日本企業はPBR1倍割れの銘柄が多く、また「現金+有価証券≧時価総額」となっている銘柄も少なからずありますよね。
「資産バリュー投資」がまだまだ通用する土壌があるわけですが、なぜこういった状態がまかり通っているのでしょうか?
これは、現金及び有価証券の価値がディスカウントされている部分が大きいです。
柳良平さんの『CFOポリシー』(一見専門書チックですが、なかなか読ませる内容で面白いです!)によれば、直近のサーベイでは外国人投資家は日本企業の現金・有価証券100円を平均55円で評価しているとのことです。
なぜおよそ半分に評価されてしまうのか。
ここで本で紹介されていた、このことに関するグローバル投資家の主要コメントの要旨を記しておきます。
- 作為的に過剰現金を保有しているというよりは、ファイナンス理論に関するリテラシーが低いために不作為にそうなっている場合も散見されるようだ。
- 「どうせこの企業は無駄な投資や買収に金を使うのだろう」と感じた企業は少なくない。
- 大半の企業では保有現金を保有現金を全て株主に返すということはあり得ず、またROICを維持向上させるような投資・M&Aに使うことも考えにくいため100%評価はできない(一方で全くゼロ評価ということもない)。
- 建前上ROEを経営目標に掲げている企業こそ増えたが、バランスシートのスリム化という視点が圧倒的に欠けているように思われる。これは取りも直さず、資本コストという概念が企業経営者に欠如しているからである。
うーむ、かなり辛辣ですね。。
よく表現されるように「鍵のない、開かない金庫」とみなされているというよりは、要するに「何に使われるかわからん」「信用ならん」ということですよね。
多くの日本企業の情けなさに涙がちょちょ切れますね。
以上のことから、企業価値評価においては現金・有価証券を額面どおりに評価すると判断を誤る可能性があると言えます。
特にPBR1倍割れの企業に関しては、「コーポレートガバナンスや投資効率に懸念があるからこそ、現金・有価証券の価値を低く見ざるを得ない」という側面を頭に入れておいた方がいいでしょう(=いわゆるエージエンシーコストを理由にしたディスカウント評価)。
またこのサーベイからの隠されたメッセージは、「お金の使い方」がまさに問われているということです。
どんな企業に投資するにしても、「これまでどういうお金の使い方をしてきたか」、そして「これからどうお金を使おうとしているのか」を把握しておくことは、将来価値を見積もる上で極めて重要だと思っています。
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