株主総会シーズン第一弾は、宮崎県延岡市の旭有機材です。
耐薬品性に優れた樹脂バルブでトップシェアの、グローバルニッチトップ企業ですね。
今回初参加になります。
こちらに関しては製品そのものには馴染みがないこともあって、企業のカラーや現地の雰囲気を確認しておく必要があるなと思い、参加させていただきました。
自宅からは遠方となるので、延岡駅から徒歩8分程の総会会場のホテルに前泊しましたが、朝ゆっくり過ごしながら参加するのはいいものですね。
(高知の技研製作所以来です)

株主総会
2024年6月21日(金)午前10時
宮崎県延岡市紺屋町一丁目4番28号
エンシティホテル延岡 3階雅-B
お土産 和洋菓子
50席用意されており、出席者は25名前後。
・・・に対して、企業側のバックアップ体制は万全、檀上及び周りのサポート部隊の人数も同等といった印象。
皆さんスーツにネクタイがビシッとキマッており、旭化成由来らしくJTC(伝統的な日本企業)風味を感じます。
議長は中野社長。
物腰が穏やかな方です。
お声もいいですね。
質疑に十分お答えできるよう、執行役員も出席しているとのことでした。
監査報告の後は、映像とナレーションによる事業報告。
研究開発部門の説明がやたら丁寧で専門的だったのが、真面目な企業体質を表しているようで微笑ましかったです。
(「もうちょっと短くできるのでは?」とは思いましたが)
「対処すべき課題」については、スライドを使って中野社長自らが説明。
招集通知には無い、株価への言及(日経平均にアウトパフォームしている)があり、「資本コストと株価を意識した経営の実現」、さらには事業分野別の成長戦略(やはり半導体関連市場、現場発泡断熱材に力点を置いていました)に関する説明も充実していて力強さも感じ、冒頭の印象とは違った意外感がありました。
決議事項は以下の通りです。
- 剰余金処分の件
- 取締役(監査等委員である取締役を除く。)5名選任の件
- 監査等委員である取締役2名選任の件
- 監査等委員である取締役の報酬額改定の件
(10:29)
質疑応答
(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)
中野社長が概要について答え、より詳しく説明した方がいいと判断した際には途中から管掌の役員に譲るスタイルでした。
【質問1】
初めて参加させていただく。
長く保有させていただきたく、中長期的な観点からの質問を2つ。
1.バルブが金属から樹脂に置き換わっていくとして、普及のネックとなるものは何か?
啓蒙すればということなのか、価格差・コスト面なのか?
2.2030年に売上高1,200億円以上にするとしているが、ここまで3年程の受注状況・需要の盛り上がりのトレンドを踏まえると、さらに上を期待したい。
それ以降も含めて、もっと切りあがっていく手応えはあるか?
また、ニッチトップの分野を今後も伸ばしていくとすれば、利益率はもっと良くなるはず。
営業利益率はどの程度に持っていくイメージか?
⇒
(中野社長)
現状と今後の戦略を踏まえた的確なご質問をしていただき、ありがとうございます。
1⇒
(中野社長)
まず樹脂バルブ市場の成長見通しについて、概要を私から。
金属バルブは6兆円規模の大変大きな市場で、その1%程度が樹脂バルブ。
新興国も含めてバルブは世界的に成長している市場で、当社が600~800億円の樹脂バルブの市場を広げていくということは、いろいろな場で説明申し上げている。
米・日・中は2~3%の普及率と見ているが、世界的に見ればインド・中東・アフリカといった新興国がターゲットと認識。
米・日・中も樹脂への置き換えの余地はあるが。
その意味では、2~3%にできていない地域(1%未満の地域もある)での啓蒙活動を進めていくことになる。
もちろん、圧力・温度など金属バルブでしかできない部分はあるが、当社製品には耐薬性・耐食性・軽量といった特徴があるので、まだまだ認知されていないマーケットがあると認識している。
そのため、価格・認知度・ローカルに応じた製造体制が必要になる。
延岡で付加価値の高いものを出していきたいというのはもちろんあるが、海外については特にローカル化を進めていく必要がある。
(グローバル開発・製造推進部 甲正執行役員)
お客様を回っていると、耐食で困っている所が非常に多い。
価格の問題か啓蒙の問題かに関して言えば、実際のところは価格ではない。
バルブといえば金属しかないと思われているお客様が非常に多く、存在は知っていてもその有効性を知らず、プラスチックは非常に脆いものだと思われているお客様も非常に多い。
よって、プラスチックに対する感覚を啓蒙していくことが非常に大事で、技術・サポートも含めお客様に説得しているところ。
成長性に関しては、バルブの成長性をフォーキャストした論文があり、その中でもプラスチックバルブの成長性が一番高いと書かれている。
またマーケットとしては、水処理分野・耐薬性が求められる化学分野での成長が見込まれている。
2⇒
(中野社長)
中長期の成長に関しては、樹脂バルブだけではなく電子材料がかなり成長のキーとなる。
半導体マーケットにおいては、米中のデカップリング、社会のデジタル化の流れの中で、私共の予想を超えて半導体工場の建設が進みだした。
特にアメリカにおいて、配管材料やバルブが大きく伸び、予想をはるかに超えたということがある。
ここ延岡で生産しているが、人手・設備が足りない中でも生産性の高さによって供給面で貢献できたと思っている。
ただ23年度は、私共の予想を超えたというのが正直なところ。
2025年までは現行の中計だが、2026~2030年の中計を今後策定していくので、その中でどのように成長していくかということについては、現場で議論して詰めていくつもり。
オーガニックな成長でラインとしては1,200億円を数字として掲げているが、まだまだ当社としてはポテンシャルがあると思っているし、アライアンスやM&Aは含んでいない。
今後さらに成長ストーリーや事業ポートフォリオを明確にしていく。
営業利益率については、電子材料分野は20%内外と言われているが、私共もそれを目指しながら、他の部材もあるので、ポートフォリオ戦略に関してメリハリをつけながら、トータルとして営業利益率、ROICのような稼ぐ力を十分意識してやっていきたい。
→ 私がしようとしていた質問も一部含まれていてありがたかったです。市場開拓余地の大きさ、ポートフォリオ経営への意識が相応に強いことを改めて確認できたのは収穫でした。
【質問2】
1.中期経営計画の中で、Dymatrixの新工場を計画しているとあるが、現状はどうか?
2.こうした半導体関連市場は市況の変動に左右される分野だと思うが、どのような条件が整ったら投資にGOサインを出すかなど、戦略投資における判断基準についても教えていただきたい。
(私からの質問です)
1⇒
(中野社長)
地域の需要に応じて、ニーズの高い所(中国)で検討している。
新工場についてはまだきちんとした意思決定はできていないが、この数年間、中国の半導体装置メーカーで当社のバルブがかなりお役に立っており、手応えがあるということで検討に入ろうとしている。
2⇒
まず需要サイドの話をさせていただく。
半導体についてはレガシーから先端まで、色々な分野がある。
私共の強みは、Dymatrix製品や電子材料も含めて、レガシーから先端まで全てに対応できる点。
在庫調整はあると思うが、需要の基調としてはかなり強い。
向こう少なくとも5年や10年単位での成長は十分見込める。
半導体そのものがインフラになりつつあると考えているので、調整局面があったとしても、私共はグローバルに対応していくことになる。
投資に関しては、各案件に対して慎重に議論しているところ。
概要については、氷上の方から話をさせていただく。
(氷上取締役管理本部長)
個別の投資については、経済環境、エリアのリスク、政治的なリスクといったものに相当影響を受ける。
主に金額基準で取締役会で議論すべきもの、経営会議で議論すべきものを判断しているが、それに加えてリスク要素の高いものについては、金額に関わらず重要だとの判断に基づき、上位の取締役会・経営会議で議論することもある。
重要なポイントは、投資が企業価値を向上させるものなのかどうか。
その判断は、資本コストをエリア毎に設定した上で、株主様に投資リターンをお返しできるようにROE・ROICを意識しながら行っている。
→ 先々までの旺盛な需要、そして規律ある投資判断について確認することができました。
質疑は以上となります。
議案採決、新任取締役の簡単な挨拶を経て、閉会となりました。
(10:55)
所感
閉会後、帰ろうとする質問者2名(私を含む)の所まで中野社長は足を運び、お礼の言葉をかけて下さいました。
見た目JTCの雰囲気を漂わせながらも、実際に話してみると親しみやすく、内にはアニマルスピリットを秘めた企業という印象を強く受けました。
(「グレートニッチトップ」を目指しているだけのことはあります)
企業の持つキャラクターは、実際に足を運んでみないとなかなか分からないものですね。
良い意味で予想を裏切るものがありました。
総会自体は無難な運営でしたし、質疑の内容そのものも良かったと思いますが、質問者が2名に留まったこと、かつ両者とも初参加であったことは気になりました。
いつもの総会はどんな感じなのでしょうか?
その辺りも踏まえ、総会の評価としては★4つ寄りの★★★☆☆とさせていただきます。
《おまけ》

