前回の記事では、企業を取り巻くステークホルダーと価値創造・分配の仕組みについて書きました。
各ステークホルダーとの良質なリレーションを構築し、ユニークな価値提案をしている企業の実例として、【8919】カチタス を採り上げてみたいと思います。
(株)カチタス【8919】:株価・株式情報 - Yahoo!ファイナンス
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カチタスは、主に新築住宅の供給が少ない地方都市(人口5~30万人)において、戸建ての中古住宅を自ら調査して仕入れ、「安心・清潔・実用的」なリフォーム済住宅として販売する、一気通貫の事業モデルを確立した企業です。
案件の個別性の高い中古買取再販事業としては、2位以下に10倍超の差をつける圧倒的な業界No.1を達成しております。
(ビジネスモデル等については、以下の決算説明会資料のP.21~が分かりやすいと思います)
https://ssl4.eir-parts.net/doc/8919/ir_material_for_fiscal_ym2/80413/00.pdf
ここでは6つのステークホルダーと当社の関係性、及びそれぞれに対して提供している価値に絞り、以下の通りまとめてみました。
顧客
- 地方在住の年収200~500万円、持家志向のある借家世帯が主要ターゲット。
⇒ 地方のボリュームゾーンをターゲットとし、潜在需要は膨大。
(市場規模は潜在需要を含め、約4.6万件/年 ⇔ カチタスの年間販売件数4,305件と10%程度) - 「新築」「中古」「賃貸」に代わる第四の選択肢として、高品質・安価な「カチタス物件」を提供。
価格は同グレードの新築の半分程度、住宅ローンの支払が5万円/月以下で購入できる物件が大半(平均単価税込1,465万円)。
多くの場合、賃貸住宅の家賃より低い住宅ローン支払いによって持ち家を手に入れることが可能。
⇒ 市況・景気に左右されにくい安定した基盤を構築。 - 2年間の瑕疵担保責任を負い販売。中古物件特有の境界線、シロアリ被害、水回り、構造部の経年劣化等の問題を解決の上、快適な生活のためのリフォームを行う。
工事の姿勢やリフォーム前後の変化が分かるよう、仕掛の時点からネット掲載。
⇒ リフォーム完成前販売が可能に。滞留在庫の極小化、チラシ抑制による広告費削減に貢献。
取引先(仕入先・外注先等)
《仕入先》
- 地場の中小規模の不動産仲介業者にとって、カチタスは安定的に中古戸建物件を買い取ってくれる有難い存在。
物件買取・販売の両方で関わることができれば、業者としては2度仲介手数料を獲得可能。
⇒ 「町の不動産屋さん」をパートナーにし、物件情報を効率的に収集。 - 店舗への売却希望者からの直接買取依頼も重要な仕入ルート(地方で低コストのTVCMにより「家を売るならカチタス」のブランドイメージを構築)。
⇒ そのままでは市場価値の低い空き家・築古一軒家を流通させ、相続問題の解決にも寄与。 - 価格提示に先立ち、カチタスの社員、工務店、防蟻業者の3者立ち会いによる入念な物件調査を実施。
売却希望者に対して適切な価格設定(減額交渉無し)と迅速な買取(後述)を実現。
同時に、売却側は売り手責任から解放される。
《外注先(工務店)》
- 全国約900の工務店とパートナー関係を構築、事業の安定化(それぞれの工務店のキャパシティに応じて、一定頻度で仕事を発注)・地域活性化に貢献。
カチタス制定の「標準仕様書」「再生要綱」を使用することで、効率性・品質を担保。
⇒ リフォーム予算の遵守、工期の短縮化(平均1.5ヶ月)。 - リフォームに使用する設備類はカチタスが仕入れることで、ボリュームディスカウントによるコスト低減を実現するとともに、工務店側の資金負担を解消。
従業員
- 一つの物件につき、仕入、リフォーム、販売を、同じ営業担当者が一気通貫で担当。
⇒ 案件ごとの業務品質が安定。責任も明確化され、買取の精度(→再生販売の可能性)は向上。 - 採用は業界の色が付いていない、地域のために働きたい地方大学等の新卒が中心。
累計5万戸超の買取・販売実績により蓄積された独自のナレッジ(リフォームの「企画力」と買取の「見立て力」)を、マニュアル・教育研修・勉強会等を通して共有。
⇒ 再現性のある人材輩出の仕組み。営業員の生産性維持向上が図れている。 - 長く働いてもらうため、成果依存でない固定給中心の報酬体系。
⇒ 給与水準は同業他社比でも高くないが(新卒の初任給は高いものの、増えにくい?)、離職率は低位かつ低下傾向(2020/3期 9.0%)。
(次回に続きます)
書きながら、久々に仕事のレポートに明け暮れていた日々を思い出しました(笑)↑ ポチっとお願いします。
コメント
なるほど、これはいいところに目をつけているなという印象です。
一見、なんでもない、よくある事業のように見えて、ステークホルダー、会社をとりまく関係者すべてがそれぞれの立場での利益を得られるようなビジネスモデルは伸びやすいし、しかも、市場はかなり大きく広そうです。
今後、小規模な業者を取り込みながら規模を拡大しつつ同社の強みをより生かすようなことも考えられそうです。
これを見ていて、私はこの頃注目している、病院の入院セットを提供しているエランにあてはめて考えていました。
地味そうだけれど、まだまだ市場拡大の余地があり、全国展開している業者としてはトップである。
入院セットを利用する入院者本人や家族はもちろん、当該病院、従来から病院にリネン等を供給していた業者も、それぞれ利益を得られる。
エスプールの障がい者就労支援も、困る人がいません。関係者は、障がいのある人本人や家族、雇用する企業、行政(地域社会)といったところでしょうか。
最近は個別企業のIRセミナーも、こうしビジネスモデルなどに関心がいくようになりました。最近はリアルのイベントがなくて残念ですが。
ステークホルダー各方面との関係を考えながら投資先をチェックしていくと、成長の持続性について自信がより深まるような気がします。
エラン・エスプールも、その意味で投資しがいがありますよね。
それにしても、リアルのイベント、私も待ち遠しいです!