前年度も権利はあったのですが、日程が他社と被り合わなかったため、今回が初参加となります。
この日はソニーグループ、オリックス、シチズン時計なども日程が重なっておりまして、品川駅の高輪口は大賑わいとなっていました。
藤江社長(私は親しみを込めて、心の中で僭越ながら「太郎ちゃん」と呼ばせていただいております)のオーラを近くで感じたいというのが、今回の主要な参加目的でした。
株主総会
座席は約270、出席者は半分強といった印象。
第二会場も用意されていたようですが、おそらく第一会場のみで済んだと思います。
まず司会進行の女性が、まるでアナウンサーのように手慣れていらっしゃって(実際にそうだったかは分かりません)、なんだか流石といった感です。
議長は藤江社長。
入場・着席後、旧知の株主を一人一人確認するように、会場全体に目配りする姿が印象的でした。
(目線も大事ですね。この後の説明ではプロンプターを使い、常に顔を上げていらっしゃいました。)
監査報告は、監査委員会委員長である土岐独立社外取締役から簡潔に。
報告事項については、藤枝社長がスライドを使って概要を説明。
「『志(パーパス)』の自分ごと化」「ロードマップ」「重要テーマ」等、定性的な面に力点を置き、かなり丁寧に話をされていました。
プレゼンテンテーション資料は、後日、企業サイトの株主総会のページにアップされることと思います。
その後、取締役会の現状について、審議の様子を撮った動画付きで、取締役会議長である岩田独立社外取締役から説明がありました。
(10:27)
議案は以下の通りです。
- 剰余金の処分の件(ノーマライズドEPSに基づく、累進配当政策についても言及)
- 取締役11名選任の件(女性取締役は4名に)
(10:32)
質疑応答(1)
(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)
藤江社長が一旦受け、内容に応じて管掌の役員にバトンタッチするスタイルでした。
まず、インターネットで受付した事前質問のうち、特に関心高かった事項についての説明がありました。
【事前質問1】
オーガニック成長が目標値から乖離しているのでは?
⇒
2023年度の調味料・食品は2022-2025の計画を上回っていたが、在庫調整の影響を受けたヘルスケア等で大きく下回り、全体として下回る結果となった。
今後は、調味料・食品、冷凍食品の着実な成長と、ヘルスケア等の回復により、オーガニック成長率の改善をしっかりと見込んでいる。
具体的には、調味料・食品は、価値に見合った価格を設定する、広告投資によるブランド力の向上とシェアアップ、また海外調味料や生活者の特定のニーズにしっかりとお応えしていく新製品の投入、こういったもので新領域開拓等によって成長を図っていく。
ヘルスケア等は2023年度は短期的な調整局面、特に在庫の調整局面となったが、中長期の成長ストーリーは全く変わっていない。
2023年度4Qから、電子材料などのファンクショナル・マテリアルズにおいては、市場回復の兆しがはっきりと見られている。
PC向けの回復、生成AI向けの継続した需要拡大、また汎用サーバー向けの緩やかな復調を見込む。
電子材料については、半導体の中に占める大変重要な素材。
半導体向けの層間絶縁フィルムの市場においては、95%超のシェアを持ち、中長期的にも味の素グループの成長を大きく支えるもの。
それにより、2025年度においても目標達成を見込んでいる。
【事前質問2】
株式分割の予定について。
⇒
現時点においては、決定している事項は無い。
投資単位の引き下げは、少額での投資を可能にすることでより多くの投資家の皆さまの市場参画を促し、株式の流動性を増していく効果があると認識している。
実施については、株価水準・株主数の推移・需給関係・実施に伴うコスト等の諸事情を見極めた上で、実施するか否か、引き続きしっかりと検討していく。
ここから会場からの質問に移ります。
多くの株主からの質問を受けるべく、「お一人1回、2問まで」とさせていただきたいとのご要望がありました。
【質問1】
中期経営計画の廃止に関して。
目先の数字に捉われる、いわゆる「中計病」に陥っていたと社長様も色々な場で仰っていたと思うが、実際に廃止された後、経営陣や社員の皆さまの時間の使い方や仕事のしかたの面でどのような変化があったのか?
