【7683】ダブルエー 2022/1期決算発表を受けて(1)

企業研究

決算短信(3/17付)と決算説明資料(3/24付)が出揃ったところで、それらに書かれていない部分を補足する形で、その内容の振り返りをしてみたいと思います。

この決算&今期予想を見た際、私も正直想定外の内容で面食らったのですが、株価大幅下落を引き起こした大きな要因は、主に以下の2つにあると考えています。

  1. 4Qでの売上総利益率低下
  2. 増収減益予想


これらに加えて、1月決算というのも災いしたのでしょう。

小売業の決算月は2月・3月がメインであり、ウクライナ情勢を勘案した業績予想はほぼ皆無なはずで、これから本格化するであろうコストプッシュ型の業績予想を見慣れていないという面もあったのではないでしょうか。


その株価水準の是非は別にして、いったん売りたくなるのも無理はないですよね。
期待している時間軸の違いもありますから。

以下では今後も当社を応援していきたい方々に向けて、上記の1,2を中心として私なりの考察を加えていきます。

4Qでの売上総利益率低下について

直近4Qは、売上高については良好な結果でした。

期初の業績予想は三回目の緊急事態宣言までは織り込んだものでしたが、実際には緊急事態宣言・まん延防止等重点措置はほぼ年間を通して継続され、厳しい環境にありました。

それでも客単価重視の施策が奏功し、通期下方修正にはならない程度に着地させる形で、4Qは前同比+7億円の大幅増収となりました。


利益面も額としてはそれなりにまとめてきた一方、売上総利益率は3Qの66.6%から4Qの61.7%へと急低下しています。
ここはちょっと心配になりますよね。

ただ四半期単位の棚卸資産回転期間は 3Q:2.3ヶ月から 4Q:1.7ヶ月(ちなみに前4Qは1.8ヶ月)へと短縮しているので、決算短信が出された時点では、翌期以降を見据えて在庫処分を強めに行ったのだろう(それを行ったとしても、通期利益予想数字には到達するので)と推察しました。

実際、後に出された決算説明資料では、4Qについて「第6波に対応するために、季節品の在庫消化に重点を置く販売戦略へスピーディーに切り替え、コロナの影響を最小限にし利益を微減に留めた」とあります。

確かにオミクロン株の感染拡大スピードは桁違いでしたからね。

「生もの」である季節品に対し、在庫リスクを察知して早急に動かすこの臨機応変な対応は、当社の真骨頂とも言えます。


諸々の対応も適切と思われ、総じて健闘したと言っていいのではないでしょうか。

4Qで出したような低い売上総利益率は、エネルギー価格高騰・円安の影響が当面あるにしても、一時的なものに留まる可能性が高いと判断しています。

増収減益予想について

より衝撃的だったのは、まさかの増収減益予想です。

ただ決算短信と同時に「テレビCM放映のお知らせ」がリリースされたことで、「これは2015/8期パターン!」と瞬時に思い至りました。

上表は新規上場時の「成長可能性に関する説明資料」から切り取ったものなのですが、2015/8期は大幅増収の一方で経常利益は大幅減益となっています。

この期は期初から榮倉奈々さんを起用したTVCMを展開し、それが以後の躍進につながったんですよね。
いわゆる「グリッチ」的な減益を彷彿とさせます。

新規上場時の目論見書においても、「第14期(注:2015/8期)における経常利益及び当期純利益の大幅な減少は、テレビコマーシャル等の実施による多額の広告宣伝費等の計上によるものであります」と、ハッキリ書かれています。

前後の業績推移からして、おそらくこの期は通常期より3億円以上は上積みしたのではないでしょうか

今回も広告宣伝費には相当な上積みを予定していて、それはエネルギー価格高騰・円安以上に、直接的に減益予想に影響を与えているものと考えられます。


ただ、それにしては今回の増収率(+10.8%)が物足りないと感じたかもしれません。

これについては決算説明資料でも明らかになりましたが、「新型コロナウィルスの第7波、8波が再来すると仮定」しており、広告による増収効果が相殺される部分が少なからずあると見ているということですね。

