旅行記の構成上、先に株主総会の記事を書いておきます。
eBASEは普段からIR照会もよく行っているのですが、やはり大きな方向性については経営者から直接伺いたいこともありますので、遠方からでも毎年参加するつもりでおります。
昨年の株価上昇で個人投資家の関心も高まったためか、今年はよく質問の出た総会となりました。
なお事前にアナウンスされていたことではありますが、昨年に引き続き個人投資家向け決算説明会は中止でした。
後刻、動画はアップされましたが、説明内容に対するその場での質疑応答ができないのは、やはり物足りなく感じますね。
株主総会
座席は昨年同様密を避ける形で約60席。
参加者は昨年から倍増し、40名程度でした。
議長は今年から常包現会長から岩田社長に交代。
(岩田社長のキャラクターについては、後ほど触れさせていただきます。)
監査報告・事業報告を簡略化し、できる範囲で終了時間を早めたい旨の説明がありました。
事業報告のうち、9つの「対処すべき課題」については、招集通知の内容を少し端折って読み上げていましたが、新たな補足事項等が無いのであれば、ここは不要だった気がします。
決議事項は以下の3つです。
- 剰余金処分の件
- 取締役(監査等委員である取締役を除く。)5名選任の件
- 監査等委員である取締役3名選任の件
質疑応答
(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)
今回から、基本的に岩田社長が答えられています。
「1人1問まで」との要請がありました。
【質問1】
総会後の決算説明会を楽しみにしていた。
今年は無いので、この場で伝えておきたいこと、簡単なメッセージなどあれば、お話いただきたい。
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コロナ禍で中止となり申し訳ない。
動画は録画済で、ホームページ上で公開する。
動画の中で減益の背景について触れている。
商談が思うようにできなかったのが原因だが、ビジネスモデルが崩壊したということは無い。
昨年度後半期より商談も回復してきている。
【質問2】
1人1問までとのことだが、複数回しゃべらせてもらえないか。
第2号議案にある取締役候補者がどんな方々か分からないので、この機会に皆様からお話を伺いたい。
質問だが、自己資本比率がめちゃめちゃ高く、100%以上(?)を目指しているかのように見える。
自己資本が多すぎることのデメリットを、会社として把握しているかどうかを聞きたい。
ここは会長にご回答をお願いしたい。
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(常包会長)
当社はビジネスモデルを中心に考えてやってきた。
自己資本比率については、考えたことも無い。
ビジネスモデル、経常利益を意識して経営を行ってきた結果、今があるということ。
蓄積した資金については、使い道を考えなければいけない時期には来ている。
今後考えていく。
デメリットについては、何も考えていない。
→ 思わず拍手を送りたくなるような明快すぎるご回答、ありがとうございます。
【質問3】
小売に関わる事業に貢献する姿勢に、感銘を受けている。
この「困りごと」に対して、日本だけではなく海外でも貢献していく考えは無いのかどうか、お伺いしたい。
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中期で実現したいとは思っている。
ただ、国内で獲得すべきお客様はまだまだたくさんいらっしゃると考えている。
また海外展開に際して、いい考えがないのも事実。
うすっぺらい回答で申し訳ない(苦笑)
過去挑戦して、うまくいかなかった経緯もある。
→ ここはちょっと引っ掛かりました。まあ国内でやるべきこと、できることはいくらでもあるので、今は気にしなくて良いのかもしれません。
【質問4】
有価証券報告書やホームページには、経営方針として「企業がお互いに情報・知識を交友させ、新たな価値を創造できる社会を展望しております」とあり、次なるビジネスモデル、新たなマーケットを企業と共に創り出すことが我々の使命、とも書かれている。
デファクト化にあたって具体的な戦略をオープンにできない面はあると理解しているが、長期保有をする上で助けとなるよう、大きなビジョンや実現したい未来のイメージについてご提示いただけないか。
(私からの質問です)
⇒
eBASEは世の中にあり、原材料メーカーから消費者まで流通する、あらゆる商品の情報交換に携わることで、サプライチェーンの中での無駄を無くして効率化し、情報の精度をアップさせ、短納期化を実現させていきたいと考えている。
ご回答になったかどうか…
