いま主力の一角として保有している【7741】HOYA ですが、私はこの企業から投資家としての在り方に関しても、多くのことを学ばせていただいております。
当社の経営の強さは、やはり「事業ポートフォリオ経営」にあると思っています。
統合報告書にある以下のくだりには、非常にシビれるものがあります。
ビジネスモデルや景気感応度等が異なる複数の事業を展開することでリスクを分散させ、グループ全体の収益性・安定性・成長性を確保していくポートフォリオ経営を展開。
それぞれの事業が現状、どのライフサイクルにあるかを見極め、より成長性の高い領域への経営資本を配分。また、競争優位性を失った事業の撤退を行うことなどにより、適者生存的な事業ポートフォリオを構築しています。
HOYA 統合報告書2020
リスク分散。
直近期の売上高構成比は、ライフケア事業(メガネレンズ・コンタクトレンズ小売・内視鏡等)65%、情報通信事業(半導体製造用マスクブランクス・HDD用ガラス基板等)34%となっております。
ライフケア事業が安定性寄り、情報通信事業が成長性寄り。
こうして異なった特性を持つ事業を組み合わせることで、企業価値を安定的に向上させることができます。
コロナ禍においては、外出自粛によって珍しくライフケア事業が苦しみましたが、好調を維持していた半導体関連の情報通信事業がこれを補う形となりました。
まさに組み合わせの妙ですね。
なお、不況期で他社が投資を尻込みする時期には、ライフケア事業で稼いだキャッシュを情報通信事業の先行投資に回すといった、メリハリの利いた投資も可能になります(逆バリ的な)。
こうしたリスク分散の手法は、個別株のポートフォリオを組んでいる投資家にとっても大いに参考になるのではないでしょうか。
私自身、ポートフォリオ全体の構成を意識していたおかげで、ウィズとアフターを両方考慮しつつ、保有銘柄を大きく組み替えたりせずにコロナショックを乗り切れた気がします(ほとんどのものは、業績が落ちても一過性だと判断できたのもあります)。
安定性を求めるなら、一つの銘柄に大きく依存するとか、分散しているようでジャンルの似通った銘柄ばかりになってしまうとか、そんな 一本足打法にならないように 気を付けたいものです。
適者生存。
HOYAの事業構成の変遷も、なかなか唸らされるものがあります。
1941年創業。軍需向けレンズ等の光学ガラス生産が終戦で行き詰まると、海外向けを含めたクリスタルガラス食器の生産に移行し、基礎を確立する。
その後、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、半導体用フォトマスク、HDD用ガラスディスクなどの生産へと進出。
2008年にペンタックスと合併し、2011年にはPENTAXデジタルカメラ事業を譲渡(メディカル関連は残した形)。
2009年には、ほぼ祖業とも言えるクリスタル事業から撤退。
「小さな池の大きな魚」を強く意識した多角化戦略の結果、各部門でトップシェアを誇るなど、日本を代表する精密機器・ガラス企業へ。
こうした動きを見ていますと、個々の事業のライフサイクル・競争優位性の変化に応じて、企業としてのカタチを変えてきたのがよく分かります。
その取捨選択の判断基準は、SVA(Shareholder’s Value Added=株主付加価値、EVA同様の概念)ですね。
経営も投資も、資本配分という面では根っこでつながっています。
投資も状況に応じて柔軟に対応していかなければなと、HOYAを見ていると感じます。
各企業の株主価値と実際についている価格との比較において、旨みが無くなってきたのなら、そこはHOYAのクリスタル事業やペンタックスの扱いのごとく、冷静に取捨選択を行っていくべきなんだろうなと。
私が意識する長期投資も、個々の銘柄の長期保有ではなく、ポートフォリオの長期を見据えた運用へと、その意味付けは変わってきております。
以前あったような Buy&Hold すること自体へのこだわりも、今は無くなりました。
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