長期投資においては、「買値を下回ったから売る」という思考はナンセンスであり、そもそも「損切り」という考え方がなじみません。
なぜなら、「価値」と「価格」とのギャップが判断のベースとなっているからです。
上昇していくであろう「価値」に対して、「価格」が時間をかけてキャッチアップしていくことを期待するのが長期投資です。
そこに、「買値」という概念が介在する余地は無いのです。
さらに言えば、「含み益」も「含み損」も関係ありません。
もちろん、結果としての「損切り」は存在します。
「価値」が大幅に下がったことにより、現在の「価格」が割高になる、すなわち両者のギャップが小さくなる、あるいは逆転(価値>価格⇒価値<価格)してしまうような場合には、売りを考えることになります。
1年前に自分が見積もった「価値」は、今見積もる「価値」とは別物です。
例えば、小林製薬で紅麹の問題が起こる前と後のことをイメージしてみて下さい。
1年前における「価値」に対して、その時点の株価が割安だと感じて買ったとしても、それが今の「価値」に対しては逆に割高に変わっているかもしれません。
(小林製薬の場合は、ブランド力の低下をリスクとして「価値」に織り込むことになろうかと思います。)
このような場合に、結果としての「損切り」は起り得ます。
しかしそれは、トレーダーに典型的な思考である「買値に対して何%下がったから」というものではなく、あくまで今の「価値」と「価格」に基づいた判断の結果によるものです。
長期投資においては、「買値」「含み益」「含み損」は、投資判断の要素からは外すべきなのです。
「買値」はあくまで今とは前提の違う、過去時点での判断の痕跡に過ぎないのですから。
大事なのは、今の判断です。
「買値」を気にせず売買を行えるようになるには、慣れと一定の訓練が必要ですが(私も時間がかかりましたが…)、そこを乗り越えればいわゆる「握力」が圧倒的に身に付きます。
そして、「含み損」も気にならなくなります。
なぜなら、「価値」に意識が向かい、それを信じるようになるからです。
コメント
ごもっともですが、これを徹底するのはなかなか難しいですねぇ・・・。
というのは適正な「価値」の判断というのが難しいですから。株価が下落しても、メンタル面も含めて余裕をもった状態でいられるというのも難しいですし。
事業内容、ビジネスモデル、参入障壁、成長戦略等々、なかなか外部の者が総合的に適正な判断をするというのは簡単ではないです。ですが、そこを素人というか外部者なりにあれこれ考えてみるのは面白いところでもあります。
興味がある会社がリアルのIRセミナーをしてくれたりすると直接あれこれ質問できたりするのでいいのですが・・。
逆に知らなかった企業のことを知ることができる場合もあり、投資対象とするかどうかは別にして、それはそれで面白かったりします。個別企業のIRセミナーはとにかくなにかツッコんで質問しようと思って話を聞くので眠くなることも
なくエンターティンメントになっています。
「これからはBRICSだ」と言われた時代に投資信託を購入しましたが、半額まで下落して、そのままですが…。
ここで言ってることが信用できません。
自分が理解できるものに投資する、ということに尽きますね。
価値の見積もりは自分でするしかありませんし。
結局、理解を深める過程そのものが投資のプロセスで、そこを面白いと思えるかどうかが長期投資を楽しめるかどうかのポイントなんでしょうね。
別に楽しめなくても長期投資はできますが、できれば楽しめた方がいいというか、そうでないともったいないなと思います。
低コストインデックスファンドもいいですが、日本株はやはり個別銘柄投資ですすめていきます。