株主総会・退任挨拶の終了後、そのまま66期業績見通し説明会へと移行しました。
(写真右側は今期上市予定のHUDヘルメット「OPTICSON」です。)
業績見通し説明会
66期(今期)業績について
決算説明会資料の「2022年9⽉期業績予想」のパート(P.13~)について、石田社長が順を追って説明されていました。
- 想定為替レート USD105円、EUR125円
- 受注状況
今期は営業が昼寝していても年間売上に相当する受注を確保しているので数字が作れるというのが、通常期とは違う点。
岩手工場の生産スペース拡張等はあるが、労働集約的な面もあり、機械以外も必要である点は留意。
仮に注文状況通りに生産体制が組めるなら、もっとビューティフルな利益を上げることができるが、実際は制約がある。
なお、チャンスがあれば値上げをしていきたい。 - 販管費
65期はレースが無い関係で、レーサー報奨金が無かった。
イベント・出張・設備投資等で、販管費は約10億円増える。 - 中国向けの減収について
中国の市場が冷えたということではない。(今回、これが確認できたのは大きいです)
先ほど申し上げた通り、代理店が注文を入れて来なかっただけ。
需要を埋め合わせるために、中国が日本や他国から並行輸入品を探す動きが出てくるのではないかと予想。
SHOEIとしては中国は規格が違うので、並行輸入は止めて欲しい。 - 米国向けの増収について
ガンガンに注文を入れてくる。
本当は日本国内向けにもっと作ってお出ししたいが、そうすると輸出できるタマが無くなる。 - 生産体制拡充について
茨城工場の隣地7.2haの購入については、県から声掛けがありラッキーだった。
ただ斜面の造成に時間がかかり、実際の生産能力の増強は2024年から。
そこまでの間が悩ましい。 - 商品戦略
今期はスマート(HUD)ヘルメット(「OPTICSON」)を出したい。
レプリカヘルメット戦略を強化する。
昨年日本選手権優勝を果たした元SMAPの森且行レプリカモデルも発売する。
定性課題
次の株主総会に向けた宿題ですね。
今回は以下の通りです。
- 生産体制の拡充
- 高付加価値化、HUDヘルメットの上市
- SHOEI ASIA CO., LTD.の本格稼働
- 中国現法の本格稼働
- PFS 国内5割超、海外での普及本格スタート
- 環境問題で着実な成果を出す
- 地域貢献で着実な成果を出す
経営基本方針
改めて経営方針について説明がありました。
- 健全な財務体質により、事業継続を⻑期にコミットします
他人資本・補助金を当てにしないということです。 - Made in Japanで勝負します
海外工場は一切考えていないとのことです。 - お客様の声に⽿を傾けます
サンバイザー付きヘルメットは、欧州では2個に1個はついているが、これはお客様のニーズを反映させたものであるとの説明がありました。ちなみに「大宮の会社」(アライのこと)では付いていないとのことです。
質疑応答
説明会の内容に関する質疑応答の時間もありました。
【質問1】
毎年楽しい説明会を開催いただき感謝している。
フィッティングが10月から有料化して個人的には痛手だが、どういった事情によるものか?
⇒
フィッティングを始めて10年になるが、お店では30分かかっている。
ご理解をいただきながら、お店側にそのコストを負担していただいている状態が長く続いていた。
さすがに厳しいということでお店側からの要望があり、有料化に踏み切った。
3,000円を払うなら調整しなくてもいいというお客さまはごく一部。
お店側にPFSを長続きさせていただくために、我々としても断腸の思いではあるが決断した。
【質問2】
環境問題への意識が高まっているが、ヘルメットの下取りは行っているか?
また、もう替えた方がいいとのアドバイスをいただける機能診断のようなものがあれば、個人的にはありがたい。
⇒
(堀本取締役)
販売店にご協力いただき、下取りは無料で行い、工場で処分している。
機能診断についても基本的にはやっているので、まず品質管理部にお問い合わせいただければ。
送っていただいて診断をしている。
(石田社長)
発砲スチロールの厚みが確保できているかが重要。
ご参考にしていただければ。
(堀本取締役)
持ち込まれる方もよくいらっしゃる。
【質問3】
10年株主をやっているが、昨年と比較して印象が変わったことがある。
昨年は米国は期待できないというニュアンスだったと思うが、実際は結果が出ている。
昨年からどう改善されたのか?
⇒
鋭いご指摘。
米国が増えたのは、注文を早い者勝ちで行った結果だ。
来るものは拒まず、ファーストイン・ファーストアウトでやった。
ただ、米国に対する考えは変わっていない。
米国はPLが問題。
常時2,3件の訴訟を抱えていると言っても過言ではない。
例えば150kmでお酒を飲んで走り、壁にぶつかったとしても、ヘルメットメーカーを訴えてきたりもする(苦笑)
裁判に行くだけで行きと帰りでそれぞれ二週間隔離され、コストと手間がかかる。
中国と米国を比較すると、粗利は中国が46%、米国が33%。
本音を言えば、トラブルの少ないところに売りたい。
このアロケーションについては、今後に向けた反省材料。
【質問4】
今年は資源・コンテナなどサプライチェーンの混乱が目立ったが、当社への影響や今後の見通しについて伺いたい。
⇒
売りと買いの両面で説明したい。
まず売りについてだが、FOB契約であり横浜で積んだら終わりで、以後は我々の責任外である。
欧米に到着するのに1ヶ月遅れはザラとは聞いているが。
買いについては、部材はMade in Japanのものがほとんどで、この一年間止まったということは無い。
(新製品に関してはどうか?という問いに対し)
ICは使ってはいるものの、とりあえず500個というレベル。
何万個も売れれば気にする必要も出てくるだろうが、今のところ広島の会社に調達してもらっており困ってはいない。
→ 要するに、売りでも買いでも直接的にはサプライチェーンの混乱の影響を受けにくいということですね。
以上で業績見通し説明会及び質疑応答は終了。
正確な時間を記録しておくのを失念してしまいましたが、ざっと株主総会の開始から2時間でした。
所感
今期も増収増益予想ではありますが、生産能力がボトルネックとなって、地域別のアロケーションが最適化されていない今期よりも、むしろ来期以降に大きな期待を持てる状況だということがよく分かりました。
石田社長及び各管掌の役員と株主との間で良質なコミュニケーションが成立しており、一つの理想的な総会のあり方を体現していると感じます。
質問者の着眼点が多様でレベルも高い印象で、得られた情報の質量ともに満足です。
定性課題とその進捗報告を欠かさず行ってくれるので、毎年足を運ぶ楽しみも出てきますね。
評価は二年連続の★★★★★とします。
なお会場には、かつて当社再建の舵取りを行い、現在は前田工繊の社外取締役を務められている山田勝さんのお姿もありました。
従業員の皆様が次々と挨拶に来られ、昔と同じようにいつも人の輪の中心にいらっしゃいました。
こういうところにも人徳を感じますね。
私も前田工繊の総会では質問をさせていただいたこともあり、少しお話をすることもできました。
また来年も定性課題に対する答え合わせを楽しみにしつつ、参加させていただきたいと思います。
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