(私からの質問です)
⇒
2022年まで、長年にわたって当社は3ヵ年の中期経営計画を立てていた。
これを廃止したが、中期経営計画にはいい面と課題、両方あったと思う。
3年先のどうなるか分からないことに対して、かなり細かく数字を作り込みすぎて、計画・計画・計画・計画…「PPPP病」と言っていたが(笑)…そのような状況に陥っていたのではないかという反省の下、2030年の挑戦的な「ありたい姿」を作り、そこから遡ってどういうことをやっていくのかという、実行力を磨く経営に変えてきている。
その意味では、まだ完全に変わりきった状況ではないと思うが、数字を細かく作り込む時間から、実行力をしっかりと磨き込んだり、2030年に向けた道筋=ロードマップがしっかり描けているか ー 我々エベレストを目指していこうじゃないかという中で、このロードマップで届くのか、富士山は登れるかもしれないが、エベレストを目指すにはどういうロードマップが必要なのか ー といった所に、検討や実行の時間が移ってきている。
ただその一方でまだまだ長年続けてきたこともあるので、課題を明確にしながら一つ一つ改善し、実行力を磨き込み、継続的・飛躍的に企業業績をしっかりと上げていき、企業価値も上がっていくように、株主の皆様にも喜んでいただけるような経営をしたいと考えている。
→ 大きな組織においてより挑戦的に変わろうとすると、マネジメントサイクルから抜本的に見直していかないといけないということですね。
【質問2】
- 半導体の材料で野心的な挑戦をされている。
味の素さんというと、どちらかというとスマートな会社で、食品会社らしく、株価も階段を上がるように進んでいるイメージがある。
その中で野心的なABF(味の素ビルドアップフィルム)に関しては、データセンターも全国で増えていくし半導体の需要もある程度増えてくるだろうが、その見通しについてと、味の素ファインテクノ(以下、「AFT」)という会社自体をどう位置付けていくのかについて教えていただきたい。 - 昨年の株主総会で、デイヴィスさん(独立社外取締役)が立って挨拶されたのが凄く印象に残っている。
1年間関わられて、この会社に対して感じた課題をお聞かせ願いたい。
(1年経ったところで社外取締役に会社の印象を伺うのはいい試みですね。)
⇒
(バイオ&ファインケミカル事業本部長:前田執行役常務)
まず、2023年度の業績が在庫調整により短期的に落ち、ご心配をおかけしたことをお詫び申し上げる。
これはパンデミックの中で、2021年・2022年と前倒しで急激に伸び、2023年に調整局面に入ったということ。
私共は藤江が申した通りかなりシェアが高いため、業界全体が調整局面に入ったことで我々も同様の結果となった。
調整は一巡して、株主様のご指摘の通り、よりたくさんのデータをより短時間に送らなければいけない、電力の消費も抑えなければいけないといったことが、今後どんどん増えていく局面にある。
コンピューター・テクノロジーに求められることが加速的に高まっており、それに合わせてフィルムに求められる能力に関して、とてもたくさんの宿題をいただいている。
電力をたくさん使うので伝送ロスを減らして欲しい、そうなると熱が上がってしまうので、熱が上がらないように、あるいは熱が上がっても膨張して形が変わることなどなく耐えられるように等々、業界が進化する中でフィルムへの要求水準も非常に上がっていく。
たくさん宿題をいただいてそれにお答えすることで、我々も発展してきたし、お客様とつながっていて「こんなフィルムできないの?」と、いち早く宿題をいただけることが大変な無形資産となっている。
AFTは製造の会社。
薄く広く、とてもたくさんのデータセンターやパソコンに入るので、サンプルだけ良くてもダメで、安定性を持って必ず信頼性のあるフィルムをお届けすることが必要。
大量に作っているAFTに、生産のノウハウや他社ではできないことが蓄積していることが私共の強み。
サンプルについてはたくさん競合がトライして出したりはするものの、いざ本番の生産になって毎日毎日同じものが作れるかどうかという点が、AFTに集約している強み。
フィルムだけに留まらず、機能の高い樹脂の接着剤や、磁性材料で省電力で同じようなデータが処理できないかといったような宿題をいただいており、それにお答えすることで2030年に向かっていきたいと考えている。
→ ABFの「経済の堀」が築かれた過程がよくわかるご説明でした。
(藤江社長)
なぜ味の素が半導体の電子材料をやっているのかについて補足させていただく。
元々創業製品の味の素はグルタミン酸ナトリウムだが、これはアミノ酸からできている。
アミノ酸の働きを徹底的に研究し、それを活用し続けてきた会社である。
その研究の中で、1970年代にアミノ酸を応用したある樹脂を開発することができた。
1990年代にこれを電子材料に使っていこうということで成功し、今に至る。
そのように研究開発を色々な形でやっているので、今後、もっともっと実際のビジネスに活かしていきたいと考えている。
2⇒
(デイヴィス独立社外取締役)
1年経ってどう感じたかというご質問ですが、何時間かかるかわからないので(会場笑)、なるべく手短に。
盛りだくさんだった。
私にとって一番大事なのは、サステナビリティ。
2030年には待っていれば到達するが、「ありたい姿で」到達するには何もしないということでは不可能で、野心的でなければならない。
その中でサステナビリティとロードマップとが本質的に繋がっているかということに大変関心を持って注目していた。
「定時株主総会交付書面」P.40に味の素のサステナビリティモデルがあるが、今年に入って重要テーマを整理している。
これをロードマップに落とし込み、取組課題として事業を通じて実現していくということで、前進していることを確認している。
また社外取締役として事業所を訪問し社員と対話をしたりして、現場の第一線で取り組んでおられる皆さんにこのビッグ・ピクチャーが伝わっているのか、その中で自分は何をすべきか、何のためにそれをやるのか、連帯感・達成感を感じられるか…いくつか事業所を回って見学させていただいたが、伝わっている。
しかも意見がガンガン上がってくるような状態。
エンゲージメントを目指すというのを一つの目的としているが、それができている印象。
ただ、忙しい。
2日間泊まり込みをして議論をしたりしていて、ちょっと遊べるかなと思っていたのだが(会場笑)、重労働だ。
今の状況でいいのか、今後何をすべきかという、心理的安全性が確保され何を言ってもいい状況でストレートな意見交換ができている。
こういう会社はそうは無く、非常にやりがいを感じている。
これ以上長く話すと議長の目が怖くなるので(会場笑)、この辺とさせていただく。
(会場拍手)
→ デイヴィスさんの日本語は非常に流暢、かつユーモアもあり、各社から引っ張りだこなのも頷けます。
(続く)
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