1Q決算発表から一週間以上経ちますが、今回は赤字となり、また補足説明資料の内容もやや新味に乏しいこともあって、先行きに不安を感じられた方も多いのではないでしょうか。
個人的には十分な結果という印象を持ったのですが、世間の見方はどうもそうではないようです。
私がなぜ十分だと感じたのかについて、ここで記しておくことにします。
ポイントは以下の2つです。
①卑弥呼の連結
②四半期ごとの季節性(業績・在庫)
卑弥呼連結の影響
四半期業績推移
まず、当社の決算補足資料から、四半期の業績推移について見てみましょう。
(↑ この表のフォーマットは、今期2Qから4Qにかけての各四半期に対する自信の表れだとも思っているのですが…)
この1Qは、前同比売上高が+1,557百万円、経常利益利益が+421百万円でした。
ただし、前期1Qは卑弥呼が連結されていないことを考慮しなければなりません(連結は昨年5/1からです)。
では卑弥呼を含めて考えると、実態はどうだったのでしょうか?
ここで 2021/1期 有価証券報告書の、とある記載事項に注目してみます。
2021/1期 有価証券報告書から
「企業結合等関係」として、P.69~70に 卑弥呼が期初から連結していたと仮定した場合の、連結損益計算書に与える影響 について書かれている箇所があります。
実は卑弥呼も、前期1Q(2~4月)の期間は、大きな赤字を出しておりました。
この数字も足し合わせた上で、前期と今期とを比較してみれば、実態の増減が分かることになりますね。
(決算短信には書かれていない貴重な情報もあるので、有価証券報告書は欠かさずに見るようにしましょう)
卑弥呼を加味した、実態の前同比
そして実態の増減を比較したのが、以下の表となります。
(グレーの色塗りのセルが、表面上の数字)
売上高は+1,204百万円、経常利益は+553百万円と、決算補足資料の数字よりも利益の改善幅はより大きくなっています。
なお今年度1Qは、昨年の1回目ほどのインパクトはなかったものの、2回目・3回目の緊急事態宣言の期間にかかっていました。
こうして実態を踏まえて見直してみると、かなり盛り返したと感じられますし、また印象も変わってくるのではないでしょうか。
四半期ごとの季節性
ファッション関連業種に投資するにあたっては、業績・在庫の季節性を把握することが欠かせません。
ただ当社の場合悩ましいのは、新規上場から1年半経過しているものの、うち1年強は新型コロナウイルス感染症の影響が色濃く出てしまっており、また途中で卑弥呼の連結(2020年5月)もあったために、年間のトレンドが非常に分かりにくくなっているということです。
ここに関しては、きちんと紐解いてあげないといけません。
業績のトレンド
当社に以前確認したことがあるのですが、平常時の売上高には強い順に、
「4Q(11~1月)>2Q(5~7月)>3Q(8~10月)>1Q(2~4月)」
という傾向があるとのことです。
面白いのは、
「一般的にはアパレルのバーゲン期にあたる時期が、当社にとっては書き入れ時である」
ということ。
4Q・2Qのバーゲン期にあっても、巧みな商品ミックスとプロモーションにより、売上総利益率はあまり落ちないというのが、当社の際立った特徴であり、大きな強みです。
一方でこの時期は商品回転率を大幅に高めることができるので、結果として、売上高同様、上記の不等号の順で利益を出しやすいということになります。
ここは一般的なアパレルのイメージとは大きく異なる部分です。
4Q・2Qが強く(特に4Q)、3Q・1Qは弱い(特に1Q)。
当社に関してはこの基礎知識を持っておかないと、判断を大きく誤ることになります。
(逆に知っていれば、「おいしい」思いができます)
以上から1Qの赤字はある程度予測可能でしたし、むしろ今回の結果からは、売上総利益率を66%も確保できたことを積極的に評価すべきだと感じました。
(なおこの1Qは、2回目の医療従事者支援による広告・販売促進費用負担があったことも、忘れてはなりません)
在庫のトレンド
今回のB/Sにおける確認ポイントは、在庫の増加です。
前期末から1Qにかけて、+476百万円の増加となっています。
ここで意識すべきは、コロナ禍での販売機会損失が、在庫に深刻な影響を与えているかどうかです。
なお、前期1Qの補足資料においては、「コロナウイルス感染拡大の影響に伴う営業自粛要請により」在庫が増加した旨の記述があります。
ちょっと心配ですよね。
