成長と膨張の間で。

企業研究

先週の金曜日、恩株として最後の1単元を残していた【8876】リログループ を売却しました。

たまたまですが、2011年の初回購入から10年経過したところでの売却になります。


売却した理由は、 今の自分の投資スタンスと合わなくなっており、保有していて最もストレスを感じる株となってしまったからです。

相当な実現益(数千万円単位)をもたらしてくれた大功労者ではあるのですが、それを差し引いても…といったところ。


より具体的に言えば、「成長」から「膨張」へと企業体質が変わってしまった印象を、自分の中で覆すのは難しいと考えたからです。

長期的な収益性・安全性・効率性の推移という観点で、以下で説明していきます。

収益性

P/L上の収益性の推移で見ると、業績悪化が感じられるのは2020/3期になってからです。

コロナ禍の影響が出始め、また2019年に取得したカナダのグローバル・リロケーションカンパニーである、BGRS社の減損処理で特別損失を出した期ですね。

私は元々、ストックビジネスを基盤としながら「『2桁成長』は我が社の憲法」とする、当社の攻めの姿勢を好感して保有を続けていたのですが、P/L上で明確に衰えが見えたのは比較的最近のことでした。

安全性

しかしながら、安全性で見るとまた印象が違ってきます。

2017/3期から2018/3期にかけて、自己資本比率は約▲6ポイントという顕著な低下を見せました。

また、2018/2月には「ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」の発行に至っています。


資本面の手当を意識し、株価上昇を抑制しかねない(実際、そうだったのですが)調達方法を選択した辺りに、「成長第一」(憲法ですからね…)で来たために財務面で負荷がかかってきている状況がうかがえました。

そして、資金調達の目的である「ストック基盤の拡大」というフレーズは聞こえはいいものの、一方で(私が魅力を感じていた)「経営資源の多重利用」という側面では減速感は否めないという印象を持ちました。

要するに、量的拡大への依存度が高まったのではないかという疑問ですね。
これは「膨張」かもしれないと。


そんなこともあって、2018/3期決算発表のあった2018年5月からは徐々に売却を進めていく形となりました。

なお、2020/3期には拡大路線がコロナ禍により裏目に出て、BGRS社が重荷となり財務をさらに悪化させることになります。

効率性

「成長」から「膨張」への体質変化は、効率性を見てもうかがえます。


それまでもその傾向はありましたが、特に2017/3期から2018/3期にかけ、総資産回転率が大きく落ちているんですよね。

ROEの推移は引き続き優秀な一方で、B/Sは拡大傾向が強まり、回転は落ちている…。


ストック基盤拡大後のさらなる成長を見てみたいという気持ちの一方で、自分の中で「黄色信号」も点滅するようになりました。

そして、自分の中で見るべき指標として、ROEではなくROICへの傾斜を強めるきっかけにもなりました

2020/3期には上述の不運も重なり、効率性をさらに失っていくことになります。

リログループへの投資から得た教訓。

期待も残っていた分、売却にかなり時間をかける形となり、ベストな対応ができたとは言えません(私の甘い部分ですね)。

ただ「成長」と「膨張」の違いを意識していたことで、コロナショック前にある程度売却を進めることができた点は良かったと思います。

今は「質を伴った成長」が何より大事だと思っているので、恩株も手放してスッキリすることにしました。


P/Lだけでなく、B/Sも併せて時系列で見ていくことが大事ですね。

そして、「成長」から「膨張」への転換期を見極めることも。

当社への投資から、多くの利益を得ただけでなく、大変多くのことも学ばせていただきました。

たまには振り返りも。どこかほろ苦さが残る投資でした。
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コメント

  1. 伏見の光 より:

    そうですか。それはなにか感慨深いですね。

    こちら、投資を開始して間もない1999年、IPO時に1,000株配分で、初値売却したらいきなり利益が500万超え。
    その後に買い戻したりし、結局、現在は1,000株残っていて、確定+時価評価損益は1,000万超です。

    海外を含めての人の動き、流れの変化に合わせてまた復活もあるかと単純に考えていますが、こうして数字をあげて説明していただけると、なるほどと感じます。

    • 6_suke より:

      日本の企業戦士を応援するという心意気は共感できますし、ロマンのある会社ですよね。

      「雨降って地固まる」となるかどうか、引き続き見ていきたいと思います。

  2. なりさん より:

    「成長」と「膨張」を明確に「量的拡大への依存度が高まった」という点で見られたのは素晴らしいと思いました。
    私なりにさらっとこの会社を見返してみると、創業者の佐和田さんの2019年4月「グループ統括」として出てきたのがある意味転換点の兆しだったかなぁなんて思いました。

    • 6_suke より:

      恐れ入ります。

      創業者は新規事業を常に開発していかなければ永続できないという考えをお持ちのようで、
      それがベンチャー的な企業文化にも表れているのでしょうね。

      成長と安定の両立の難しさを感じます。

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