こちらも旅行記の時間では前後しますが、記憶の新しいうちに総会の記録を残しておきます。
マルマエは初参加になります。
場所的には非常に参加し辛いものがあるのですが、前田社長のユニークな経歴を見てどんな方なのかを確認したくなり、足を運んだ次第です。

株主総会
2021年11月26日(金)午後3時
鹿児島県出水市大野原町2141番地
株式会社マルマエ 本社 3階「特設会場」
お土産 無し
また後日紹介させていただきますが、バカでかい本社工場の中の、会議室のような場所での開催でした。
54席用意されていて、参加者は35名程度。
事前にイメージしていたよりは参加者数は多かったです。
議長は作業着姿の前田社長。
円滑・効率的な進行を図るべく、報告は簡潔にさせていただく旨のお話がありました。
その通り、監査報告、報告事項とも招集通知を使用した極めてシンプルなものでした。
報告事項に関してはスライド等の使用は無く、招集通知の「対処すべき課題」の箇所のみ読み上げる形です。
決算説明会の動画を公開している分、株主総会での報告は簡素に済ますということでしょうか。
決議事項は以下の通りです。
- 剰余金の処分の件
- 取締役(監査等委員である取締役を除く。)4名選任の件
- 監査等委員である取締役3名選任の件
質疑応答
(理解促進のため、構成・内容には若干手を加えています)
全て前田社長が対応されていました。
【質問1】
恒例によりトップバッターを務めさせていただく。
プライム市場選択の申請をされたが、流通時価総額100億円以上、流通株式比率35%以上に対して、どの程度満たしているのか?
⇒
流通株式比率は55%超で、2割以上余裕がある。
流通時価総額は200億円近いところ。
株価で言えば、1,500円くらいまで下落しても大丈夫。
現在は2倍近いということ。
【質問2】
パート及び嘱託社員の数が、招集通知と決算説明会時の資料とでは相違がある。これはなぜか?
また、パート及び嘱託社員というのは、年間雇用なのか?
⇒
招集通知及び有価証券報告書のパート及び嘱託社員の人数は、年間の平均人員を記載したもの。
雇用は1年契約。
【質問3】
南アの変異型ウイルスの話が新たに出、株式市場も売り込まれているが、リスク対応についてはどう考えられているか?
⇒
市場環境への対応と自社内での対応の二つの観点からお話しさせていただく。
まず市場環境という点では、過去1年、半導体・FPD市場はコロナ禍であっても逆に順調に推移していた。
今回の変異型についても直接的な影響は無いと考え、これに対する特段のリスクヘッジは行っていない。
次に自社内についてだが、社員間の接触を避けるべく、生産については日勤と夜勤を分ける、工場を分けるなど、同じ部門が全滅しないように配慮した。
管理部門については、リモートワークの推進でリスクヘッジを行った。
【質問4】
受注残が毎月増えているが、生産が追い付いていない状況かと思う。
生産能力を増やすか、受注がピークアウトするかなどして、ギャップが解消するのはいつ頃の見込みか。
⇒
お答えするのはなかなか難しい。
お客様が必要としている数量と、実際に発注する数量とにはズレがある。
実際にはまとめて発注するケースが多い。
我々としては、毎月必要な数量に合わせる形で対応している。
来年2月までには、生産能力を月間7億円までにすべく、設備・人材の増強を行う。
まだ受注の増加傾向は続いているが、ここからお客様の方がさらに急激に増やすことは考えづらい。
リスクもあるので見極めているところ。
ただ全体としては、直接のお客様(半導体製造装置メーカー)の先にある、半導体デバイスメーカーの需要が非常に旺盛であるため、かなり長い間タイトな需給が続く見通しを持っている。
【質問5】(質問4と同じ方)
生産能力増強はTSMCが日本に来ることを加味している?
⇒
生産能力増強については、1年弱程度先を見据えてやっている。
TSMCは熊本と米国の新工場の話はあるものの、まだ工場の箱を作っている状況で、そこから設備が入っていくのは今から1年以上先の話。
もう少し様子を見ながら、その先の生産能力については考えていく。
【質問6】
招集通知のP.2に「生産リードタイムが長期化したことで一部の不採算製品に関連する受注損失引当金の増加も発生いたしました」とある。これはどういう意味か?
⇒
受注損失引当金は、受注の中でマイナスとなるものだけを拾い上げて算定し計上するもの。
東京エレクトロン宮城との取引などでは、利益が出ない製品ながら、他とのバーターで取っている赤字のものがある。
納品していく時に利益の出るものとセットになるが、そのうちマイナスになるものだけが受注損失引当金として計上される。
つまり、全体の受注が多くなればなるほど、受注損失引当金も増える傾向があるということだ。