そこでIRに確認したところ、今年度に関しては「2Qに向けた定例の季節的な積み増しの範疇」という回答がありました。
そして昨年度1Qは「意図せず」在庫は過多傾向にあったものの、「今年度はコロナウイルスの影響を鑑みた発注を実施しコントロールしております」とも。
(補足:在庫の増加と買掛金の増加が、昨年度とは違って今年度は整合性が取れている(1Q末に近いところで2Qに備えて積み増しているから、在庫も買掛金も同じように増える)ことからも、「意図せざる在庫」は無くなっているものと推察されます。)
これは逆に在庫処分に余計な力を入れなくてもよくなったということですから、2Q以降の前期比での売上総利益率改善も期待できる、プラス材料になりますね。
念のため、四半期ごとの在庫推移についても見ておきましょう。
4Q末(1月)・2Q末(7月)は在庫水準が低く、3Q末(10月)・1Q末(4月)は高い傾向が見てとれます。
(なお、2020年7月の2Q末の水準が1Q末に対して高くなっているのは、卑弥呼をここで連結対象としたからです)
これは四半期業績トレンドと整合性がありますね。
つまり、3Q・1Qは、書き入れ時の4Q・2Qに向けた、在庫積み増しの期間ということです。
ちなみに、4Q末から1Q末にかけての在庫の増加を「率」で見てみると、昨年の+30.84%に対し今年は+20.07%と低くなっております。
まとめ
ということで、1Qは元々他と比べて弱い四半期であり、足元の在庫の増加についても問題ないことが分かりました。
今期2Q以降に関しては、
①前期は5月の1ヶ月間、全店休業状態であったこと(今期は店舗の稼働時間が相当改善されているはず)
②前期はコロナ禍により、意図せぬ在庫過多の状況があったこと(前期2Q・3Qの利益率低下要因)
③香港におけるコロナ第四波が収束したこと
を考えれば、前期比での上積みがかなり期待できる状況にあるのではないでしょうか。
卑弥呼の新規出店も含めた業績貢献の本格化、2Q・3Qにおける売上総利益率の数ポイントの改善、そして何より新しい靴を履いて出かけようという気分の高まりも見込めますので、再度の緊急事態宣言さえ無ければ、通期業績予想の達成は十分可能だと見ています。
さらに、延期になっている中国・香港間の通常往来再開があれば、香港の店舗における中国からのインバウンド需要の復活もあります。
香港では同じ商品が日本の3割増しの単価で売られており、かつ輸入諸掛もかからないということで、業績へのインパクトはあるはず。
以上を踏まえると、今期に確かな業績回復の足取りを見せた上で、いよいよ来期からは、ようやく期を通じて本来の実力を発揮できるフェーズが訪れそうな期待感があります。
ここまで当社も苦労続きでしたが、やるべきことを行いながらしっかり耐えた分、ぜひ大きく花開いて欲しいですね。
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コメント
一個だけ持っている株主です。
コメント欄が開いていて、感心しました。
今1Qの「卑弥呼なし」のデータもあるといいんですけどね。
多少売り上げの上昇が良くても、「卑弥呼買ったしね。当然だよね」とみられてしまいますので。
前期1Qの卑弥呼の赤字が、688百万円というひどいものであったのであれば、
卑弥呼は、今期もかなりの赤字が残存している可能性があり、
ダブルエー単体なら黒字化している可能性も高いです。
(「決算が黒字」なら、だいぶ印象が違うんですけどね。)
なにぶんにも、卑弥呼とダブルエーのサイズが同規模なので、決算がみづらいです。
今期のダブルエー単体の売上を推測しようにも、正直厳しいですね。
あと、在庫が増えているのは、あまりうれしい状況ではないと思います。
現金化ができるかどうかは、注視していきたいと思います
あと、高い粗利益率が維持できるかどうかも。
コメントありがとうございます。
前期1Qは、卑弥呼単体では売上高353百万円、経常利益▲131百万円でした。
表現が分かりづらかったかもしれません。
今期1Qに関しては、ダブルエー単体はまだ赤字なのかなと思っています。
ダブルエー・卑弥呼それぞれの損益が分からないのは、なかなか辛いですよね。
イレギュラーな状況がある程度落ち着けば、両社の損益を本決算時以外でも開示いただけるのかなと
感じております(以前、この件で照会した感触によるものですが)。
在庫については、前期末から1Qにかけての増加額がこの程度であれば、純粋に季節性のものと見てよさそうですが、
仰る通り粗利益率の推移はやはり確認しておきたいですね。