(「その辺りはこれまでの開示情報で確認できるので、その先のことについて伺いたい」と返答)
バーコードを使った消費者向けのサービスを展開していくが、商品情報交換のその先については私は答えを持ち合わせていない。
ひょっとしたら、会長の頭の中にはあるのかもしれないが…
→ 会長にお聞きすれば良かったですね。社長の主な役割はeBASE事業の中短期の実行戦略であって、グループの長期戦略の策定に関しては会長マターなので。変に遠慮してしまいましたね…
【質問5】
株主との接点が年1回しかない中で、SBGのようなオンラインでの総会を選択しなかった理由をお伺いしたい。
またコロナ禍にあって、この程度の減益でよく済んでいるというなという理解でいるが、オンラインでの商談の遅れに関しては、他社を見ていると、もう少し早く頑張っていただければ良かったと思う。
⇒
オンラインの総会は法的に制限されているということは無い。
中長期的に無いというわけではなく、今後検討させていただきたい。
今回は、オンラインでは質疑が難しいため、対面を選択させていただいた経緯がある。
→ 後者の要望に関しては、特にコメントはありませんでした(聞き逃したかもしれません)。
【質問6】
対処すべき課題⑨で、(eBASE-PLUS事業の)「既存IT開発アウトソーシングビジネスの安定衰退モデルから低成長モデルへの転換策」とあるが、「安定衰退モデル」という聞きなれない言葉もあり、これが何を意味するのか教えていただきたい。
⇒
IT開発人材派遣・システム受託の分野は需要が旺盛だが競争は激しく、「安定衰退モデル」であると考えている。
そこで、eBASE事業の強みとIT開発アウトソーシングとを融合し、「低成長モデル」へと持っていきたい。
要するに、eBASE事業で獲得したお客様に対し、派遣したい。
保守サービスの他、大規模案件の構築へとつなげていきたい。
→ 外部に安定的な需要はあるものの、人材が限られる中で、あくまでeBASE事業の発展に貢献できる仕事に絞り込んでいきたいということでしょう。eBASE絡みの仕事であれば、参入障壁もあって利益率は高く、また顧客ニーズの把握や、eBASE本体での貢献に向けた教育効果(eBASE-PLUSからの優秀な人材の融通が、同社の存在意義の一つでもあります)も期待できます。同時に、グループの発展の向けては人材の数がボトルネックとなりそうな実情もうかがえ、そこに対する手当てとしてM&Aは常に狙っているのだと感じられました。
【質問7】
決算説明会資料等を見ると、メーカーに対しては無償、小売に対しては有償のビジネスモデルとなっている。
メーカーからお金をもらわないのはなぜか?
⇒
商材えびすの話として進めさせていただくが、メーカーにはたくさん登録してもらうことが先決。
精度の高い情報を集めたい時に、有償ではその作業が滞ってしまう。
まずデファクトを取った上で、小売各社へと広げていく。
ゆくゆくはメーカーからも取っていきたいというのは、最終的な狙いとしてはある。
(「無償であっても、メーカーにはメリットがないのでは?」との声に対し)
メーカーとしては、多くの小売に対し、それぞれ商品情報登録を行わなければならないわけで、その手間が省けるというメリットがある。
ただ最初から課金してしまっては登録が滞ってしまうので、それは避けたい。
→ 当社の思想がよく表れていますね。最終的なマネタイズは当然考えてはいるものの、まずはとにかく登録を進めてもらうことで、各業界でのデファクト化、参入障壁の構築を優先するということですね。膨大なユーザー層から広く薄くベース収益を作るポテンシャルはあるものの、投資家としてはそれがデファクトが確立された後の長期的な楽しみとして取っておこうと思います。
【質問8】
長期で保有させていただいているが、ユーザーの推移を見る限り、食品業界以外の推移が芳しくないように思える。
そこに関しての対応・施策は考えているか?
⇒
数字で出ている通りだ。
食品業界は、食の安心・安全という大きなテーマがあり、弊社主体で推進できるものがあった。
一方、他業界は「このフォーマットでやりとりしないといけない」というニーズが把握できていない。
EC展開・小売販促をキーとして伸ばしていく方針。
(商品情報の蓄積のため)商材えびす、eB-goods(R)の展開に今後注力する。
→ 確かに、食品業界のように差し迫ったテーマが無いというのは、他業界での展開が進みにくい理由ですね。新たな画期的なサービスの開発に期待したいところです。
【質問9】
BtoBtoCモデルの推進についてだが、食品以外でも展開する予定はあるかどうか知りたい。
データプールの先に、個人消費者に訴えかけるものとして何か考えているか?
⇒
ある(明言)。
これ以上先は、企業秘密ということで。
→ これは期待したいところです!
