“割安”でないところから選ぶバリュー投資(2)

投資スタンス

バリューかグロースか。

どちらが優位かということがよく話題になります。

私が個別株を本格的に取り組み始めた頃は、「歴史的に見れば、バリュー一択」のような空気がありましたが、ここ10年くらいで段々とバリューはグロースにパフォーマンスで劣後する場面が目立つようになってきました。

特にテック系の黄金時代に入り、その雲行きはますます怪しくなってきたというのが現状かと思います。

前回書いた通り、個人的にはバリューの方の意識が強いのですが、自分の中でどのような形で整理をつけて対処しようかと考えることも多くなる中で、独立系のアナリストである鈴木行生さんのレポートが目に留まりました。

価値創造の源泉をいかに実感するか~新たなフレームワークの経路を問う~


このレポートのP.7に、「バリュー投資かグロース投資か~新しい価値投資とは」という章があります。

ここで鈴木さんは近年バリュー投資が機能しづらくなった背景について、以下のように考察をされています。

  1. 業績予想が難しくなった(マクロ経済環境、個々の企業の経営環境)。
  2. 企業の自力が落ちている可能性。
  3. リーマンショックやコロナショックのような大きな変動にさらされ、企業間の格差が表面化。
  4. バリュー投資の意味付けが変わっている(サステナブル投資・ESG投資への注目により、相対的に評価しづらくなった可能性)。

補足すると、B/Sに表れにくい無形資産の重要性が高まっているというのもありますよね。


そして、「これからのバリュー投資について、割安でないところから割安を選ぶのがコツかもしれない」という野村アセットの高柳さんの発言を紹介しつつ、以下のように結んでいます。

・つまり、バリュー(価値)はこれから創られる。今は割安でなく妥当であっても、あるいはやや割高であっても、今から創られる付加価値が新たなバリューとなっていくので、それを評価していくという意味であろうか。筆者は、そのように解釈したい。

・伝統的なバリュー投資か、グロース投資か、というスタイルを越えて、新しいバリュー投資(企業価値投資)に邁進したいものである。


これです、私が目指しているのは。


伝統的なバリュー投資でもグロース投資でもなく、「今から創られる付加価値」をベースにした新しいバリュー投資。
(「成長バリュー」に概念が近いかもしれませんね)

「今から創られる付加価値」は、数字をインプットしたらパパッと答えが出てくるような機械的なモデルで推し量ることは難しく、個々人のアートが求められる部分となります。


未来を予測するために、経営者の考えや企業文化、沿革(危機時の乗り越え方、設備投資・M&Aの履歴…)など、数字以外の要素も丁寧に把握する。

その要素をもとに、脳味噌に汗をかきながら今後のシナリオを構築し(過去の振る舞いから未来の姿を類推する)、今から創られる「価値」を見積もる。

そしてその「価値」に対して「割安」な企業に投資する。

織り込まれていないもの、まだ見えていないものを見ようとする試みであり、一見、指標面では”割安”に見えない


まだまだ自分の中でも漠然としている部分が多く、確かな感触は得られていませんが、私が目指すバリュー投資はこんなイメージです。

それぞれの投資先の、未来の物語を妄想して作っていきたい。

こういう形であれば、依然として機能し得るのではないかと。


これを一言で説明するのはなかなか難しいので、投資スタイルを問われた際には、「は?何ですかそれは?」と聞き返されることを前提に、「”割安”でないところから選ぶバリュー投資」などと、煙に巻くような答えをしようかと思っています(笑)

わかりやすい”割安”は、食べ尽くされつつあるのかもしれません。
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