「単価は低いし、点数が膨らんで面倒くさいし、すぐにコピーされる。難しくてやりにくい業界なんです」
これは他ならぬ葉田社長のお言葉であります。
スマホのアクセサリー、ケーブル、電源タップ等、差別化が難しく、利幅は薄く、競合も激しいこまごまとした商品群で、なぜ儲かり続けるのかという「エレコム問題」。
BtoC事業に関して自分なりに一つの仮説を見出しましたので(最近、改めて投資した理由でもあります)、ここにまとめておきたいと思います。
鮮度が命。
エレコムの製品戦略は、「常に鮮度と競争力を保つ」ことです。
成功した製品や取引関係に固執することなく、自ら陳腐化させ、改廃をすることを心掛けています。
その新規開発の数は年間約4,000に上り、3~4年でほぼ全商品が入れ替わるといいます。
日経ビジネスの記事によりますと、80人前後の開発担当は市場調査・需要予測から始まり、企画・デザイン・開発・製造委託を行うだけでなく、自ら開発した製品の収支責任も負っており、店頭回り・営業支援まで行うということです(これは凄い!)。
パソコン、タブレット端末、スマートフォン等の新製品が世に出ると、その周辺機器・アクセサリーをすかさず開発しリリースできるだけの体制を整えている、つまり流行をいち早くキャッチして逃さないために最適化された組織となっているんですね。
それを踏まえて上で、以下の当社資料からの抜粋をご覧下さい。
委託販売による差別化。
「委託販売」という表現が出てきました。
私はこれを見て、エレコムはアパレルの枠組みでとらえるとスッキリすると直感致しました。
「鮮度」「流行」を大事にするのは、まさに衣料品と同じ。
「委託販売」というのも、百貨店向けのアパレルでよくあった販売方式ですね。
委託販売というのは、商品を借りてきて店頭に並べて、売れた分だけの代金をメーカーに支払い、売れ残った商品は返品するという商慣習です。
つまり、在庫リスクはメーカー側が負うということですね。
これは精緻な需要予測やそこに迅速に対応するオペレーション、そして何より財務体力がないとなかなかできません。
エレコムの場合は、「売り場スペースの運用」という形で、「点数が膨らんで面倒くさい」店頭在庫の管理と責任(売れなかったら引き取る)を引き受ける代わりに、「面」での自由な提案ができる地位を確立しています。
つまりざっくり言うと、家電量販店の店頭在庫管理が当社の重要な価値提案であり、それによって大きなシェアを獲得できているということです。
店側としてもエレコムは非常に便利な存在なわけですが、これができるのは、お困りごとをいつでも解決できるように全国に拠点網を敷いており、500人もの営業マンがそれこそ稚内から石垣島まで走り回るからこそです。
その営業マンの評定も、量販店への納入実績ベースではなく実際の店頭での販売実績ベースでなされているそうですから、処遇もマッチしています。
同じ委託販売でも業者がひしめき合うアパレルとは違って、デバイスの周辺機器・アクセサリーの分野でここまで遂行できる気力と体力があり、膨大な製品群を高速回転させる体制を整えているのはエレコムくらいですから、これが大きな参入障壁となっていると考えられます。
ここまで来ると、エレコムと同等の人と製品群をそこまで手当てすること自体が、もはや困難ですからね。
自前の店舗ではないものの、成功しているアパレルのSPAによく似た構造を感じます。
まとめ。
以上をまとめますと、エレコムは「天候不順」という言い訳をしない(できない)アパレル業であり、その業態として最適化された組織形態・販売方式を持つ企業である、というのが私の「エレコム問題」に対する仮説です。
冒頭の社長の言葉からしても、これを真似しようという企業はなかなか出てこないでしょうから、BtoC事業は急激な成長は望めないにせよ、キャッシュカウとして安泰ではないでしょうか。
この事業で生まれる潤沢なキャッシュをBtoB事業への投資に回しながら、買収した企業の経営資源を活用、技術の組み合わせで化学反応を起こしつつ、新たな成長を求めていくというのが現在の取り組みですね。
長きにわたって安定成長が期待できる根拠があるにも関わらず、評価がイマイチ高まっていないだけに、堅実な投資対象としてなかなか面白い存在ではないかと考えています。
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