2021/1期決算発表を終えたところで、【7683】ダブルエー の分析シリーズをお送りしたいと思います。
(流動性が低すぎるので、気を遣うのです…)
私が初めて購入したのは、2019年11月。
ある方との雑談の中でこの企業の存在を知ったのですが、IPOしたその月にセカンダリーで購入するという、自分としては極めて異例なケースとなりました。
よく「IPO銘柄は6ヶ月は寝かせろ」みたいなことが言われますし、私も普段はそれを意識しています。
でもダブルエーに関しては、ちょっと調べ始めただけですぐ「買い」の判断に至ったのです。
(結果的には6ヶ月待った方がよほど良かったわけですが、それはひとまず置いておきまして…)
まずは当初の主な購入理由を列記しておきます。
購入理由1:SPAとして、すでに形が出来上がっていた。
「婦人靴のユニクロ」だ!
目論見書で確認できる成長性、収益性、潤沢なキャッシュフロー、きれいなB/S等もさることながら、自分にとって決定的だったのは、マザーズ上場時にリリースされる「成長可能性に関する説明資料」中の、たった一つのページでした。


いかに当社が高い販売効率で稼いでいるかを、要素ごとに他社と比較しています。
私はここで気になったポイントが2つあります。
ROICがずば抜けて高い。
ROIC(投下資本利益率)を資料に使っているという時点で、効率性に対する意識の高さを感じました。
ROICは、分子が「税引き後営業利益」、分母が「投下資本」。
分母は当社で言えば、(現預金を除くと)棚卸資産、店舗設備、敷金及び保証金が主なものとなります。
いかに(B/S上に記載される)経営資源を有効活用し、高いリターンを生んでいるかを示す指標を選んだことに、当社の自信が表れていると思ったのです。
当社は家賃の高そうな駅ビルや駅近のファッションビル、大規模SCを中心に出店(香港も含めて)をしており、プロモーションにも力を入れているからか、販管費比率は他社比高めです。
しかしながら、高い売上高総利益率(2019/1期 63%)で相応にカバーできており、他社の倍近い高い棚卸資産回転率によって高ROICを実現しています。
靴専門店で一番手と思われたエービーシーマートを上回る、高い販売効率 ―。
このページの左側部分だけでも、高度なオペレーションの存在を感じることができました。
(その具体的な分析は、後日の記事で行います。)
そして実際に店舗を見に行っても、店内のアイテムが一目で分かるような、すっきりと余裕を持たせた陳列がなされておりました。
イメージ作りが上手だと感じると同時に、「売るために本当に必要な在庫だけを店に置いている」という印象を強く持ちました。
「デベロッパーが選んだテナント大賞」を毎年受賞していることも、坪効率の高さ(=歩合家賃でデベロッパーを満足させている)の裏付けになりますね。
名だたるアパレルSPAに対しても指標面で優位。
それ以上に驚いたのが、ファーストリテイリング他、名だたるアパレルSPAの成功者と比較しており、かつ指標面で優位にあったことでした。
考えてみれば、靴は服に比べてやっかいなアイテムです。
箱がかさばるし、重ねて陳列できないし、空間の活用にも限界があるし(ハンガーを使えない、目線が下になるように陳列する必要性etc.)、サイズ展開が広くて欠品は多くなりがち。
その中でも特に当社は、21.5cm~26.5cm(SS~3L)の幅広いサイズ展開を売りにしています。
そして何より、一人一人の足のカタチに合った丁寧な接客(コンサルティング)の必要性。
こういった不利な前提があるにも関わらず、優良なアパレルSPAを凌駕する効率性を誇っています。
「同じ靴業界は、もはや相手ではない!」
「参入障壁の低い業界であっても、他の追随を許さないオペレーションで勝てる!」
「まさに『婦人靴のユニクロ』!」
そんなイメージを持ったわけです。
創業者の志の高さ、中国出身である強み。
売上高が120億円台と大きくないにも関わらず、既にSPA業態としてしっかり機能しており、自社EC・オムニチャネルを構築できていたことは、大変魅力的でした。
ここで注目したのが、肖社長による創業時の社名です。
「直通企画有限会社」
顧客の声を、「直」に工場に「通」す。
社名から分かるように、初めから完全にSPAを志向していたということですね。
ユニクロ然り、ニトリ然り、SPAは事業の形がある程度出来上がってから移行するパターンが通常だと思っていたので、これは新鮮でした。
以下は上場時のインタビュー記事です。
今は倒産してしまった靴メーカーで5年ほど働き、中国で生産担当をしていた時、介在するプレイヤーの多い業界のあり方に疑問を感じていたようです。
「顧客の声を製品に直接反映できれば、顧客のためにもなり、ビジネスチャンスであるとして起業した。」
この志が、
「いつでも想像以上に満足のできる商品・サービスを提供します。」
という企業理念や、
「何がお客様にとって想像以上か、お客様が想像する以上に驚きや喜びがあるか」
という行動基準につながっているわけですね。
また肖社長が中国出身であるということも、当社の事業展開上、大きなポイントです。
協力工場を年間で押さえていることが、後日触れる当社の強みにつながっており、コロナ禍においても初期の欠品回避、あるいはトレンドとなったロングブーツの迅速な投入といった形で、それが証明されることとなりました。
その信頼関係を構築することは、たとえ業界経験があったとしても、日本人ではなかなか難しかったように思います。
中国の天猫(Tmall)への出店で成果を出していたり、香港で既に足場を築いていたりするのも、それと決して無縁ではないでしょう。
購入理由2:とにかく不人気であった。
IPO関連のブログを見てみても、やや強気の業績予想があったにせよ、「見送り」のコメントばかりが目立っていました。
男性の間での知名度はゼロに等しく、顧客層の20~30代の女性にとっても、単元が高く、当時は優待も無かったりで、なかなか買いづらいものがありました。
そして、「いまさら靴のチェーン?上場ゴール?」といったイメージも強かったかと思います。
日本の小売業では香港に一番多く店舗を出していること、国内外のECの伸びしろといった成長可能性も、まともに期待されているようには感じませんでした。
「これは掘り出し物かも!?」
当時はそう思い、打診買いから入りました。
ただ、ここからが大変だったのです…。
(続く)



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