私の敬愛するみさき投資の中神さんは、世にあまたある事業を「機会事業」と「障壁事業」とに二分した上で、よく長期投資家の投資プロセスについて説明しています。
以下は、みさき投資のNEWS LETTERからの引用です(太字は当方によるものです)。
機会事業とは、世の中に数多く生まれては消える事業機会をモノにして実際に利益を上げている事業です。素晴らしいではないか、と思われるかもしれません。ところが長期投資家は機会事業には見向きもしません。いまそこに一時的な(場合によっては高い)利益があったとしても、その事業に「障壁」が備わっていなければ、競合が出現しその利益を奪おうとした時に守り抜けないからです。長期投資家は、機会事業によって得られる一時的利益には関心がないのです。
NEWS LETTER みさきで『良い経営』を考える VOL.13
逆に、ある会社に障壁が備わっているならば(あるいは営々とそれを作っている最中なら)、たとえ今現在利益が出ていなかったとしても、長期投資家は喜んで投資を検討します。障壁は長期的に見れば必ず持続的な超過利潤を生み出してくれるからです。外から見ると謎が多い長期投資家の投資プロセスの核心には、「この事業には障壁があるのか?」という問いが存在するのです。
いかにもな「機会事業」の例としては、その沿革や投資のあり方からして、ソフトバンクグループが思い浮かびますね。
海外で成功したビジネスモデルやサービスを日本でいち早く展開する「タイムマシン経営」の概念は、まさにそれを象徴している気がします。
このLETTERを読んで感じたのは、私たちが株式投資を必要以上に難しくしてしまっている原因は、
- 「機会事業」「障壁事業」を区分する意識がないこと
- 「いま旬である」「すぐ儲かりそう」という理由で、「機会事業」の方に投資しがちであること
の2点によるところが大きいのではないかということです。
(ソフトバンクグループ、個人に大人気ですよね。)
そして「機会事業」への投資を繰り返していくうちに、知らず知らずのうちに投資家の方も「機会事業的」な投資行動を取りがちになってしまうのではないかと考えています。
儲かりそうなものに飛びつく、渡り歩く。
投資対象としている事業自体の賞味期限が短いから、自分の方も必然的にそういう行動になる。
こういったことが、投資を複雑なものにしていると感じます。
一方、「障壁事業」に投資しているという意識があれば、逆にできるだけ動かしたくなくなっていきます。
長期的に見れば、事業が持続的に超過利潤を生み出してくれると信じられるからです。
コロナショックの底で「障壁事業」に投資した場合、私が見ている限り、そこから株価が2倍前後にはなっているものが大部分です。
やはり持続的な超過利潤が得られるであろうというコンセンサスが存在する企業については、株価の戻りも早い印象です。
ほとんどの人にとっては、これは十分過ぎるパフォーマンスだと思えます。
「機会事業」への投資を極力止め、「機会事業的」な投資行動も止めてみる。
「障壁事業」を見出すことに普段は努め、暴落のタイミングを利用して資金を投じる。
こういったアイデアも一考の価値は十分あるのではないかと思っており、私自身も基本的にはこの考え方を実践するようにしています。
普段右往左往しなくて済む投資は、時間的な豊かさを感じるというのも大きいですね。
余談ですが、日本株から遠ざかっていく人が多いのは、身近に感じられる「機会事業」への投資をしていく中での失敗によるところが大きいからではないでしょうか。
逆に米国株が輝いて見えるのは、私たちが知っている有名どころが「障壁事業」を営んでいるという点が大きいのだと思います。
米国株の場合、(無意識であっても)「障壁事業」に投資できてしまう可能性が高いというのが、本当のところのような気がします。
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