DCF法からの学び(4)~ROICとの相性の良さ

投資スタンス

フリーキャッシュフロー(FCF)を大きくするためには、「設備投資の少なさ」「運転資金の小ささ」がポイントとなることを述べてきました。

これらはいずれも、インプットに対するアウトプットの問題、つまり資本効率の問題であるということに気付かされます。


また、FCFがプラス基調であれば、現預金は自然と溜まっていくことになりますが、安全性のために一定の残高はプールしつつも、なるべくそれを事業領域の拡大のために有効活用するか、その見通しがなければ株主に還元すべきという視点もあります。

現預金も貯め込まず、効率的に流して欲しい(キャッシュフロー・・・として)ということですね。


以上をまとめた図解がコチラ↓です。


資本効率とは、「元手に対して、いかに高いリターンを上げられるか」ということに他なりません。

そのリターンの元手となる投下資本について、補足しておきます。
B/Sで表現したのが以下になります。


運用サイド、すなわち資金を使う側」で考えた場合には、「投下資本=運転資本+固定資産」になります。

ここでの運転資本は、運転資金(=売上債権+棚卸資産ー仕入債務)だけでなく現預金も含めた概念になります。

運転資金を小さくすることに加えて、現預金(有価証券等での余資運用分を含む)を寝かせないことも大事ということですね。


一方、調達サイド、すなわち資金を集める側」で考えた場合には、「投下資本=有利子負債+株主資本」になります。

ROICで資本効率を見る。


いかに少ない元手で、いかに高いリターンを上げられているか。

これが素晴らしい企業を見分けるための重要なポイントです。

そのために、資本効率を数字として比較できるようにしておく必要があります。

資本効率の現状を端的に示す指標が、ROIC(投下資本利益率)となります。


          税引後営業利益
  ROIC =             
            投下資本
       (運用サイド or 調達サイド)


ROICを使うことにより、B/S(分母)とP/L(分子)とで、立体的に資本効率を把握することが可能になります。

また、(総資産ではなく)運転資本のマネジメントの巧拙(仕入債務の圧縮や、前受金の活用等)を反映させた投下資本、もしくは(分子となるリターンとの整合性のある)リターンを求める資金提供者からの資本を分母にしているという点で、資本効率を把握するのに最も適した指標であると考えられます。


ただ欠点は、ROE・ROAと比べると計算がしづらく(計算の仕方によって、結果もばらつく)、その2つに比べればまだまだメジャーではないという点です。

それでも資本効率の面から投資先の見極めをするという点では、非常に優れていると思います。

ROICは、FCFの増加スピードが速い企業を探すのにうってつけです。


なお、ROICを昔から意識し対外的に発信している企業、あるいは近年その意識を高めている企業は、それだけで投資先として有望であるとも思っています。

四季報速読時のポイント。

ここからは余談になりますが、私が長期投資候補の発掘を目的に四季報を速読する場合に、一瞬で見極めを行うポイントを紹介させていただきます。

それは、各社スペースの真ん中あたりにある、ROE・ROAの実績・予測から、ROICのレベルを類推するというものです。


ROA・ROIC・ROEの計算式を思い浮かべていただきたいのですが、総資産≧投下資本≧自己資本 という分母の大きさの順を考えれば、(分子に若干の差異は出るものの)ROE≧ROIC≧ROA という傾向が出てくるはずです。

ROEとROAの間にROICが位置すると考えて、 私はこれが8%を上回りそうか否かでふるいにかけています。
(直近はコロナ禍の影響を受けていますので、そこは考慮しなければなりませんが)

やってみると分かるのですが、これでスピーディに候補先を相当絞り込むことができます。

(続く)

このシリーズ、続けると飽きてくると思いますので、DCF法の分母の話に入る前に、一旦休憩を挟もうと思います。
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コメント

  1. しゃべこ より:

    ろくすけ 様

    いつもブログを楽しく拝見しております。
    しゃべこと申します。

    DCF法からの学びを(1)から(4)まで拝見して、私も是非目標株価の算定のために使用したいと思いました。

    そこで2つ質問させてください。

    1 DCF法による企業分析をするためにはそれなりの時間が必要になるかと思うのですが、四季報等によりROICなりでフィルターをかけたとして、私のケースで言うと60社近く気になる企業が出てきています。

     おそらく、ろくすけさんも気になった企業すべてを時間をかけてDCF法による企業分析をする訳ではないと思うのですが、実際に分析対象となった企業というのはどういった手順により決定されたのかを可能であれば教えていただきたいです。

    例えば、
     四季報→最新の有報→会社HP→分析対象 みたいな

    2 私もろくすけさんの『いけす』のような管理をしたいなと考えているのですが、いけすにいる銘柄はすでに分析を終えており、時価総額を株主価値のギャップが一定の割合以上開くことを待っている状態なのでしょうか?

    以上2点よろしくお願いします。(勝手に思ったことを書いているだけなので、返信がなくても全然気にしません。)
    また、過去の記事もそれなりに読んでいるつもりなのですが、すでにブログに書いてある内容であったら申し訳ありません。

  2. 6_suke より:

    ご質問ありがとうございます。
    この二つは、一体としてお答えできるかと思います。

    投資信託の組み入れ銘柄や他の人が推している銘柄が、
    「長期潮流」「参入障壁」(オペレーションの秀逸さを含む)「高い付加価値」のような観点で
    (少なくとも一つは該当)、自分のアンテナに引っ掛かる

    ⇒ 四季報→HP→有報でざっとチェックする

    ⇒ まず「いけす」で買ってみる(とりあえず買ってみないと、力が入らないタイプです)

    ⇒ 分析をさらに進め、確信度合いが高くなってきたら、目標株価を算出してみる

    ⇒ 現状の株価との乖離が大きいようなら、株数を増やしていく

      (途中で「やっぱり違うな」と感じることの方が多いです)

    ⇒ 「ろくすけカブス」に入れる

    というのが、通常の流れになります。

    • しゃべこ より:

      お返事ありがとうございます。

      いままで、兼業なのにも関わらず、Twitterに流れてくる専業や凄腕のやっているようなことばかりをマネして、失敗しても繰り返しておりました。
      パフォーマンスもダメダメです。

      ろくすけさんのPFの組み方は、会社に夢や愛情の様なものを感じて、とても素敵だと思いました。兼業の自分にも合っていそうですし、参考にというか、丸パクリさせていただきます。

      今後もブログ応援しています!
      ありがとうございました。

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