TVCMを打つ狙い

ここで少し話は脱線しますが、このタイミングでTVCMを打つ意味を考えてみたいと思います。

今から1年以上前の話になりますが、当社の問題意識として、20~40代に対するブランド認知度が自社が考えるよりもかなり低いというものがありました(調査会社を使い、アンケートを取ったそうです)。

そこで、さまざまな属性(若い単身者、主婦、元アイドル、スポーツ選手等)のインフルエンサーを使い、YouTubeプロモーションを行いました。それが2020年秋冬の動きです。

この活動をきっかけとして、田中理恵さん監修のヒット商品「跳べるパンプス」も生まれています。


こういったプロセスを経た上で、コロナ禍からの「経済再開」を見据え、いち早くより多くの潜在顧客にリーチするというのが今回の目的でしょう。

「YouTubeをよく見る人はテレビはあまり見ない。テレビをよく見る人はYouTubeはあまり見ない」ということも、よく言われますよね。

Webや店頭でのプロモーションだけでなく費用も高いTVCMも併せて実施するのは、「TV離れが進んでいるとはいえ、依然TVの影響力と信頼度はWebに比べて非常に高い」という当社側の認識があります。

この調査からも、意外にも7割もの若者がまだテレビを見ていることが分かります。


実際に見させていただいたCMは、まさに「春」のイメージで明るく好印象を持ちました。
人選も大変工夫されていると感じます。
(まさか2名起用とは思いませんでしたが)

年齢的にどストライクながらWebをあまり見ない層に向けて、ORiental TRaffic の新たな定番商品をアピールする田中理恵さん。

今後顧客として獲得していきたいnon-no世代に向けて、これから育てていきたいスポーツブランド ORTR をアピールする横田真悠さん。

小さいサイズのイメージの田中理恵さん、大きいサイズのイメージの横田真悠さん(サイズ展開の幅広さもアピール)。


また放映地域にも注目です。

前回2014/9月からのTVCM(榮倉奈々さん起用)の対象地域は関東・関西・福岡地区でしたが、今回は中京地区が加わってます。

最近の出店やリニューアルの動きを見ても、中京地区は重点地域になっているのでしょう。

これからの本格的な出店地域の広がりを予感させるものがあります。


田中理恵さん、横田真悠さん出演/ORiental TRaffic「跳べるパンプス」&ORTR「スニーカー」TVCMが4月1日(金)より放映開始

説明不足の感は否めず

あっさりとした決算短信でのコメントに比べれば、決算説明資料でだいぶクリアになった面はあります。

足元の厳しい外部環境を十分に織り込んだ、地に足の着いた業績予想であることも分かります。

ここでは詳細は割愛しますが、丁寧に見ていけば評価できるポイントもたくさんあります。


ただそれでも、将来を見通すにあたっては未だ説明不足の感は否めません

決算短信リリースを受けて私が個別に確認し、その結果安心することのできた肝心の事項に関しては、決算説明資料でも述べられていないんですよね。

説明の仕方次第では、先々に安心感と期待感を持つことができ、株価位置もまた違っていたものになっていただろうにと、もったいなさを感じます。

次回、その辺りを詳しく解説したいと思います。

(続く)

続きは旅行記の合間に。
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コメント

  1. GNF より:

    ろくすけのダブルエーの記事を首を長くして待っておりました!
    この記事を読んでかなり安心できました。
    あと1、2年でコロナ禍は確実に終わると個人的に感じているので、
    この時期での先行投資はむしろ潜在成長率を高めるものですね。
    ありがとうございます。

    • 6_suke より:

      コメントありがとうございます。

      そうですね。
      イレギュラーな状態が解消さえすれば、足腰はコロナ禍の間に強くなっているので(卑弥呼も加わりましたし)、
      より高みを目指せるはずです。

      少し間が空くことになりますが、この続きの次回記事の方がむしろ伝えたいことのメインと言えるかもしれません。
      引き続き宜しくお願い致します。

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