DCF法からの学び(2)~資本効率の大切さ(設備投資)

投資スタンス

DCF法において「どういった企業が高く評価されやすいか」は、以下の基本公式を掘り下げて考えていくことで、肌感覚として理解できるようになっていきました。


こちらは毎期一定の率で成長する永久債(成長型永久債)の現在価値の計算式なのですが、DCF法により企業価値を求める場合でも、この式がベースとなります。

分子(CF)と分母(r-g)について、それぞれ掘り下げていくことにします。

利益とキャッシュフローの乖離をもたらすもの。

まず分子のCFですが、企業価値を求める場合においては、フリーキャッシュフロー(FCF)の予測値がこれに該当します。

FCFは、実績を見る場合には簡略版として営業CFと投資CFの合計値を見ることが多いのですが、DCF法で企業価値を求める場合には以下の計算で予測値を出すことになります。


このように営業利益を起点に加減していくのですが、ここで注目したいのが P/L上の損益との乖離 です。

「営業利益×(1-法人税率)+減価償却費」まではP/L上の概念ですが、色付きの「設備投資」「運転資金の増加額」はP/L上には表れない現金収支を示しています。

FCFを大きくするには、「FCFの中でこの2つのマイナス部分をいかに小さくするか」がポイントになります。

設備投資の少なさ。

私はFCFに占める設備投資の割合を、長期スパンでチェックするようにしています。
ざっくり「営業CF」と「投資CF」のバランスを確認していくということですね。

傾向として、以下の状態が継続しているかどうかを見ます。
・営業CF+投資CF>0
・かつ、営業CFに対して投資CFのマイナス額が小さい


(長期的に見て)営業CFに対して投資CFのマイナス額が小さい傾向にあるということは、小さいインプットで大きなアウトプットがもたらされている
つまり、

投資に対するレバレッジが効いている

ということです。

少ない現金で、より多くを稼ぐことができる。
現金がどんどん溜まっていくので、戦略の幅が広がる。

企業自身による複利での価値創造を考えた時、この観点は非常に重要だと思っています。


一例として、【7741】HOYA の長期キャッシュフロー推移を見てみましょう。


メーカーではあまり見られない、美しいFCFの推移です。
恒常的に「営業CF+投資CF>0」の状態が保たれています。

そして潤沢な現預金を活用する形で、事業領域の拡大を企図した、(企業買収等による)大きめの投資支出を行う年度も複数見られます。
貯め込む一方じゃないんですよね。

自己株式の取得(→財務CFのマイナス)も含め、お金の使い方に納得感があります。

これならば安心してお金を預けることができますし、だからこそ株式市場でも高い評価(特に機関投資家から)を得られているのだと実感できます。

(続く)

「任せて安心」の投資先は貴重ですね。
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