私の中で、【2820】やまみ に関しては明らかに他の「ろくすけカブス」の面子とは違うアプローチで臨んでいます。
通常、投資先選定にあたってはフリー・キャッシュフローの大きさ、投資効率の高さを重視しているのですが、ここに関しては営業CFを全て(直近はそれ以上)ぶっ込む勢いで設備投資にまい進しており、明らかに異質なものがあります。
ではどういうアプローチかと言うと、それは「豆腐製造業の業界構造からして必然的に当社が勝ち残り、残存者利益を得るはず」という仮説を検証したいというものです。
マイケル・E・ポーター教授の「5つの競争要因(ファイブ・フォース)」のフレームワークを使い、順に説明していきたいと思います。
「5つの競争要因」とは?
業界内の競争と収益性を理解するためには業界の基本構造を分析することが欠かせませんが、その上で「5つの競争要因」という視点を持つことが有用です。
利益をめぐる競争(つまり、どこが利益をブン取るか)は、「業界内のライバル企業」という範囲を越えて、「顧客」「サプライヤー」「将来の新規参入者」「代替品」にまで広がっています。
中長期的な収益性を決定付けるのは業界構造であり、その具体的な表れが以下の5つの競争要因となります。
- 新規参入者の脅威
- サプライヤーの交渉力
- 買い手の交渉力
- 代替品の脅威
- 既存企業間の競合
これらの競争要因とその根底にある背景を理解することで、何が現在の収益性を支えているかを理解できるだけでなく、将来の競争状態(及び収益性)を予測することができます。
やまみはこのフレームワークでの分析がピッタリ当てはまる企業として着目し、長期で追ってみたいと考えて投資に至った経緯があります。
それでは一つ一つ見ていきましょう。
1.新規参入者の脅威
スーパーの豆腐売り場を見渡してみると、大手食品メーカーが全国規模で展開する製品、いわゆるナショナルブランドが無いということにお気付きでしょうか。
これには理由があって、昭和52年に制定された「中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律」(通称「分野調整法」)という法律によって、豆腐製造業界は大手企業の参入から守られているからです。
他の業界だと、ラムネ・シャンメリー・ハイサワー・ホッピー等がこれにあたりますね。
https://kotobank.jp/word/分野調整法-1203535
この法律は大手が参入したらひとたまりもない業界において、中小企業の事業活動を保護して権益を守るためのものです。
だから海外でうまくいっているハウス食品や不二製油といった大手も、国内では直接参入できず、豆腐製造業者との提携という形を取らざるを得ません。
過去、森永乳業も参入を阻止され、やむなく米国に販路を求めたといった先例もあります。
当時は中小零細がひしめく豆腐製造業界において、やまみのようにガンガン設備投資をして巨大化していく企業が出てくることは想定していなかったのではないでしょうか。
それだけに、突然変異のように生まれた面白い存在と思ったのが、当社への本格的な投資を決めた大きな理由の一つです。
新規参入者の存在を気にしなくていいというのが、何より素晴らしいです。
(続く)
コメント
もしご存じであればお聞きしたいのですが、分野調整法で言う大手・中小の切り分けはどこになるのでしょうか?
危惧しているのが、やまやの通常では考えられない生産ラインや設備投資及び今後の規模拡大が中小企業の枠を超えているなどとみられ何か制限がかかったりしませんかね?
大手の参入はだめで、中小から大きくなっただけであればOKならよいのですが。
何か回答をお持ちであればぜひ教えていただきたいです。
(私の近所にはまだやまみ製品来てません・・・。)
以下の記事によりますと、「業界団体が政治力を発揮したのち初めて効力がある」という類のもののようです。
形式的な基準は見えにくいだけにやっかいですね。
http://gomasabatoika.hatenablog.com/entry/2013/08/23/003129
逆に言うと、業界団体にケンカを売るようなことでもしなければ、この法律がある限り既存業者は守られるというイメージを持っています。
業界内で1社がガリバーになるような状況になってくると、また話が変わってくるかもしれませんね。
やまみとしては、業界全体の発展も考えて動くことが求められているのではないでしょうか。
6_sukeさん
返信ありがとうございました。
なかなかグレーですね。^^
業界の発展も考えつつ、やまみさんにはうまく立ち振る舞ってもらいたいですね。
(途中やまみがやまやと酒屋になっていました。すいません)
先日ついにうちの近くのスーパーでも、お試しなのかやまみの3パック品見つけました。
他より1.5倍ほどの値段だったのであまり購入されていませんでしたが、味は他の豆腐より濃厚でずっしり食べ応えがあり満足感が高かったです。
卵などと同じでスーパーの客寄せ特売品になりがちな豆腐ですが、美味しさを武器にぜひ今後も拡大していってもらいたいと思います。