前回、ダブルエーには「店舗の在庫を極小化する」意識、すなわち最低限の在庫と販売機会損失の防止とを両立させる意識があるのではないかという話をしました。
そのオペレーションの優秀さを理解していただきやすくするために、仮想の「平凡な靴屋」(以後、靴屋Aとします)と対比してみたいと思います。
前提は以下の通りとします。
【靴屋Aの前提】
・売り逃し(販売機会損失)を何よりも恐れている。
・仕入れは卸経由。メーカーへの情報伝達は間接的。
・ECは一店舗と同じ位置付けで、販売チャネルの一つとして用意(マルチチャネル)。
このケースで何が起こるかを見ていきます。
まず、店舗では売り逃しを恐れるあまり、それぞれの品目別に、できるだけ多くの在庫を積もうとします。
それぞれの店舗にたくさん積んであるので、倉庫からの供給の頻度は程々でいい、と考えたとします(この場合、週2回としておきます)。
すると、店舗ごとの在庫のバラツキが目立ってくるようになります。
ある商品が、店舗Aで売れ行きが良く欠品となっている一方で、店舗Bではダブついている、しかも店舗Aになかなか補充されない、ということが起こってきます。
靴屋Aのチェーン全体で見れば在庫があるにも関わらず、本来なら売れる場所にその在庫がないという事態。
売り逃しを恐れて店舗に在庫を積んでいるのに、実は知らず知らずのうちに、チェーン全体で見ればあちこちで大きな販売機会損失を生んでいるということになりがちです。
余計な在庫を積んでいて売り切るのに時間がかかるため、商品の入れ替わりがイマイチで、せっかくの欲しい商品も欠品が目立つということになれば、客足も遠のいていきます。
ECも運営しておりますが、一店舗と同じ位置付けに留まっている以上、売り逃しの抑制にはさほど貢献しないでしょう。
流通の多段階性も問題です。
生産から販売までのリードタイムが長くなると、需要予測の精度は低くなります。
店舗で小さな需要の変動が生じると、チェーン全体、卸、工場とサプライチェーンの川上に遡るほど、さらなる変動に備え、各段階で認識する需要変動は実際よりも大きくなっていきます。
極端に言えば、店舗▲5足→チェーン全体▲20足→卸▲50足→工場▲100足 というように…
(牛に使うムチを振った時、小さな揺れが手元から遠くなるほど大きな揺れになることに例え、これを「ブルウィップ効果」と言います。)
靴屋A全体の在庫が膨らむだけでなく、サプライチェーン全体で見ても大変非効率となります。
そしてリードタイムが長くなると、トレンドの変化を迅速に採り入れられなくなるのも大きなマイナスです。
これも売り逃しにつながります。
店舗単位でたっぷり在庫を積もうとする意識、そしてリードタイムの長さは、このように恐ろしい結果を招きかねません。
(続く)
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