展開も含めて、【3835】eBASE がずっとやり続けていることでもありますね。

競合分析~「どうやって」競争優位性を築いているか

競争状況や競争相手を確認の上、競争優位性が何によってもたらされているかを把握します。

寡占度(競合の数)、参入障壁・経済的な「堀」、競合の戦略 etc.


典型的な「堀」(無形資産、スイッチングコスト、ネットワーク効果、コストの優位性、効率的な規模)については、過去の連載その1その2で詳しく説明していますので、ご参照いただければと思います。

競争環境がなるべく緩い状況に身を置くことができており、価格勝負に陥っていない企業は収益が安定するので、投資先として望ましいです。

自社分析~「なにが」付加価値をもたらしている経営資源か

商品・サービスが受け入れられていて儲かっているということは、そこに付加価値があるということです。

それが自社の何によってもたらされているかを把握します。

技術力、先行的な設備投資、オペレーション、ブランドイメージ、組織、人的資源 etc.


ここで「好き」の理由の言語化が役立ってきます。

「その『好き』はなぜ実現できているのか?」と突き詰めて考えていくと、その企業独自の経営資源に気付くことになるかと思います。


例えば、

「他店では置いてない大きなサイズの靴が、いつも揃っている」

→ 在庫を切らさない&売れ残りを作らないオペレーションと多様な販売チャネル(EC・アウトレット)の存在

→ 売れ行きに応じた迅速な追加発注・生産の仕組み

→ 信頼関係に基づき、フレキシブルな対応を可能としている中国協力工場の存在

→ 業界慣行と生産現場を熟知している社長の存在

といった感じで、連鎖的に強みとなる経営資源の存在が浮かび上がってきます。


「社員のみなさんが自由に意見を言い合える雰囲気があり、活き活きとしている」が「好き」の理由であれば、その企業の組織資産や人的資産といった「見えない資産」に注目して情報収集や分析を行っていくことになるでしょう。


これら3Cを軸とした情報収集をいかに真剣に行えるかによって、ストーリー作りの出来も変わってきます。

(続く)

こういった観点でたくさん情報を集めようとすると、観察する企業の数も自ずと限られることになります。
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