お土産は延岡の「七万石菓子舗」さんの菓子詰め合わせでした。
いただくのが楽しみです。



↑ ポチっとお願いします。
コメント
貴重な情報ありがとうございます。
すごい会社が地方にもたくさんあってうれしくなります。
ろくすけさんのようなしっかりとした質問ができる株主に
私もなりたいものです。
会社側の体制に対して
質問した人が2人ということで少し寂しかったようですが、
もっと増えるといいですね。
ところで、私も1か月前に宮崎と大分にいっていました。
ブーゲンビリア空港いい雰囲気ですよね
まだまだ地方にはいい企業が眠っている可能性を再認識しました。
もっとたくさん質問が出るくらい、注目されるといいですね。
「閉会後、帰ろうとする質問者2名(私を含む)の所まで中野社長は足を運び、お礼の言葉をかけて下さいました。」
→こういうのいい感じですね。
会社の規模とか諸々できる条件があるかと思いますが、基本やる気だけの問題の気がします。これを大々的にすると懇親会になりますよね。懇親会は特段豪華な食事がなくても、ざっくばらんなお話ができるのがポイントかと思うものです。珈琲と簡単なお菓子しか出なかったところでも、懇親会で社長さんとお話ししなかったら悪いイメージしか持って帰れなかったところでも、舞台裏の説明を誠実にしてくれて「そうだったんですか!」と一応の納得感は得られこういうのはやはりあるといいなぁと思いました。
そもそもそんなに総会には参加していませんが、たまたま参加した総会で一度社外取締役の方が総会後、質問の回答の補足でわざわざ私のところまで来てくれて「この方やっぱり格が違うな」と思ったものでしたが、補足してくれたものの質問が私がしたものではない感じだったので微妙なところはありましたが、その心意気は嬉しく印象に残ってます。
ちょっとしたところに、姿勢があらわれますよね。