だいぶ先まで受注があることをアナウンスする意味合いもあり、受注損失引当金のことを記載した。
初めから認識しているものであり、この分が出荷されても追加で赤字が発生することは無い。
→ こういう取引慣行を教えていただけるのはありがたいですね。この勘定科目が出てきた時に必ずしもネガティブにとらえなくてもいいケースもあるということが分かり、大変勉強になりました。
【質問7】
昨年株主になった。
この10年くらい荒波にもまれ、厳しい環境を乗り越えて来られたが、今後10年でどういう会社にしていくかというビジョンについて教えていただきたい。
⇒
リーマンショックの時は一度潰れそうになったが、当時は毎年50%成長を目指していた。
売上高が10億円、20億円の時に、100億円の引き合いをいただき、五十数億円(注:おそらく当初計画の数字。実際に投資したのは累計30億円だったようです)の設備投資を行う決断をした。
大きい投資計画は、市況の急激な悪化があったとしてもなかなか途中で止められるものではない。
結果、大赤字を出してしまった。
あの時の反省から、あまり先の目標は立てないようにしている。
機械、人 … 一度増えた固定費を減らすことは難しい。
市場環境のリスクを踏まえ、財務が許す範囲で成長を続けていきたい。
長期的なことは、今はあまり出さないようにしている。
→ 事業再生ADR手続に至った経営危機のお話も伺うことができました。
【質問8】(質問7と同じ方)
最先端分野の製造に関わられている御社として、サイクルがかなり大きくなっていることに関して、現場で感じるものがあれば教えていただきたい。
⇒
好不況を3、4年で繰り返していたシリコンサイクルは、2017年・2018年あたりでスーパーサイクルに移行した感覚がある。
前工程の分野ではそれまではITバブルを超えることはなかったが、2017年・2018年を境に、シクリカルはシクリカルグロースに変わった。
5G時代・SNS社会の到来、GAFA+Mの成長等があり、クラウドサーバーが伸びて半導体の需要が増え、サーバーに使われるハードディスクのSSD化でも半導体の大きな需要が生まれた。
2019年に一度落ちたが、それまでの波と比べると小さかった。
このところ10年に1回大きな不況が訪れているが、半導体分野だけはさまざまなニーズが生まれプラスを続けている。
今後もクラウド向け、サーバー向けは伸びる。
NANDフラッシュメモリ市場は、ある程度変動はするものの、CAGR30~40%の非常に大きい成長が見込まれる。
ロジック向けも投資が盛り上がっている。
昨年から先鋭化している米中間摩擦があり、独自に半導体工場を作ろうという動きがある。
従来TSMCに丸投げしていたものを、安全保障上の問題で米・日・中、自分のところでできるだけ作ろうという動きがあり、ある程度余剰能力を持って生産設備を作ることになってきている。
余剰能力の分、底上げが起こっている。
装置導入が本格化するのは、工場が建った1~1.5年後以降となるため、中長期的な成長が続くと見ている。
同業他社がなかなか設備投資に踏み切りにくい中、我々としては上場による信用面から資金調達の不安が無いという強みを活かし、市場環境に合った投資をしていく。
以上で株主総会は終了(15:42)。
その後、選任された各取締役からの簡単な挨拶がありました。
所感
前田社長の質問に真摯に答える姿勢に大変好感を持ちました。
取引慣行や足元の市場環境についても、素人にも分かるように丁寧にご説明いただき、勉強にもなりました。
ただ、こうした情報も株主からの質問があって初めて得られたものであり、できれば質疑に入る前に足元の環境とその対応について自発的にお話しいただければ、なお良かったですね。
(時節柄かもしれませんが)報告事項の物足りなさを考慮し、評価は(★4つに近い)★★★☆☆とさせていただきます。
(おまけ)

本社3階の会場からは、天草諸島がはっきりと見えました。
半導体業界の動向をフォローする上でもいい企業です。総会リピートしたくなりますね。なお某社外取締役の方の服装は、ちょっと目のやり場に困りました(苦笑)


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コメント
マルマエ結構面白い会社ですね。
参加者数も私の想像を超えていて、また質問もいい感じのものがありいい感じですね。
総会の開催時間が午後3時というのは初めて聞きました。
「東京からも飛行機で来れる時間帯」とかで考えてくれたものでしょうかね?
作業着姿の社長さんと目のやり場に困るような社外取締役さんとのコントラスト。
来年も楽しみですね。
前田社長のお人柄の賜物なのか、株主の質もいい感じがしました。
応援したくなる会社ですね。