業界構造を理解する(【2820】やまみ の場合)その2

企業研究

引き続き、豆腐製造業界の5つの競争要因について見ていきます。

2.サプライヤーの交渉力

豆腐製造業の主要仕入先となると、大豆を扱う商社や問屋ですね。

やまみの場合は有価証券報告書を確認しますと、買掛金の相手先として「互明商事」「三冨実業」が上位2社となっており、この2社で競わせているように見受けられます。
また、東証一部指定となったことで、輸入大豆の長期契約ができるようになったとの説明が株主総会でありました。

サプライヤーは全国各地に分散していて超大手が牛耳る状況でもなく、条件面の話も相応にできているということで、おそらくサプライヤーの交渉力はそれほどでもないのでしょう。

3.買い手の交渉力

主要販売先はスーパーになります。

豆腐という商材を消費者側から見ると、指名買いというよりは品質と価格のバランスで見比べてその都度選んでいく傾向があり、価格感度が高いと思われます。

かつ相手(販売先)はメーカーよりも圧倒的に規模が大きく、体力に劣るメーカー間で競わせることにより、常に値下げを迫ってきます。
買い手の交渉力は非常に強く、結果として業界全体の収益性を押し下げることとなります

豆腐にも季節性がありますので、春と秋には商品の大きな切り替えのタイミングがあるのですが、ここに向けてスーパーのバイヤーは同業他社の存在をチラつかせながら、ネチネチと値下げを迫ってくるわけです。

しかもバイヤー個人としては何シーズンにもまたがって(値下げの)実績を上げたいので、少~しずつ値下げを持ちかけていき、実際にはギリギリのところまでメーカーの切り替えは行いません。

「もうちょっと値入れを頑張らないと、やまみさんに変えざるを得ないよ?」とか何とか言って(あくまで想像です)。

富士山麓工場建設の話をかなり前広にアナウンスしたことで、やまみの破壊力が既に知れ渡っていたせいか、関東の業者においては実際の進出前から自発的な納入価格引き下げもあったようです。
これから関東も、どこかが「音を上げる」のを待つような消耗戦のフェーズに入ってゆくのでしょう。

こんな厳しい市場でどう戦っていくのか、そして山名社長は業界の先行きをどう考えているのかについては、改めて説明したいと思います。

4.代替品の脅威

豆腐は日本の食卓に欠かせない食品です。

発祥は中国ですが現在は基本的に海外からは入って来ず、江戸時代からは庶民の食べ物として定着しています。
単価も非常に安いですし、他の何かが豆腐に取って代わるということは考えづらいです(逆に、豆腐が例えば肉の代わりになるといったことは考えられますが)。

そういう意味で代替品の脅威からは免れていると言え、これは安心材料です。

一方で、数量は比較的安定しているものの、価格競争と高齢化進展により「胃袋が小さくなった」ことに伴う単価下落の傾向は止まるところを知りません
やはりキツいですね。。

次回で「5.既存競合間の競合」とまとめをやります。

(続く)

「5つの競争要因」と言えば、本日ポーター賞授賞式に参加致しました。後日、その内容については記事にしたいと思います。
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