(ここで岩田社長より、質問は「あと1つだけ」との要望がございました。)
【質問10】(質問2と同じ方です)
東証の再編について、プライム市場の基準を見た上で、会社側としてどう把握しているのかお伺いしたい。
ここはCFOの窪田取締役にご回答をいただきたい。
⇒
(窪田取締役)
(総会開催日時点で)正式な形で発行会社に対して基準は示されていない。
いろいろな情報が逐次出てきているのが現状。
RUMOUR(噂)レベルも含めて、情報を集めてプライム市場に行けるのかどうか、都度チェックはしている。
ただそれは企業側が決めるものではなく、東証が決めた基準に従うまでだ。
(「現時点での基準で、プライム市場へ行けそうかどうかを教えていただきたい」という声に対し)
確定した情報としていただいていない。
そもそも「プライム市場」という名称も、正式なものとして決まっていない。
会社としてお答えはできない、というのが回答になる。
(岩田社長)
6/30が移行基準日となり、そこで適合状況の判定がなされ弊社に通知されるという段取り。
今日のところは何卒ご容赦いただきたい。
→ 最後、ちょっと不穏な空気になりかけましたが、岩田社長がサッとフォローを入れたのは「おっ、やるな?」と思いました。
所感
決算説明会が無かったこと、運営に特段工夫も見られなかったことは残念です。
また前回までの常包会長の自信に裏打ちされたお話しぶりが明快でキレキレだったのに対し、岩田社長のそれはのらりくらりしていたことも併せ、終了直後の印象は星二つでした。
ただ後でメモを見返してみると、多岐にわたる質疑の中、岩田社長からも所々でヒントを出していただいていましたし、どこか憎めないキャラではあるんですよね。
(実は社内では「いじられキャラ」かもしれないと、少し思っています 笑)
グループの具体的な戦略をオープンにせず、「そーっと」デファクト化を進行させていく上で、岩田社長はもしかしたらうってつけの人物なのではないかとも思えてきました(考え過ぎ?)。
(身長差も含めて)常包会長との凸凹コンビ、案外うまくいくのかもしれません。
そんなことも含めて色々と考察するきっかけになり、足を運んだ意味は十分ありましたので、評価はちょっと甘いかもしれませんが、★★★☆☆とさせていただきます。
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コメント
総会での様子毎度参考になり助かってます。
こちらの会社は質問2、5、10の回答から察すると、さすがに商品展開に関してはそれなりの考えはある感じはするものの、それ以外の財務・IR・株価対策等に関してはほとんど流されるままみたいであまり考えがなさそうに見えましたがどうでしょうか?
じわじわと参入障壁作りに関してはうまいこと攻めている感じがしますが、守りがちょっとお留守的に感じました。
財務担当の役員さんが、東証はそれなりの基準に関して下記のように発表しているものと思ってたものの、噂が云々とかのノイズに絡めて会長さんまで乗っかり会社ぐるみで「ご容赦ください」は印象的でしたが、最後の質問は答えちゃいけないようなものだったんでしょうかね?
https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/nlsgeu000004ke6p-att/J_kouhyou.pdf
コメントありがとうございます。
当社の場合、「短期的なものの見方をする株主に対して、媚びる必要など無い(なぜなら、長期保有前提の株主が支えてくれるから)」というのが、IRの基本姿勢としてあると感じていたのですが、それがよく表れた一幕だったという印象を持っています。
「守り」に関しては、ビジネスモデルの堅牢性の維持・強化を進めることこそが、その対策なのでしょう。
IRのあり方(不用意に幅広く情報を開示し過ぎない)にも、その影響が色濃く出ていると感じます。
また財務のことを心配しなくても良いビジネスを既に構築してしまっているので、
無駄遣いせず(給与アップなどの将来につながるお金は使いつつ)、
来るべき攻めの機会に備えてしっかり貯め込んでいるのが現在の状況ですね。
振り返りありがとうございます。自分もメモ取っていたのですが、比べてみると穴だらけで、聴き所について勉強になります。
今回初めて総会に参加しまして、確かに常包会長との対比が面白いというか、岩田社長はちょっと無難にさばこうとしすぎなのかなとも思いました。
次回はもう少し、岩田社長自身の言葉を引き出せるような質問を考えていきたいと思います。
多品種少量系の分野ではいくらでも拡大余地がありそうなところ、BtoCも案があるようなので、今後の展開に期待できそうですね。ただ、当社の場合、収益化(とそれに伴う株価上昇)がちょっと遅れてきそうなのが、修行の足りない自分としてはもどかしいですが。
コメントありがとうございます。
岩田社長は議事進行が初めてだったので、慎重だった面はあるかもしれませんね。
私も今回の内容を踏まえ、次回の質問はしっかり考えておきたいと思います。
成長のスピードには物足りない部分もありますが(市場からもそういう評価だと思いますが)、
いろいろな展開が期待でき、成長を長く楽しめる投資先ではあると思いますので、
じっくりお付き合いしていきたいなと考えています。